本『インサイド・アップル』

『インサイド・アップル』
著 アダム・ラシンスキー
早川書房

秘密主義で知られるアップルの経営システムとは、
ジョブズの後を継ぐのは誰なのか、意思決定はどうなっている?
組織図は? などなど内幕に迫った一冊。

付箋貼りすぎて、途中でなくなってしまうくらいにおもしろかった。
アップルの秘密主義自体は今でも徹底されているので、
元幹部や社員、関係者に取材して書かれているのだが、
ここまで内部に迫った本はなかったはず。

秘密主義は外部だけでなく、内部にも徹底されており、
プロジェクトによっては工事を行ない、壁やドアを作り、
窓を磨りガラスにし、セキュリティバッジがないと入れなくなる。

iMovieのマーケティングに使用する結婚式のビデオを
ジョブズが気に入らず、撮り直した話とか徹底ぶりがすごい。

 「ビーチの結婚式がいいと言われたの。ハワイとか、
 そういう南国のロケーションで」。ギーニは言う。
 「ビーチで予定されている結婚式を探して、ビデオに撮って編集し、
 スティーブの承認を得るまでに数週間しかなかった。
 ぎりぎりの日程だったから、失敗はぜったいに許されなかったわ」

チームはマウイ島で式を挙げる美男美女の新郎新婦を探しだし、
クリエイティブ・ディレクター率いる撮影班がハワイに飛び、
前日に浜辺で夕日を位置をチェックしている。

ジョブズやアップルについて書かれたものはほとんどが情報不足で、
『iCon』もしくは、スタンフォード大学のスピーチからの引用で、
製品がいかにすばらしいか、ジョブズがいかに先見の明があったか、
称賛しているものが多い。
読む方はどうやって「すばらしさ」が作り出されているのか知りたいのに。
たいていの著者は“現実歪曲フィールド”にはまっていて、
アップルが言っているのと同じ言葉をくり返しているだけなのだ。
その点、著者はアップル信者ではないので、冷静に客観的に書かれていて、
やはりアップル信者ではない私にも読みやすい。

 「いまある教訓で、これからも役立つものをあげろと言われれば、
 いちばんすぐれたメッセージの伝え方は、明確、簡潔、反復
 ということです」。アップル退職後、シリコンバレーのオーパス・キャピタルで
 ベンチャーキャピタリストになったボーチャーズは、そう振り返る。
 「メッセージはだんだん飽きるものです。20回も説明会を開くと、
 毎回まったく同じように聞こえる。でも、じつはそれこそが望ましい。
 説明会に参加する人は初めてその説明を聞くんですからね。
 まずいのは、飽きたために説明がごちゃごちゃになってしまうこと。
 だから、同じことばをくり返し使うことが大事なんです。
 そうすれば消費者の耳には同じことばが届き、
 彼らが友だちに製品を説明するときにも同じことばを使うようになる」

ジョブズの後継者候補としては現CEOのティム・クック、
ジョナサン・アイブ、スコット・フォーストールの3人をあげている。
そして、誰もが思う「ジョブズ亡き後もアップルは維持できるのか?」
という疑問に対し、著者はノーと言っている。
アップルの独自のシステム、秘密主義で、細部にこだわり、
すべてをコントロールし、シンプルで力強い基調講演などは
ジョブズという存在があったから成り立った。
これをそのまま引き継ぐことはできず、
アップルは新しい組織へと変化しなければならないだろうとしている。
(ジョブズが築き上げたものは強固なので、
しばらくはこのままでもいけるとも予想してますが。)

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本『小さなチーム、大きな仕事』

『小さなチーム、大きな仕事』
著 ジェイソン・フリード、デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン
ハヤカワ新書juice

2010年に出た本だけど、いつか読もうととっておいたら、
今ごろになりました。
好評な売れ行きだったようで、2012年に完全版が出ています。

新刊が出ていないハヤカワ新書ですが、
あいかわらず執筆陣が豪華。
デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソンはRuby on Railsを作った
プログラマー。

37シグナルズは『ベースキャンプ』、『バックパック』、
『キャンプファイアー』などのウェブサービスを手がける企業で、
この本の出版時点で従業員は16名、社員はシカゴのほか、
スペイン、カナダ、アイダホなど、8つの都市に散らばっている。

