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『キヤノンの仕事術』

キヤノンの仕事術―「執念」が人と仕事を動かす
『キヤノンの仕事術 「執念」が人と仕事を動かす』
酒巻久・著
祥伝社

現・キヤノン電子の社長が書いたビジネス成功の秘訣。
曰く、「やらされている」という意識ではなく、「自分のために仕事をする」
という発想が、「いい仕事」になる、とか、
「知識の裾野が広くないと、大きな仕事はできない」とか
「短期集中こそ上達の近道」とか
社長さんだけあって、社長の訓示みたいな話がいっぱい。
すべての仕事がおもしろくって、やる気が出せれば誰も苦労はしないさ。

それでも、この手のビジネス本にしては比較的おもしろく読めるのは、
成功譚ばかりでなく、失敗経験も書かれているからだろう。

「シンクロリーダー」で失敗したとき、当時の社長の御手洗氏は
「今度のことは、すべて私のオッチョコチョイに起因したものであって
誰の罪でもない。この上は事後処理をよく行なって、禍を転じて福とされたい」
と言ったという。「オッチョコチョイ」というところがいい。

著者は1988年に発売された、パソコン『NAVI』で10億円、
1989年のネクストコンピュータとの提携で300億円の赤字を出している。
挑戦した結果の失敗は責めない、というのがキヤノンの企業風土であり、
このときの失敗も、後の糧になっていると言う。

キヤノンの主要商品の研究開発から製品化成功までは、
複写機で18年、レーザープリンターで21年、AFの一眼レフで22年、
BJ(バブルジェット)プリンターで26年かかっているそうだ。
「(夢を実現するのに)必要なのは、時機が来るのをひたすら耐えて待つ勇気、
そして「執念」である。」

上司が無能なときは、
「その人物のレベルに合わせて適当に働くようにして、
残りのエネルギーは次なる飛躍のための勉強に振り向けることだ。
言われたことだけやって、それ以上のことはしない。
残業などはなるべく避けてさっさと家に帰り、自分の勉強をする。」
なんていう“アドバイス”もある。

著者は『椅子とパソコンをなくせば会社は伸びる!』という本も書いており、
どういうことかというと、会議室から椅子を撤去し、
高さ1メートルほどのテーブルを並べ、椅子に座らず立ったまま
“立ち会議”を行なっている。これによって、会議時間の短縮や
コミュニケーションの強化、集中力などの効用があるという。
また、「メールで伝えられる情報は、自分の言いたいことの一割程度にすぎない。
本当に大事な話はメールではかけない。直接会って、
必要な資料を見ながら、じっくり話すしかない」という。
「「メールで社員に指示を出してます」と自慢げに話す若手経営者がいるが、
メールで全社に流したところで、社員は「ああ、社長がまた何か言ってるよ」
くらいにしか思わないだろう。本当に社員に伝えたいことがあるなら、
社長自らが折りに触れて社員の前で繰り返し説明することだ。」

「悪い噂が流れたときは、ヘタに反論などしないことだ」とか
「欲のない人は敵をつくらない。サラリーマンにとって敵をつくらないことは
出世の最大の要件の一つである。」
なんて話もあって、サラリーマンも大変だなと思ったり。

若手社員、上司、経営者、それぞれの立場から
何をすべきか、が書かれており、
これを読んだからって明日からすぐできる社員になどなれないが、
社長の訓示だと思って聞いておいてもいい話。

◆読書メモ

ドイツのブンデスポスト(国営郵政・通信公社)と仕事をしたときに、
「あなた方のハードに対する技術レベルの高さは十分に理解しております。
次回からお会いするときは、ドイツのどこでも良いから観光してきて、
その見てきた場所の感想から話してください。
その理由は第一に、あなた方には“ゆとり”が感じられない。
第二にドイツでものを売るなら、ドイツに合うソフトを充実する必要があります。
そのためには、ドイツのいろいろな人、場所に接することです」
と諭されたというエピソードはおもしろい。
(著者は諭されてすぐ、ローレライを見に行ったそうである。)

「才能とは持続する情熱である」(モーパッサン)

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