本『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』

出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと (河出文庫)

『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』
花田奈々子
河出書房新社

本をすすめるのは難しい。
「乗り物が好き」とか「ハリーポッターは読んでる」とか
少しでも情報があればいいほうで、よくあるのは
「小学校◯年生の女の子に本を贈りたいのだけど何がいいか」といったもの。
性別と年齢はわかっても、いつもどれくらい本を読むのか、
どんなジャンルが好きなのか、といったことはわからない。
本を贈る本人もその子のことをよく知らないのに、
ましてや赤の他人の私が何をどうすすめていいものか。

そういえば、この本のタイトルをあげて
「あれみたいに本すすめてくれませんか」と聞かれたこともありました。
がんばって何冊かすすめてみたものの力不足で購入にはいたらず。

そんな簡単に本をすすめられると思うなよという恨み節的な事情もあり、
有名なのでタイトルは知っていたものの、
ちょっと変わった読書ガイド本だと思って、手にとらずにいました。

ライトなタイトルとは裏腹に、旦那と別居中で、
12年間続けたヴィレッジヴァンガードの仕事もやめようかどうしようか
悩んでいる菜々子さんが、出会い系サイトを通じていろんな人と出会うことで、
自分が本当にやりたいことはなんなのかを自問し、
前に向かって進み始めるという、なかなか力強い話でした。

私も15年勤めた会社を辞めたから、
彼女のヴィレヴァンに対する愛と、それが失われつつあっても、
かつて自分に居場所を与えてくれた場所だけに離れがたい気持ちとか、
ここを辞めて自分に何ができるのだろうかという不安はすごく共感できました。
(辞めてしまった今では人生なんとかなるし、
何度でもリセットすればいいと思ってますが。)
彼女にとって辞めるための勇気と自信を与えてくれたのが
出会い系で出会った知らない人たちというのがおもしろい。

本をすすめるためのポイントというのも参考になります。

 

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本『雪のひとひら』

雪のひとひら (新潮文庫)

『雪のひとひら』
ポール・ギャリコ
矢川澄子 訳
新潮文庫

『スカイ・イクリプス』で引用されていた文章が気になって読んでみました。

空から舞い降りた「雪のひとひら(snowflake)」をとおして女性の一生を描く。
大人のための童話というか、綺麗な詩のような一編。

「雨のしずく」と結ばれて子供までできるあたりはメルヘンすぎる気もするけれど、
海のなかで孤独静かに老いていく様とかなかなかシビアな擬人化です。

「私はどこからきたのか、なぜ生まれてきたのか」という問いは普遍的なもの。
子供の頃は不意にこの問いに包まれて
自分の存在の不思議さに動けなくなるような気分になりました。

ところどころ言葉の選び方が不思議だなと思っていたのですが
(悪いわけではなく、絵本のような調子でつづられているのに
「わだつみの」とか「幼なご」という言葉が使われていたりするので)、
訳者は詩人でもあるのですね。
訳者解説が「女性である雪のひとひら」と「男性的なる神」
みたいになっているのはなんか不満。

 

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本『北のはてのイービク』

北のはてのイービク (岩波少年文庫)

『北のはてのイービク』
ピーパルク・フロイゲン
岩波少年文庫

冬の岩波少年文庫シリーズ。
タイトルのみでまったく内容を知らないまま読みました。
グリーンランドに暮らすエスキモーの少年の物語。

お父さんと一緒にセイウチ狩りにでかける少年イービク。
わーいと思ったのもつかのま、お父さんがセイウチに殺されるという衝撃の展開!

狩りをする一人前の男を亡くしてしまうと、
食糧、燃料、衣類、すべてが失われてしまうというエスキモーの過酷な暮らし。
それと同時に狩りさえうまくできれば
すべてが供給される彼らの生活の豊かさも垣間見える。

味のあるイラストはイングリッド・ヴァン・ニイマン。
『長くつ下のピッピ』のオリジナルの挿絵で知られる人。

死者の話はしないという喪の服しかた、じかにものをたずねる習慣がない、
相手を立てた遠回しな物言いなど、エスキモー独自の文化もおもしろい。

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本『スカイ・イクリプス』

スカイ・イクリプス―Sky Eclipse (中公文庫)