小さな会社には小さな会社なりの戦い方があり、
そのビジネスのヒントを書いたのが本書。
誰もがまねできるわけではないが、耳の痛い話も多い。

「仕事依存症患者は重要な点を見逃している。
彼らは時間を投入することで、問題を解決しようとする。
よく考えることをせず、力技で埋め合わせようとする。
これは見苦しい解決につながるだけだ。
彼らは危機すら生み出す。彼らは好きで働きすぎているので、
効率的な方法を探さない。ヒーロー感覚を楽しんでいるのだ。
たくさん働くと興奮するというだけで問題を作り出す。」

自分の働き方を見つめなおしたいときに。

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本『インターネットは民主主義の敵か』

『インターネットは民主主義の敵か』
著 キャス・サンスティーン
毎日新聞社

アメリカで発売されたのが2001年、日本版が2003年なので、
もう10年以上前の本だが『閉じこもるインターネット』で思い出したので
引っ張り出してきました。

インターネット論や検索エンジンが与えた社会的影響といったときに
必ず取り上げられるのが、この本。
つまりは、ネットのフィルタリングは、同じ意見の人どうしが集まり、
孤立化し、自分とは反対の論を見なくなることを助長し、
サイバー・カスケードを生むというのが主論。
最初に聞いたときは、ネットに否定的な人の心配しすぎな論じゃないかと
思ったのだが、以下、ちょっと引用。

「第一の問題点は分裂、つまり言論によって多様の集団が成立することだ。
情報通信の選択が集団ごとに違うわけだ。その結果のひとつとして、
相互理解が難しくなると考えられる。社会が分裂すると、過激主義や憎悪、
そして暴力までも引き起こしかねないグループの二極化が進むことになる。
もちろんインターネット等の新テクノロジーのおかげで、
自身の声の反響を聞いたり、自らを隔離する能力が劇的に高まっている。
重大な結果のひとつにサイバー・カスケードがある。
ある特定の事実あるいは見解が、多数の人が信じていそうだという理由だけで、
広くゆきわたる情報交換のプロセスのことだ。」

「明白なのは、大小含めて多くの社会的グループは
驚くほど素早く特定の信念または行動へと飛びつくことだ。
この種のカスケードは情報の伝達を伴うが、
実際には情報が牽引車になっている。ほとんどの人は、重大な事柄について
直接の、あるいは本当に確かな情報を持ち合わせていない。」


これは現在、まさに起こっていることじゃないだろうか。
2001年と今で大きく違うのは、検索によるフィルタリングがより強力になったこと。
(GoogleがYahoo!に採用されるのが2000年なのだが、
この本にはグーグルの名前は出てこない。)
そして、対抗手段になるはずの新聞や雑誌などの影響力が落ちたこと。
(過激な思想のネットグループとして仮想の「ボストン・ティー・パーティ」が
登場するのはちょっと笑える。ティーパーティ運動が始まったのは2009年。)

私たちは現在、あふれるほどの情報に囲まれているはずだが、
受け止めているのはほんの一部だ。
ニュースにしたって、RSSやTwitterの見出しだけ見て判断していることが多い。
はたしてこれでいいのだろうか、というのが最近の私の関心事であります。


(著者は防衛手段として、自分と異なる意見のリンクを義務づけるとか
政府による公共的な議論の場所を提案しているが、
現実性にとぼしく、実際、10年後に効力を発揮していない。
ついでに付け加えると、元々、硬い文章だったのか、訳が悪いのか、
非常に文章が読みにくい。
政府による規制の部分は正直、理解できなかったです。)

関連本:
『閉じこもるインターネット』
『ネット検索革命』
『グーグル革命の衝撃』

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本『「当事者」の時代』

『「当事者」の時代』
著 佐々木俊尚
光文社新書

佐々木さんの本はほとんど読んでいるし、Twitterも見ているので、
最初に『「当事者」の時代』というタイトルを聞いたときは、
「あー、東日本大震災において、「被災者の気持ちになれ」って
言ってしまう人たちの話だろうな」と予想はついた。
“マイノリティ憑依”という言葉もすんなり納得がいった。

