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『俺が近所の公園でリフティングしていたら』

俺が近所の公園でリフティングしていたら
『俺が近所の公園でリフティングしていたら』
矢田容生・著
小学館

2ちゃんねるに連載されていたサッカー小説。
高校生である主人公が、モニカという少女と出会ったことから、
ワールドユース、そしてワールドカップをめざす物語。

実際の選手やチーム名がざくざく出てくる、らしいのだが、
正直、サッカーを見ない私には全くわからない。
ルックアップ、ハーフウェイ、サイドバックといった用語もさっぱりなので、
かなりていねいに描写されている試合場面もいまひとつイメージできない。
そんな奴がこの小説を読んで感想を語るなという感じであり、
おそらくこの小説のおもしろさの8割ぐらい、私はわかっていないのだが、
まあ、それを差し引いても楽しく読めました。

アナウンサーの絶叫だとか、ゴールのあとのパフォーマンスだとか、
サポーターたちのよくわからない共感だとか、
サッカーというスポーツにまつわる熱狂がとても苦手で、
ワールドカップも早く終わんないかなーぐらいな人なんですが、
この小説を読む限り、サッカーとは熱狂しながら見るべきスポーツであり、
それがサッカーのおもしろさのようだ。
サッカーファンが求めるであろう“熱さ”をこの小説はちゃんと描いており、
そこが多くの2ちゃんねらーに支持されたのだと思う。

以下、欠点。
無名の選手や弱小チームがあるきっかけで頭角を現わし
あと一歩というところで挫折し、そこから立ち直り、栄光をつかむ
というのはスポーツもののセオリーで、そこはきちっと押さえているが、
その分、予定調和すぎるかなという気もする。
そして、きっかけや立ち直り方が安易で
後半『スクール・ウォーズ』みたいな展開になっちゃうのは惜しい。

何よりもキーポイントであるモニカがきちんと描かれていないので、
主人公が彼女をきっかけとして、サッカーへの情熱を深めていくあたりが弱い。
モニカをガイジン(正確にはハーフ)にしたのも、なぜなんだろう。
ガイジンがよくないと言ってるのではなく、
金髪で青い眼で、とびきりかわいくてサッカーがめちゃくちゃうまくて、
胸とお尻の大きなチャーミングな女の子、なんてほとんど漫画である。
(おまけに彼女の台詞が「カモン、ボーイ」に「ジャアネ、スケベサン」だ)
モニカにリアリティーがまったくないので、
いくら選手やコーチ、試合設定をリアルにしても、全体は漫画ちっくだ。
熱い台詞の数々も現実感にかけ、どうしてもクサくなってしまうのだが、
著者は元々、素人だと考えると、それはしかたないだろう。
まあ、この漫画っぽいノリが良いという人もいるかもしれないけど。

「抜ける技術があっても、勝負に行かなきゃ抜けっこない。
すごいシュートを打てる技術があっても、シュートを打たなきゃ点は入らない。」
という台詞には納得。
サッカーの場合、選手選びや試合の運び方について
みんな監督みたいな調子で語っているのも私には不思議なんだが、
それもサッカーのおもしろさのひとつなんだろう。
サッカーファンにとって、「もし俺がワールドカップに出場できたら」
という夢を描いてくれた小説なんだと思う。


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