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『少女小説から世界が見える』

少女小説から世界が見える
『少女小説から世界が見える ペリーヌはなぜ英語が話せたか』
川端有子・著
河出書房新社

『若草物語』、『家なき娘』、『小公女』、『あしながおじさん』、
『赤毛のアン』といった少女小説から、
歴史的背景やジェンダー意識を読み取る本。

サブタイトルにもなっている『家なき娘』のヒロイン、
ペリーヌが英語を話せたのは、
彼女が生まれたインドが当時イギリスの植民地だったという背景がある。
そして、フランス人の父とドイツ人の母の混血であるペリーヌは
英語が話せるバイリンガルであり、この英語力でもって、
女工から社長秘書へとなり、身分を隠した上で祖父に認められ
工場の改革を進めるのである。

一方、『小公女』のヒロイン、セーラは
イギリス人の父とフランス人の母のもと、やはりインドで生まれ
流暢なフランス語を話すことで学校で一目置かれ、
インドの言葉を覚えていたことでラム・ダスと知り合い、
彼女の身分がわかるきっかけとなる。

ペリーヌとセーラはともに混血であり、ともにバイリンガルであり、
この国境越境性が彼女たちの強みだった、
という指摘は非常におもしろい。
そしてラストでは、個性的な少女たちだった2人がともに、
ペリーヌはフランスの社会に、セーラはイギリスの社会に
レディとして組み込まれていくという点もなるほどと思う。

セーラは幼かったので保護者が登場するのみだが、
これが『あしながおじさん』になると
ジュディはおじさんと結婚する。
(彼女は作家としての未来を捨ててしまうのだ)
少女たちが成長し淑女となり家庭に入るというのが
当時の少女小説が描いたジェンダーなのだ。

男の子になりたかったジョー、
男の子にまちがえられたアンにも
ジェンダーの話がでてくるが、これはちょっとあいまい。
むしろ『アンの娘リラ』に代表されるように、
戦争が少女を成長させるイニシエーションとなり、
以後、牧歌的な少女の世界は失われたという最終章がおもしろい。

ペリーヌは賢い少女は紺の服を選ぶものだと
私に教えてくれた。
学業に優秀なセーラやアン、
ジュディの寮生活も私のあこがれだった。
そういう元少女たちに、新たな読みを提案する、
なかなか知的なおもしろい本。
「不幸せな結婚をするより、幸せな老嬢でいたほうがいい」
というマーチ夫人(ジョーのお母さん)の台詞は名言。

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