実際に本を読んでみたら予想と違って、
震災以後の話は終章に出てくる程度だった。
もちろん、あとがきにあるように、震災がこの本の方向性に
大きく影響を与えていることは間違いないのだが、
それを期待して読んだ私からすると「あの話はまだー」のように
感じるほど、前置きが長い。(いや前置きじゃないんだけど。)

著者が新聞記者時代に体験した<夜回り共同体>と<記者会見共同体>の問題、
プロフェッショナルな市民運動に仮託して描いた「市民感覚」、
小田実による<被害者=加害者>論、津村喬の『わられの内なる差別』、
「七・七告発」による学生運動全体への波及、
1970年に<マイノリティ憑依>へと走った本多勝一、
「憑依」を支えてきた総中流社会、
1990年代後半に五十五年体制が崩壊し、
<マイノリティ憑依>がエンターテイメントとして意味をもたなくなる、
ざっとこんな感じでメディア言論の変遷を追っている。

ひとつひとつの話はしっかりしているし、
アル・ジョルソンやヤシロのエピソードもおもしろい。
しかし、1970年当時をリアルで知らない私にとって、
たかだかひとりの論文が当時の言論を変えてしまうほどの
力を本当にもっていたのか、そのまま信じられない。
津村喬や本多勝一についてもちゃんと著作を読んだことがないので、
佐々木さんが語るままの受け止め方をしていいのか、と感じてしまう。
『クライマーズ・ハイ』を見たときにも思ったけど、
記者と警察のわずかなボディーランゲージによって作られる特ダネ
って何だろう、これをジャーナリズムといえるのかという疑問もぬぐえない。

マイノリティ憑依する人たちはいつの時代にもいたのだろうが、
東日本大震災やネットによって、露骨にその声が大きくなった気がする。
「被害者の前で同じことが言えるのか」
「福島の母親の気持ちになってみろ」
と罵倒する人たちは、被害者でもないし、福島に住んでもいない。
そのことに対する気持ち悪さは震災以後ずっと感じており、
<マイノリティ憑依>という言葉で説明されてすっきりした。
ただ、私が掘り下げてほしかったのは現在の部分なので、
そういう意味でははなはだ物足りない。

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本『ソーシャルゲームのすごい仕組み』

『ソーシャルゲームのすごい仕組み』
著 まつもとあつし
アスキー新書

なぜ、人々は今パッケージゲームではなくソーシャルゲームにハマるのか。
月に数万円をつぎ込むユーザーもめずらしくないという
モバゲーやGREEのソーシャルゲーム。
任天堂とソニーの家庭用ゲーム機シェア争い、
iPhone登場によるガラケーからスマホへのプラットフォーム展開、
『ドラクエ』、『FF』など壮大なRPGから物語性の分離、対戦・育成への変化
など、ゲームの歴史を俯瞰する。

また、問題になっている課金やガチャについて。
本書で紹介されている『アイドルマスターシンデレラガールズ
コンプガチャシミュレーター』をやってみたら、
私の場合、コンプまで10万円かかりました。
(シミュレーターだから本当に10万円かかるわけでもなく、
実際のゲームとは違う可能性もありますが。)

ソーシャルゲームの場合、ゲームをリリースしてからでも
ゲームバランスを改善してユーザーの離脱率を減らすことができる。
DeNAは、ソーシャルゲーム以前にeコマースやオークションを手がけており、
GREEにはコミュニティー運営やアイテム提供の経験があり、
ノウハウとして生かされているのでは、という指摘に納得。

ソーシャルゲームってシステムとしては簡単なものが多いので、
一度つくってしまえば、あとは楽なのではと勝手に思っていたのですが、
むしろユーザーを飽きさせないために定期的にイベントをしかけたり、
新しいアイテムを投入していかなければいけないのだなと。

モバゲーやGREEの話が中心なのに、
解説画面にジンガのCityVilleが引用されているのはやや違和感。
成長にかげりがあるとか、ガチャの問題提起はされているものの、
今後はどうなる?まで話が進んでいないのは残念。

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本『理系の子』

『理系の子 高校生科学オリンピックの青春』
著 ジュディ・ダットン
文藝春秋

50ヵ国から1500人以上の高校生が参加し、
400万ドルを超える賞金と奨学金をめぐって競う
『インテル国際学生科学フェア(ISEF)』を追ったドキュメンタリー。

