« 『オリエント急行殺人事件』 | トップページ | 『IT屋』 »

『オタク女子研究 腐女子思想体系』

オタク女子研究 腐女子思想大系
『オタク女子研究 腐女子思想体系』
杉浦由美子・著
原書房

オタク女子、なかでも“やおい”や“ボーイズラブ”を愛好する“腐女子”について
オタクライターを自称する著者が語った本。

これだけオタク男子が注目されるなか、今までほとんど無視されてきた
オタク女子にスポットを当てたという点ではおもしろい。
私自身、BLには興味がないものの、オタク属性は強いと思うし、
ガンダムとエヴァを見ていないとバカにされるような職場にいるので、
オタクへの理解は比較的あるつもりだったんですが、
「腐女子なんて、ブスで処女が多いんだろう」程度の認識でした。すみません。
(正確に言うと、今の世の中、ある程度、ファッションや化粧に気を配れば
ブスな女子ってほとんどありえないので、腐女子の人たちは
そういう世界に無関心、あるいは綺麗になることを放棄しているんだと思っていた。)

著者によると、現在の腐女子の多くは、そこそこ小奇麗な格好をしているので、
普通のOLさんと外見では区別がつきにくい。
普通の恋愛や結婚も楽しんでいて、“萌え”と“恋愛”は別腹。
妄想の中に自分が入らないからって自己否定してる訳じゃない、
ありえない設定を楽しんでいるだけだ、と。

腐女子の妄想にかかると、「小沢一郎は総受けのお姫様」だとか
いろいろ今まで知らなかった腐女子の実態についても書かれているんですが、
この本が決定的に弱いのは「なぜ男×男なのか」という疑問に
全く答えてくれないところ。
「オッパイが2倍見たいからという理由で男がレズものを見るように、
私たちは男の子が2倍見たいだけ。健康的でしょ。」
と著者はさらっと書いていますが、それだけでは説明にならない。

著者は「BLはストーリー重視で、一時期エッチなものが増加したけど、
エロだけを好む腐女子はわずかだ」と言いますが、
“受け”とか“攻め”というからにはBLが性的なものと無関係なはずはない。
そのヒントとして“マスターベーションファンタジー”、“セックスファンタジー”
という言葉が出てくるんですが、それ以上は著者も躊躇したのか、
踏み込んだことは書かれていない。
「好きなものは好きだからしょうがない」(というどうしようもないタイトルのBLがありますが)
嗜好の問題だと言われればそれまでですが。

それともうひとつ、この本で残念なのが、
負け犬(『負け犬の遠吠え』の30代、独身、子なし女性たち)と
恋愛至上主義者たちへのバッシングがものすごいこと。
いわく、「負け犬はお勉強ができるから歌舞伎が好き。
今どき、あんな気合の入ったスーツ姿をしているのは
就職活動中の学生か、歌舞伎座の一等席に座る負け犬だけ」
「負け犬は無駄な努力が大好きで、30歳をすぎて英会話力を
スキルアップしようとする」
「モテ系をめざす若い女性の自分磨きは無駄な努力」
「腐女子は自分の分をわきまえているから、
無駄な努力なんてしないけど、現実の男に対して欲もないから
ちゃんと恋愛も結婚もできる」
おそらくこれは、あとがきで著者が触れているように
負け犬および恋愛至上主義者たちから
「あんたはマンガばかり読んでるから男ができないんだ」と
散々バッシングされてきたことへの恨みなんでしょうが、
なんかねー、いいじゃん、誰が何に夢中になろうと。

あとオースティンの『エマ』が引用されているんですが、
あの台詞はエマの母親じゃなくて、母親代わりだった家庭教師の先生。
オースティンのヒロインたちは読書量が多くて知的と書いてあるけど、
エマは全然、本を読まなくて、おじさまにあきれられていたじゃないか。

« 『オリエント急行殺人事件』 | トップページ | 『IT屋』 »

「書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/27590/1345156

この記事へのトラックバック一覧です: 『オタク女子研究 腐女子思想体系』:

» エマ [マンガの知識館]
エマエマ (Emma)英語圏で多く見られる女性の名前。愛称はEmmie,Emmyエマ (小説) - ジェーン・オースティンの小説エマ (漫画) - 森薫の漫画エマ (E.M.A - Engineer Meritocracy Associationの頭文字表記)エマ (パチスロメーカー) - 兵庫県伊...... [続きを読む]

« 『オリエント急行殺人事件』 | トップページ | 『IT屋』 »