『スカイ・イクリプス』
森 博嗣
中公文庫

『スカイ・クロラ』シリーズ最終巻。
とはいっても物語は前巻『クレィドゥ・ザ・スカイ』で
終了しているので、消化試合のようなもの。

『スカイ・クロラ』シリーズ大好きというT嬢に
久しぶりに会う機会があったのであわてて読みました。

シリーズを補完する外伝的短編集というか、読者サービスのヒント集みたいな感じで、
いくつかの疑問は解決したものの、前巻でちゃぶ台返しされた謎は解けないまま。

疑問をそのままT嬢にぶつけてみると、
「どちらも◯◯◯◯」という答え。
「そういう世界だと思って読んだほうがいい」
「理詰めで理解しようとしないほうがいい」
「『スカイ・クロラ』以降は後付け設定を辻褄合わせしているところもある」
「映画版のラブストーリーというキャッチは笑って見ていた」
ということで謎は解けないものの、検証サイトの考え方よりはずっと納得できました。

ササクラさん推しの私としては、短編集でクサナギとササクラさんが
イチャイチャしているのが微笑ましい(飛行機の話しているだけですが)。
『スカイ・クロラ』におけるあの距離感はなんなんだ。
作者のフーコ推しはなんなんだ。
クリタくんの立場は?
とまだまだ疑問はつきませんが、シリーズとしてはひとまず完結です。

本『暮らしをつくる ものづくり作家に学ぶ、これからの生きかた』

暮らしをつくる ~ものづくり作家に学ぶ、これからの生きかた (Local Life Book)

『暮らしをつくる ものづくり作家に学ぶ、これからの生きかた』
甲斐かおり
技術評論社

<読書メモ>

「何かを美しいと感じる時の人の心のレベルってとても高いところにあると思うんです。
美しいもので暮らしやこの世の中が満たされたら、きっとこの世は戦争から離れていくと思う。
自分のつくるモノで、社会がいい方に変わったらすごくいいなと思いますよね」

自分の手で一つひとつやってみて得た答えは、
本やインターネットで3分でわかったつもりになっている知識と再現力が大きく違う。
世間ではどれほど当たり前のことでも、自分で試してみない限り知らないに等しいのだ。

 

 

本『アンデルセン童話集 3』

アンデルセン童話集 (3) (岩波少年文庫 (007))

『アンデルセン童話集 3』
アンデルセン
大畑末吉 訳
岩波少年文庫

大畑末吉訳による『完訳アンデルセン童話集』は全7巻だが、
岩波少年文庫では3巻におさめられており、その最終巻。

有名なところでは『赤い靴』、『雪の女王』を収録。
『赤い靴』ってこんなに殉教的な話だったんだ。

『雪の女王』は子供の頃、レコード付きの紙芝居をもっていたので
話は知っているつもりだったのだけど、完訳版だと結構長い
(そして残念なことにそれほどおもしろくない)。
行く先々でカラスから山賊の娘まで、いろんな人がゲルダを助けてくれるんだけど、
それがゲルダ自身の持つ「やさしい罪のない心」の力だと言われても。
雪の女王は思っていたより悪い人でもないし、カイのヘタレっぷりはあいかわらず。

「いったい、あんたのために世界のはてまでいくほど、
あんたに値打ちがあるのか、あたしは知りたいね。」

『びんの首』、『古い家』など時の移り変わりを描いた作品が印象的。
白眉は『「あの女はろくでなし」』。
すごいタイトルですが意味がわかると、アンデルセンの母親への愛と尊敬が感じられます。

ちなみに昔『アンデルセン物語』というアニメがあったのだけど
(1971年放映なのでさすがに再放送を見たのだと思われ)、
そのなかで『氷姫』という話が結構トラウマでした。
タイトルが『雪の女王』に似ているけれど別の話。
氷姫に気に入られた男の子が成長して青年になると、
彼の結婚式の前日に指輪を取りに海へと潜ったところ
氷姫に連れ去られるという、ホラーのような物語。
岩波少年文庫版には収録されていないけれど、
『完訳アンデルセン童話集 5』に収録されているようです。

アンデルセン童話集って子供向けじゃないよなということを再確認した3冊でした。

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本『侍女の物語』

侍女の物語 (ハヤカワepi文庫)

『侍女の物語』
マーガレット・アトウッド
斎藤英治 訳
ハヤカワepi文庫

1985年の作品だが、Huluでドラマ化されたことで再び注目されている。
タイトルからヴィアトリア朝時代あたりの話かと思っていたら、
近未来ディストピア小説でした。

語り手がどういう境遇にあるのか、というのは
次第に明らかになっていくわけですが、最初から一種の諦念というか、
何かを諦めていかないと生きていけない彼女の語りがしびれます。

設定自体がとてもおもしろいのですが、
彼女の抑制された語りそのものも読み応えがあります。
静かな諦めと微かな希望、悔恨あたりが混じった感じは
『わたしを離さないで』にも似ている。

人間が管理社会にどうやって飲み込まれていくのか、というあたりは『一九八四年』。
女性が子供を産むための器となった世界からみた
フェミニズム、恋愛観というのもすごい。出産シーンの醜悪さ!