核融合炉を作った14歳の少年、ハンセン病の少女、
ホース・セラピーの研究をしている少女、
喘息で苦しむ妹のため、ラジエーターと炭酸飲料の空き缶から
部屋を暖めるヒーターを作った少年、
手話の代わりに文字を描く手袋を発明した少年など、
ISEF2009に参加した子供たちの勝敗の行方を追いつつ、
伝説となった優勝者たちのエピソードを紹介している。

サイエンスフェアは日本ではなじみがないけど、
アメリカでは各地で行われていて、映画だと
『ルイスと未来泥棒』などで描かれている。

地元のサイエンスフェアで優勝することによって、
さらに上の大会に出場できる。その最高峰がISEF。
彼らが何を研究して、何を発明したかというより、
彼らの研究に賭ける熱意がおもしろい。

こうした研究に出場できるだけあって、
多くは教育環境に恵まれた子供たちなのだが、
なかにはここで優勝して奨学金をもらえないと大学に行く夢が
閉ざされるという子供たちもいる。

第二のビル・ゲイツと呼ばれてるフィリップ・ストライクは
9.11によって多くの友人を失った両親がJ・P・モルガンを退職し、
10歳のときにアーミッシュの農場へと引っ越す。
地元の学校に満足できなかったので、母親が自宅学習をはじめ、
高校二年生でカーボンナノチューブの研究でサイエンスフェアに出場し、
ハーヴァードに進学し、10万ドル以上の奨学金を獲得、
特許をもとに会社を設立する、という輝かしい成功例だ。

後半ではフェアで子供たちが交流する様子や
授賞式の模様も描かれている。

サイエンスフェアにかける青春というテーマはものすごくおもしろいのだが、
残念ながらドキュメンタリーとしての描写はイマイチで、
彼らが何を研究しているのかがわかりにくい。
また、感動的なエピソードをつなげているだけという印象も残る。
(むしろ、巻末に掲載された日本からサイエンスフェアに出場した
女子高生の体験記が雰囲気をよく伝えている。)

原題は『Science Fair Season』。これはこれで素敵だが、
『理系の子』という邦題は秀逸。

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本『スマートテレビ』

『スマートテレビ』
著 西田宗千佳
アスキー新書

言葉だけが先行してしまったために、
実体がわかりにくい「スマートテレビ」について、
スマートテレビとは何か、なぜテレビの価格は暴落したのか、
タブレットやスマートフォンとの連携などを解説。

サムスンが勝利を収める一方で、
パナソニックもソニーも巨額の赤字を記録。
“亀山モデル”でブランディングに成功したシャープも
強みであったはずの“液晶パネル生産設備”がお荷物になっている。
ここらへんの現状が非常によくわかる。

テレビはすでに一種のPCであり、
ネットやタブレット、スマホと連携していくのも必然の流れだろう。
スマートテレビ自体はバズワードなどではなく、
実際に今、動いている流れであり、今後もテレビのPC化は加速し、
数年後にはテレビの観かたは大きく変わっているはず。

現在、テレビをリアルタイムで見るのは
スポーツの試合のほか、Twitterの実況中継が楽しめる番組になるだろう。
スマホでツイートを確認しつつ、テレビを見るのは結構大変なので、
テレビ画面に組み込んでしまおう、という考えはわかるのだが、
みんながみんなニコニコ動画になる必要もないよね、とも思うわけで。

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映画『(ハル)』

『(ハル)』

いまさらであるが、追悼森田芳光ということで『(ハル)』を見る。
1996年の公開当時は映画館で見たのだけれど、
今ではHuluで見たいときに見られる。

パソコン通信を舞台にしたメールのやり取りというのは
さすがに時代を感じる。
ハンドル名という響きも懐かしく、このころには、
ネット上の自分と、実際の自分という区別があったのだなと。
(「RTしよう」という言葉が出てくるが、
「リアルタイム会議室」、いわゆるチャットルームのことなんだけど、
当時、そんなふうに呼んでましたっけ? もう「リツイート」しか思い浮かばない。)

