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『世田谷一家殺人事件』

世田谷一家殺人事件―侵入者たちの告白
『世田谷一家殺人事件 侵入者たちの告白』
斉藤寅・著
草思社

現在、めちゃくちゃ売れてるらしく、どこの本屋でも平積みになっている。
2000年12月30日に起きた世田谷一家殺人事件は、
衝撃的な事件だったので、私もよく覚えている。
犯人が一家を殺害した後に、
のんびりアイスを食べていたという報道がとくに怖かった。
少し前のニュースでは、近くの公園で慰霊式(?)のようなものをやっていて、
女性捜査官が犯人に向けて「覚えていますか、あの日のことを。
私たちは絶対にあなたを許しません」みたいなことを訴えていたのを見たが、
はたして、そこで訴えることに何の意味があるのか、とも思った。

この本では、犯人はクリミナル・グループと呼ばれる、
アジア系外国人の犯罪集団であると特定している。
グループの一員から聞いた話として、事件を再現している場面は生々しくて、特に怖い。
(逆にいえば、こうした週刊誌の記事のような書き方に違和感も覚える。)
女子大生誘拐事件の直後だけに、外国人による犯罪集団という話にも説得力がある。
しかし、取材上の秘密もあるだろうが、
その結論にいたるまでの過程が一足飛びなので、
なぜ彼らが犯人だと断言できるのか、根拠ははっきりしない。
(推理小説ではないので、当たり前だが、真実に一歩一歩近づいていくような
緊張感もないのに、著者が取材に走り回っていたことを強調するのも少し冷める。
警察の不手際や、警察のソースばかりを鵜呑みにするメディアを批判しているのに、
著者が得た情報だってほとんどは警察からだ。
それを自分の情熱が警察に訴えたように書くのはどうなんだろう。)

世田谷の事件にしても、同じグループの犯罪としてあげられている
大分の恩人殺しや大阪の風俗嬢殺人事件にしても、
残酷な殺害を犯していながら、
目的である金は数万円程度しか得ることができていない。
これは犯人側にしても効率が悪すぎるんじゃないだろうか。
これを“大きな仕事”と呼ぶなら、そこには日本に対する深い憎しみがある。
著者は「外国人留学生のほとんどはまじめな学生である」と断っているが、
正直なところ、読み終わったあと、アジア系外国人を怖く感じたのも事実だ。
そして、実際にネット上のレビューを読むと、
アジア系外国人に対する非難につながっているものも多く、
そうした読み方に危機感も感じる。

著者が犯人を特定し、写真を入手したのが2003年なら、
なぜ、その後もこの事件は解決しないのか。
この本が出版されるまでにかかった3年はどういう意味があるのか。
ノンフィクションとしてはかなり読み応えがあるが、
事件が解決していないので、不安ばかりが残る本である。

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