めちゃめちゃおもしろくて他の本を放り出してこればかり読んでいたので、
三日ほどで読み終りました。Huluのドラマも気になる。

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本『アンデルセン童話集 2』

アンデルセン童話集 (2) (岩波少年文庫 (006))

『アンデルセン童話集 2』
アンデルセン
大畑末吉 訳
岩波少年文庫

『アンデルセン童話集 1』は『おやゆび姫』や『みにくいあひるの子』など、
いかにも子供向けの童話!という感じの話でしたが、
『童話集 2』は『人魚姫』、『マッチ売りの少女』など、
アンデルセンの中でも暗い話満載で本領発揮という感じです。

靴を汚したくなくて白いパンを踏んだため、
泥の中に沈んでしまった『パンをふんだ娘』とか、
病気の男の子のために咲いた花(『天使』)とか、
解説のいうところの「深い宗教的な諦念」が感じられます。

『人魚姫』は子供の頃は、助けてくれた人魚姫から王子を奪うなんて、
隣の国の王女はひどい!と思っていたんですが、
今読むと徹頭徹尾、人魚姫の片思いですね。

「王子のへやの外のビロードのクッションで寝てよろしい、
というおゆるしが出ました。」なんていう一文もあって、
これってセクシャルなメイドみたいなものじゃないの?
(倉橋由美子版では人魚姫は愛人として書かれてるとか。)
王子にとって人魚姫は結婚相手どころか、恋愛対象ですらなかったのでは。
人魚姫が王子を殺しに行くのが、
新婚初夜のあとのふたりの天幕だというのもなんだか気持ち悪い。

さらに、人魚姫は海の泡になって終わり、
ではなくて、泡から空気の精となり、300年のあいだ、よい行いをすると、
「不死のたましい」を授かり、神さまの国へのぼっていけるというラストでした。
妹は「なにその苦行」と言ってましたが、ほんとだよ。

一方で、『野の白鳥』でエリザがさまよう森の描写の美しさとか、
子供向けの本ではわからなかったアンデルセンの魅力も感じられた巻でした。


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本『レシピがいらない! アフロえみ子の四季の食卓』

レシピがいらない! アフロえみ子の四季の食卓

 

『レシピがいらない! アフロえみ子の四季の食卓』
稲垣えみ子
マガジンハウス

アフロえみ子こと稲垣えみ子さんの料理本。

『もうレシピ本はいらない』実践編という感じなので、
内容にそれほど目新しさはないんですが、
玄米ご飯に梅干し、ぬか漬け、干し野菜の味噌汁
といった地味なビジュアルが実においしそう。

料理自体はたしかに簡単そうですが、自家製味噌やぬか漬け、
干し野菜あたりにおいしさのポイントがありそうなので、
そのまま真似できるかどうかはわかりません。
でも、ぬか漬けはチャレンジしてみたい。

『もうレシピ本はいらない』のときはご存命だった稲垣さんのお母様が、
この本の時点では亡くなられているのが、少し悲しいですね。
以下、引用文が心にしみます。

「ああ「ご飯を作って食べる楽しみ」とは、自分で作り上げているようでいて、
実はそうじゃなかったのです。
それを喜んで食べてくれる誰かにそっと支えられてようやく成り立っていたのだなあ。」

「でもそれは一人暮らしであっても、結局は同じことなのかもしれません。
自分で料理を作り続ける原動力は、何よりも、
その料理を心から「おいしい」と思って食べる自分自身です。
どんな逆境に置かれようとも、例えば会社をクビになろうと、
連れあいに先立たれようと、自分で料理を作り、
それを心から美味しいと思って食べられる自分がいれば、
人生は全くもって何とかなっていくんじゃないでしょうか。
自給自足とはまさにこのことです。」

 

 

本『富士日記 上』

富士日記(上) 新版 (中公文庫 (た15-10))