画面の大半をチャットのやりとりやメールが
埋めつくす手法は、相当、斬新だったと思うが、
パソコン通信の雰囲気を表現するためには、これで正しかったと思う。
むしろ、当時見ていたときは何の違和感も感じなかった気がする。
あらためて見てみると、メールで語っていることが必ずしも真実ではなかったり、
(ハルが明らかに嘘をつく場面では文字が赤くなっている)
淡々とした日常生活との対比がよく出ている。
メールの内容もごくごく普通のもので、
その後の『WITH LOVE』のように、
わざとらしく2人の距離を縮める感じがないのもいい。

日常生活はすごく静かな映画で、
深津絵里の恋人を失った喪失感を抱えている感じが
とてもいい。(彼女がちゃんと笑うのはラストだけなのだ。)
私は深津絵里を特別好きではないのだけど、
この映画の彼女は本当にいいと思う。

内野聖陽もちょっと爽やかすぎるんだけど新鮮。
戸田菜穂演じるローズは、明らかに『ノルウェイの森』の緑のパロディーで
何度も深津絵里が村上春樹の本を並び替えたり、
(『ノルウェイの森』の隣に『ダンス・ダンス・ダンス』を置くのだけど、
あれはなぜなんでしょうね。)
亡くなった恋人の名前が春田だったりする。

そのほか、ハルの元カノが当時、ちょっと目立ってた山崎直子。
今、調べたら山崎努の娘だとか。切れ長美人でした。
あと、深津絵里に言い寄る役で宮沢和史とか。

静かな映画の中で、大きく動の部分が新幹線なのだが、
あれは名シーン。
実際にはパソコン通信で知り合った人があんな風に
出会ったりしないとは思うんだけど。
(また蛇足ですが、当時はリアルタイムで
NIFTYの映画フォーラムにいたので、公開したときは話題になりました。
といっても当の映画フォーラムはシスオペ辞任騒ぎに揺れていたのだけど。)

映画のラストの台詞は予想がつくのだけれど、
あそこはやっぱり実際に声が欲しかった、
と見た当時も思ったっけ。


本『本当は怖いソーシャルメディア』

『本当は怖いソーシャルメディア』
著 山田順
小学館101新書

タイトルは釣りみたいなもので、
サブタイトル『2015年「メディア融合時代」を考える』が本当のところ。

「フェイスブックがユーザー数をどんどん伸ばし、
フェイスブックフォンの発売まで計画して、ヴァーチャル共和国の
建設を目指す。グーグルがオープンなアンドロイドOSをつくり、
SNSに進出し、グーグルテレビをつくる。アマゾンが単なる書籍リーダー
ではない「Kindle Fire」というタブレット端末を発売する。
また、既存のプリントメディアの雄である新聞社が必死になって
自社サイトの課金化を図り、『ウォールストリート・ジャーナル』紙は
フェイスブック内にページを開く。
このようなことは、みな同じ一つの流れなのである。」

FacebookとAndroidとKindle、Hulu、グーグルテレビ、既存の新聞社、テレビ局、
メディア融合時代はみんなが同じ土俵でパイを奪いあっている。
まだ勝者は決まっていないけれど、結果として既存メディアはレベルを落とし、
SNSはそれに代わるものを生み出していない。

「ところが、現在のところ、ネットはこのプロフェッショナリズムと
モラルを崩壊させる方向に進んでいる。また、価値のある情報には
対価を払うという習慣さえ、読者から奪おうとしている。
「ニュースも情報も、エンターテインメントも、みんなタダで手に入る」
とユーザーに思わせたことで、ネットは大躍進をとげ、
ついにソーシャルメディアを生み出した。
しかし、ここでなにかが、確実に失われた。
プロフェッショナリズム、モラル、公益性……などがない世界を
想像してみてほしい。現在の既存メディアの経営はどんどん悪化している。
そのため、広告を取るのに血眼になっている。
これが進むと、ジャーナリズムは読者の方向を向かなくなり、
広告主や権力に媚びることになる。日本村のユーザーが泣いて喜ぶ事態、
マスコミが本当にマスゴミになる日がやってきてしまうだろう。」

全体の書き方が著者のいう「おっさんのタワゴト」みたいなところがあり、
話の本質がとらえにくいのだが、この危機感はもっておくべき。

フェイスブックの本質はフラタニティやソロリティなど、
大学の社交クラブであり(このへんは『facebook』がよく描いている)
「お友達になれるのは同じ階層に属する人たちだけ。
じつはリアル社会の階層化をネットに移し替えているだけ」
だということは、あまり大きな声で言われないけど、重要なポイント。

