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『銀座並木座』

銀座並木座―日本映画とともに歩んだ四十五年
『銀座並木座 日本映画とともに歩んだ四十五年』
嵩元友子・著
鳥影社

「いつどこで誰と見るかで映画の印象は変わる」
と誰かが言っていたが、
たいていの映画はどの映画館で見たか覚えている。
『晩春』、『麦秋』、『秋日和』、『秋刀魚の味』、小津作品の多くは並木座で見た。
小津映画は食事の場面が多いので、見終わるといつもおなかが空いて、
近くのファーストフードでアップルパイを食べた。
(学生だったから貧乏だったのさ)
『あらくれ』や『山の音』など成瀬作品も並木座。
平日でも休日でも昼間でも夜でも、いつ行っても並木座は満員だった。
「高峰秀子よ、若いわねぇ」、「佐田啓二よ、やっぱり似てるわね」(中井貴一のことか?)
といった、おばさまたちの会話も楽しかった。
客席に大きい柱があって、立ち見をするとスクリーンの何分の一かが隠れた。
フィルムの状態も音響も椅子も決して良いものではなかったけど、
並木座にはあそこでしか味わえない雰囲気があった。

そんな並木座の45年間をつづった一冊。
といいたいところだが、実際には開館時の話に多くのページが割かれている。
元々は印刷所であの柱はその名残だったこと、
『青い山脈』の名プロデューサー藤本眞澄が創立者だったこと、
財政難を乗り切るために、一時は日活ロマンポルノや任侠映画も上映したことなど
本書を読んで初めて知ることも多い。
'98年に並木座が閉館したとき、「結構、客は入っていたはずなのになぜ」
と思ったのは私だけではないだろうが、そこらへんの事情ははっきり書かれていない。
後期の並木座の歴史については、よくわからないままだとか
つっこみの甘さに不満はあるものの、
冒頭の数枚の写真だけで、懐かしくて泣ける。
やっぱり1月はいつも小津特集だったんだということがわかる上映リストや
『NAMIKI-ZA Weekly』復刻版が付いているのも嬉しい。
著者もあのときあの映画館にいた一人だったんだなと思う。

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 嵩元友子著『銀座並木座 日本映画とともに歩んだ四十五年』(鳥影社刊)は、1998年9月22日に45年の歴史を閉じた名画座・銀座並木座の開館から閉館までの歩みを“プログラム”と関係者へのインタビューからまとめ上げた本です。... [続きを読む]

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