『富士日記 上』
武田百合子
中公文庫

年末年始、富士が見えるところに行くのだからと、
『富士日記』に手を出してみました。
勝手にお洒落なおばさまのお洒落な日記だと思っていたら、
なんとも豪快な女性の元気な日記で楽しく読みました。

自衛隊に向かって「バカ」と言い、ご主人の武田泰淳にたしなめられ、
口の悪い若者たちに言い返して、娘に「あんなことやめてね」と言われ、
テヘペロしてる感じの百合子さんがかわいいです。

私は乗物酔いしやすいこともあり、車の運転にまったく興味がないんですが、
車がないと暮らしていけない富士の山荘で、買い出しに出たり、
原稿を出しに行ったり、湖に泳ぎに行ったり、
フットワーク軽く運転している百合子さんを見ると、
運転できるというのも悪くないのかもという気がします。
(武田泰淳が運転を妻に完全にまかせているのもまた。
「桜を見に行こう」とか「明日東京に帰る」とか
さらっと決めて運転は百合子さんという。)

昭和三十九年八月十七日の日記に
「今朝、佐田啓二が蓼科の別荘からの帰り、韮崎で交通事故死。」
とあったので、母に聞いてみたら、
地元の人は「当時、事故現場まで見に行った」と言っていたとか。
「佐田啓二ひとりが亡くなったのよね」とよく覚えている。

日記なので急がずタラタラと読んでいこうと思います。


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本『それでも人生にイエスと言う』

それでも人生にイエスと言う

『それでも人生にイエスと言う』
V.E.フランクル
山田邦男、松田美佳 訳
春秋社

積読本シリーズ。
『夜と霧』のフランクルの著書。

1946年に行われた講演をもとにしているので、文章自体は読みやすく、
それほど長い本でもないのですが、
強制収容所を生きのびた人が語る「生きる意味」はとても重く、
今まで3回くらい挑戦しては途中で挫折し
(第1章を3回、第2章を2回くらい読んでいる)、やっと今回、読了しました。

どんな状況でも、苦難と死にもかかわらず、病気を抱えていても、
強制収容所にいてもなお、人生には意味がある。

フランクルは精神科医であり、心理学者なので、
いくつもの診療ケースからこの結論を導き出しており、
強制収容所での経験は実践例のひとつです。
この講演の1年ほど前にはまだ彼は収容所にいて、
自分の未来を考えることすらできない状況だったとは!

人ははたしてそこまで強くなれるものか、
今の私には自信がありませんが、
生きる意味を問い直したくなったときに再読してみたい一冊です。

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本『読んでいない本について堂々と語る方法』

読んでいない本について堂々と語る方法 (ちくま学芸文庫)

『読んでいない本について堂々と語る方法』
ピエール・バイヤール
大浦康介 訳
筑摩書房

積読シリーズ。フランスでは2007年、日本では2008年出版のベストセラー。
2020年、一冊めがこの本でいいのか。

帯には「読書感想文ももう怖くない!」とありますが、
そんな簡単なことではなくて、「本を読む」とはなにかという話でした。

そもそも「未読」にもいろんな状態があって、
「ぜんぜん読んだことがない」、「ざっと読んだことがある」、
「人から聞いたことがある」、「読んだことはあるが忘れてしまった」
という段階がある(この本には「完読」という状態はない)。

私たちは「本を読んでいる」と思っているけど、
その実、「本にまつわる言説」を読んでいる。
だから「本にまつわる言説」を理解できれば、本そのものを読んでなくても
その本について語ることは可能である、と著者はいう。

ネット時代とはいえ、本に関する情報を集めて取捨選択するには
当然、本についての知識も必要となり、
ほかの本と対象しての「位置関係」を理解するには、
まったく一冊も読んでいない状態では無理。
あきらめて地道に本を読んだほうが早いのではと思うので、
これは一種の著者流のユーモアなのかも。
それとも「完読」したつもりでも、「本にまつわる言説」、
「本の位置関係」を理解していないのであれば、読んでいないと同じという皮肉なのかも。

各章にいろんな本からの「読んでいない本についてコメントする」例が引用されているんですが、
映画『グラウンドホッグ・デイ(邦題『恋はデジャ・ブ』)が出てくるのは嬉しかった。

ほかにも、ゲームに勝ちたくて『ハムレット』を読んでいないことを告白してしまい、
終身在職権を失ってしまった大学教授の話とか(デイヴィッド・ロッジ『交換教授』)
もおもしろかったです。