ジョブズが「常に愚かであれ」と言ったのは、
スタンフォードのエリート学生に向かってであり、
シリコンバレーはつねに高学歴のエリート層によって形成されている
というのも、今のネット社会を考える上で必要なこと。

私たちはもうソーシャルメディア上で本音なんか言えないんだ
ってのも共感。

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本『閉じこもるインターネット』

『閉じこもるインターネット グーグル・パーソナライズ・民主主義』
著 イーライ・パリサー
早川書房

グーグルのパーソナライズドは人によって検索結果を最適化する。
「アップル」と検索すると、ある人には「リンゴ」を、
ある人には「アップル社」の検索結果を表示する。
便利な機能だが、これがすべての検索結果に渡ると、
人は自分の見たいものだけしか見なくなる。
しかも、自分が見たいものしか見ていないのだということに気がつかない。
他の人には別の検索結果が表示されているということも知らない。

「自分の見たいものだけしか見ない」というのは
震災以後、強く感じるようになったことだ。
私のTwitterのタイムラインには同じような考え方の人が並ぶ。
なぜなら、その人の考え方に賛同するからフォローしたのだから。
そうでない人のツイートはだんだん見なくなる。
アンフォローするか、メインのリストから外してしまったから。
そうすると、「だって、“みんな”そう言っている」というとき、
“みんな”とは自分の同じような意見の“みんな”となる。

Facebookは“いいね!”という共鳴の文化だから、
賛同される意見は上に表示されるけれど、
反対意見は書き込みにくい。

2003年、キャス・サスティーンは『インターネットは民主主義の敵か』
において、「ネットはカスケードを加速させる」と懸念を表明した。
自分の興味のあることしか検索しなければ、
自分の興味の範囲外のことや意見から遠のいていくだろうと。
当時は、そういう考えもあるのか、ぐらいに思っていたのだが、
この危険性はどんどん強くなっていうように思う。

しかも、今では、パーソナライズされた個人データはビジネスになる。
たとえば、旅行サイトで「ハワイの格安航空券」を検索したなら、
航空券を買わなかったとしても、「ハワイの格安航空券に興味のある人」
というデータがどこかで売られ、以後、ブラウザーの横には
ハワイや航空券の広告が表示されるようになる。
こうした「行動リターゲティング」はすでに行われている。

マーク・ザッカーバーグは「アイデンティティはひとつだ」というが、
誰もがいつでもどこでも公明正大でいられるわけではない。
ましてや、クリックや“いいね”を元にしたアイデンティティは
私そのものではないのに、私のデータとして利用されるのだ。

かつて人々が夢見たオープンなインターネットはどこで変化したのか。
立ち止まって考えてみるために必要な一冊だと思う。

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本『団地団 ~ベランダから見渡す映画論~』

『団地団 ~ベランダから見渡す映画論~』
著 大山顕、佐藤大、速水健朗
キネマ旬報社

マンガ、アニメ、映画、小説などに登場する団地を語ろうという本。
もともとはロフトプラスワンで数回に渡って開催されたトークライブで、
大山さんの『団地の見究』をもっている私としては
いつも参加したいなーと思いつつ、行けなかったイベントなので、
書籍化されてとても嬉しい。
さすがに書籍化にあたり、だいぶ構成し直されていると思われ、
トークイベントでは脱線しまくっていたであろう話もすっきりまとまっている。
追記されたらしい注釈の部分にも熱が入っていて、
ここだけでも十分読み応えがあるのでは。

自分の覚書として、出てくる作品をざっとあげると、
大友克洋『童夢』
岡崎京子『リバーズ・エッジ』
安野モヨコ『ラブ・マスターX』
『ウルトラマン』第26話「怪獣殿下 前編」
『ウルトラセブン』「あなたはだぁれ?」
『耳をすませば』
『新世紀エヴァンゲリオン』
『下町の太陽』
『喜劇 駅前団地』
『しとやかな獣』
『家族ゲーム』
『大市民』
『団地妻 昼下がりの情事』
『昭和歌謡大全』
『デジモンアドベンチャー』
『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』
『放蕩息子』
横溝正史『白と黒』
『ほえる犬は噛まない』
『ザ・ホード 死霊の大群』
『人生は、時々晴れ』
『コロッサル・ユース』
『お早よう』
『ピカ☆ンチ LIFE IS HARDだけどHAPPY』
久保寺健彦『みなさん、さようなら』

