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『感動をつくれますか?』

感動をつくれますか?
『感動をつくれますか?』
久石譲・著
角川書店

『となりのトトロ』などの宮崎アニメ、
『あの夏、いちばん静かな海。』に始まる北野作品などの
映画音楽で知られる久石譲が、自身の作曲活動について、
映画と音楽について、創造力について語った本。

私は久石譲の映画音楽を「演出過剰でうるさい」と思っている。
(それでも『となりのトトロ』にも『あの夏、いちばん静かな海。』にも
あの音楽が必要だったことは認めざるえない。)
『感動はつくれますか?』というタイトルにも引き気味だったのだが、
読んでみたら意外におもしろかった。

北野武は「普通なら音楽が必ず入る箇所があるでしょう?
そういう箇所から一切、抜きましょう」と言い、
久石譲も「映画の説明過剰な音楽の使い方は嫌だ
という北野さんに共感する。」と書いている。
北野武はいかにもという感じだが、
久石譲の音楽を演出過剰と思っている私にはこの言葉は意外。
(『あの夏、いちばん静かな海。』の音楽は
台詞や演出の空間を埋めるためにあると思っていた。)

「冒頭の5分でその映画全体の音楽の量が決まる」とか
「映画一作につける音楽は平均20~30曲。
宮崎アニメは上映時間が長いせいもあって曲数は比較的多い。
大林作品は曲が入らない場所を探すほうが難しい。
北野作品は10曲ほどだが、一度音楽を入れると長く使うから、
トータルで音楽の入っている時間は決して短くはない。」
という話もへーっと思った。

よく使われる映画を盛り上げるための音楽を“状況外音楽”といい、
出演者が演奏したり、街に流れているBGMなど
効果音に近い音楽を“状況内音楽”といい、
監督作『カルテット』は状況内音楽で構成した映画だったそうだ。

「『冬ソナ』を見て、「うわー、こんな恥ずかしいことよくやるよな」と
思ったが、「こんなことは僕にはできない」と思うことは、
自分の中で勝手に自分を規制していることにほかならない。
あざとくても下世話でもそういうものが求められているならば、
堂々とやりきってしまうほうがいい。
恥ずかしさというのは、自分をよく見せたいと思う心の裏返しだ。
頭の中にそんな自意識があったのでは、本当に人を楽しませたり
喜ばせたりするものをつくることはできないだろう。」

「創造力の源である感性、その土台になっているのは、
自分の中の知識や経験の蓄積だ。
そのストックを、絶対量を増やしていくことが、
自分のキャパシティ(受容力)を広げることにつながる。
質より量、とにかくたくさんのものを自分の中に取り込む。
中にはつまらないものを読んでしまった、おもしろくなかった、
と感じることもある。それも蓄積だ。」

などなど。
しごくまっとうなことを言っているだけだが
プロとして仕事を続けてきた著者が言うとそれなりに説得力がある。

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コメント

>私は久石譲の映画音楽を「演出過剰でうるさい」と思っている。

部長のこういうところが好きだ。

ありがとう(笑)。

でも、うるさいと思わない?
久石譲に限らないけど、「映画を見に来たんであって、音楽を聞きにきたんじゃない」
みたいな映画音楽って多いと思うんだけど。(しつこい?)

坂本龍一にいたっては『ASIENCE』のCM曲ですらうるさい。

私はストーリー盛り上げ目的で作られた音楽というものがとても苦手です。
映画とかオペラとかのオーケストラが特に。

ヘンな音楽聴かされるくらいなら、ココを出て行きたい、と思うので
映画が苦手だったのかもしんない。
(最近は平気)

部長はたとえば、
ナウシカの「ラン・ランララ・ランランラン」とかもだめ?

あー、それは平気。
歌だってのもあるけど、あの歌はあの場面に必要だしね。
『トトロ』のまっくろくろすけが空に飛んでく場面は音楽も含めて好きだよ。

要はその映画にその音楽があってるかなのかなー。
韓国映画なんかだとクライマックスに「それ、泣け」みたいに音楽がガンガンかかるけど、ベタな演出にベタな音楽だからあまり気にならない。
逆に、音楽だけガンガン盛り上がっているのに、お話の方が全然盛り上がらないと、「うるせー」となるのかも。

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