著者は大学教授であり、精神分析家なので、後半の本領発揮の部分はなかなか難解。


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本『ヒロインズ』

ヒロインズ

『ヒロインズ』
ケイト・ザンブレノ
西山敦子 訳
C.I.P.BOOKS

韓国における『82年生まれ、キム・ジヨン』のヒット同様に、
日本でも新たなジェンダーの動きが生まれている。
『ヒロインズ』の日本語訳刊行はそんな中で2018年のちょっとした事件だったと思う。


フィッツジェラルドの妻ゼルダ、トム・エリオットの妻ヴィヴィアン、
ポール・ボウルズの妻ジェイン……、大作家の影となり、
作家としての才能を認められることなく精神を病んだヒロインたち。


無名の作家であり、夫の仕事にともなって移転をくりかえす著者は
彼女たちに強く共感し、彼女たちの物語を綴る。


著者の不安定な精神状態を反映するように、
ヒロインズの物語と著者の日常が交錯するので、
今ここで書かれているのはゼルダのことなのか、著者自身のことなのか、
それともさらに別のヒロインのことなのかわからなくなり、
さらにあちこちの小説、伝記や手紙からの引用も多く、
文体に慣れるまでは読むのに苦労しました。


くりかえし綴られるのは「書くことは生きること」
という著者とヒロインたちの魂の叫び。


「才能がない」とされた作家は書く資格がないのか、
でも才能のあるなしって誰が決めるの?


現代であれば別の診断が下されたかもしれないヒロインたち。
抜歯や馬の血清、電気ショックと当時の治療は
彼女たちの精神状態を悪化させたのではと思うものばかり。


フィッツジェラルドとゼルダについては予備知識があったものの、
ヴァージニア・ウルフやアンナ・カヴァンなど未読の作家も多く、
あらためて読んでいきたいです。


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本『月は無慈悲な夜の女王』

月は無慈悲な夜の女王 (ハヤカワ文庫 SF 1748)

『月は無慈悲な夜の女王』
ロバート・A・ハインライン
矢野徹 訳
ハヤカワ文庫

『夏への扉』が有名なハインラインの代表作。
『夏への扉』が「結局君はその幼い少女が美しく成長するのを待ってたんだよねっ」
という感じのタイムトラベル・ロマンスなので、本作も甘め路線かと思っていたら
月の独立をかけた革命というバリバリのSF超大作でした。


1965年の作品で、月と地球の対立には冷戦時代の雰囲気や
人種差別に対する皮肉を感じますが、電話線を使ったコンピューターとの通信網や、
自我をもったAI、世界の中で中国が大きな決定権をもっているあたりは
1965年とは思えないほど予言的な設定です。


原題は『The Moon Is a Harsh Mistress』。
「ミストレス」を「夜の女王」と訳す邦題にしびれます。

(ここらへんのSF邦題はほんとかっこいい)

私は「無慈悲な」部分が気になって自意識をもったコンピューター、マイクが
どこかで人類を裏切るんじゃないかとドキドキしながら読みましたが、
この作品の中でまちがいなく一番魅力的なキャラクターがマイクで、
ラストのほうの彼のセリフには泣きました。


「マン、この人は馬鹿じゃなしですか」

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本『種まきノート』

種まきノート―ちくちく、畑、ごはんの暮らし

『種まきノート』
早川ユミ
アノニマ・スタジオ

アジアのカラフルな布や自給自足のご飯がおいしそうで読んでみました。

著者は若い頃からマレーシア、タイ、インド、ネパールなど
アジア各地を旅したり、少数民族と暮らしたりしているので、
アニミズム的な自然信仰がすんなり根づいてるんだなと思います。

(考え方としては理解できるんだけど、
「土を通して身体が宇宙とつながってる」とか言われると少し引くのだ。)


それでも自分が作ったものを食べたときの幸福感
(これって「満足」や「おいしい」じゃなくて「幸せ」なんだよね)とか、
ああ、わかる〜と思うこともたくさんありました。


小さなコミュニティや自給自足の生活、薪を割って作る器にご飯にお風呂って、
「楽しい」だけではないだろうと推測するので
単純に「素敵!」と憧れたりしませんが、アジアの布をちくちくするのはとても楽しそう。


「神さまは、カとミ、だから火と水のこととききました。」

 

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