作品の良し悪しとはまた別に、そこに団地がどう描かれているか
という話が中心なのだが、それでも
『しとやかな獣』から『家族ゲーム』、『昭和歌謡大全』へと続く
映画のオマージュが発見されたり、
『放蕩息子』と横溝正史『白と黒』は同じ大蔵団地を舞台としていることが、
テキサス州立大学の地図アーカイブから分析されたり、
憧れの住宅だった団地が、都市とミニチュアを象徴したり、
やがて高齢化、老朽化、スラムや孤独を現わすものへ変遷していく様子を
『団地妻 昼下がりの情事』のリメイクから読み取ったり。

ある意味、映画やアニメってこういう風にも楽しめるという
見本みたいなトークが繰り広げられていて飽きない。

個人的には団地で生まれ育ったので、
団地にノスタルジックを感じるようなのにはやはり違和感を感じる。
大きくなってからふと見上げた団地がとても美しく、
ああ、団地ってモダニズムの結晶なんだと思ってから団地好きになった。
中学生の頃はどこへ行っても知り合いだらけなわけで、
ちょっと買い食いしていると、同級生のお母さんに見つけられたりした。
今ではもう住民は老人ばかり。
階段やロビーやポストは最近になって綺麗にリニューアルされてしまった。
「もう子供なんていないよ」っていう佐藤さんの話にも同感。
そのうえで、やっぱり団地には惹かれるのです。


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本『グーグル ネット覇者の真実』

『グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ』
著 スティーブン・レヴィ
阪急コミュニケーションズ

著者のスティーブン・レヴィの名前をどこかで聞いたことがある
と思ったら、1995年~2008年までニューズウィークの記者を務め、
現在はWiredのライターだそうだ。
(ビジネス誌を比較したことがないのだが、少なくとも
ニューズウィークは相当きちんとしたネット記事を掲載していた。
私が初めて“インターネット”の脅威について読んだのも
ニューズウィークの記事だった。)

著者は長年培った信頼をもって、グーグル内部の取材を許可される。
サーゲイ・ブリン、ラリー・ペイジ、エリック・シュミットの3人、
グーグルオタクにはおなじみマリッサ・メイヤーはもちろん、
すでにグーグルを辞めてしまった人たちも含めて
多くのグーグラーに取材し、戦略会議への出席も許された。

そうしてできたのが本書ということで、
今まで想像でしか語られなかったグーグルの内幕を
だいぶ克明に描いている。
そこに見えてくるのは大企業になってしまって苦悩するグーグルの姿だ。

第1章は検索エンジンとして成功するまでの話なので、
グーグルについて読んだことのある人なら
それほどめずらしい話でもない。(『Google誕生』に詳しい)
それ以降のアドワーズによる莫大な収益、
「邪悪になるな」というモットーがどのように生まれたか、
(そしてその言葉がその後どのようにグーグルを苦しめたか)
Gメール、グーグル・ドキュメント、アンドロイドの誕生、
スカイプ買収をめぐる社内抗争、YouTube買収、中国進出と撤退、
反トラスト法、ストリートビュー、グーグルブックをめぐる法廷騒動、
オーカット、ドッチボールを手がけていながら、SNSに乗り遅れた失態
(元Gメール担当ポール・グックハイト、元グーグルマップ担当
ブレット・テイラーはフレンド・フィードを設立し、フェースブックに買収された。
ブロガーの共同設立者エヴァン・ウィリアムズは
グーグルがブロガーを買収後、放置されていることに愛想をつかし、
グーグルを退社し、Twitterをつくった。
ドッチボールのデニス・クロウリーはその後、フォースクエアをつくる。)

グーグルが必死に大学生気分の会社をめざしたのにも関わらず、
大きくなりすぎた企業が何をするにしても厳しい目で見られたし、
社内も変化してしまったのがよくわかる。

グーグルという会社の透明性と秘密主義という相反する姿、
(ザッカバーグよりはまともだと思ってたんだけど)
ペイジとブリンという創業者2人の変人ぶり、などもおもしろい。

訳者あとがきにあるように、本書の裏テーマは
「グーグルは邪悪になったのか?」である。
気軽には動けない大企業になってしまっても
挑戦しようともがくグーグルは邪悪になりきれないジェダイのようだ。

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本『パブリック』

『パブリック 開かれたネットの価値を最大化せよ』
著 ジェフ・ジャービス
NHK出版

『グーグル的思考』の著者、というかデルのサービスに対し、
文句をブログに書いて有名になった“デル・ヘル”の
ジェフ・ジャービスによるパブリック論。
フェイスブック全盛の時代、自分の情報をネットに公開するのは
いいことなのか、人はどこまで情報を公開すべきか、
プライベートとパブリックの境はどこにあるのか、と問いかける。

ジェフ・ジャービス自身は、自分が前立腺癌であることを
ブログで公表しているぐらいなので、パブリック擁護派。
というより、プライバシー擁護派に対抗するために
この本は書かれているので、基本的にパブリックであることに前向きだ。
(プライバシーとパブリックは相反するものではないと著者は言う。)

私もこのブログで自分の病気について公開しているので、
(このブログでいちばん読まれているのはチョコ関係なのです。)
公開すること、シェアすることのメリットはわかっているつもり。
でも、それは同じ病気で悩んでいる人に読んでもらいたいだけで、
ちょっとした知り合いに話したいわけではない。
(親しい友人に知られるのはOKだけど、
会社の同僚レベルにはちょっと。)
だから、この話をFacebookに書こうとは思わない。

ザッカバーグのようにパブリックを全面的に肯定する気にも
まだなれず、かといってプライバシー擁護者のように
ネットをすべて怖いともいいきれない。
その境界を考えるにはいい本。
しかし、答えは私が出すよりも早く、ネットが決める気がしますけどね。
良かれ悪しかれ、世の中はどんどんパブリックになっていくのだ。

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本『リーダーの値打ち』

『リーダーの値打ち 日本ではなぜバカだけが出世するのか?』
著 山本一郎
アスキー新書

「私たちはこんなに頑張っているのに、なぜ成果に結びつかないんだろう?」
という第1章はなかなか耳が痛かった。
「どうして、こんな馬鹿な人が組織のリーダーになっているのだろう?」
という第2章はスカッとした。すべての上司に読んでいただきたい。

「本来のトップというのは、目的を設定し、そこに参画している人たちに対して
その目的の達成に参画してもらうことが主たる任務です。
個人でも組織でも社会でも、そこの長となる人物は、
まず自己の存在を見つめ、そこからどこへ向かっていくのかを規定し、
歩き始めるところから、すべてを始めなければならないのです。」

しかし、そのあとの日本の閉塞感の理由と現状分析は
独特の書きかたもあり、肯定しているのか否定しているのかわかりにくかったり、
最終的に、理想のリーダーが育たないなら、自分が理想のリーダーになるべく
努力するのが近道(ともとれる)結論なのはなんとなく肩透かし。
著者にしては優しい物言いだなとも思うのですが。

個人でも会社組織でもまず「事実の自分と向き合い」、
「どこへ向かうのか」を整理すべきというのはもっとも。
来年の指針としたいと思います。

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アフィリエイト!

そうそうココログアフィリエイトが終わっちゃったので、
通常なら5000ポイント以下だとできない換金ができるのです。

そういえばいくらぐらいなの?
と確認してみたら、4165円になってました。

アフィリエイトで稼ぐ気はもちろんなく、
たんに表紙画像を載せたかっただけなのですが、
こんな細々としたブログでも塵も積もればなんだなー。

本だと『シェア』とかネット関係が売れたようです。
あと、意外にミルクスチーマーとか。
(Amazonだと自分が載せた本以外でも、アフィリエイト経由で
Amazonに移動して、本を買ってくれるとポイントになるようです。)

Amazon

来年4月までしか換金できないので、手続きもしてみました。
本何冊分かになるので嬉しいです。

わざわざこのブログ経由で
本や物を買っていただいた方々ありがとうございました。


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