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『戦争廃墟』

戦争廃墟
『戦争廃墟』
石本馨・著
ミリオン出版

小笠原の砲台、特攻隊が出撃した海軍基地跡など、
日本に残る軍事関連施設の廃墟を掲載。

基本的には廃墟写真集なのだが、デジカメで撮っているのか、
黒い部分が綺麗に出ていないのが気になる。
(ついでに言うと、ところどころ文字詰めが変なのも気になる。)
写真自体のインパクトにも欠ける。
それでもどこか惹かれるのは、“場の雰囲気”ってやつなのかも。
建物には、その場所の歴史とか物語が染み付いている。
そこで何が起こったか知らなくても、その場所に立てば、
それはなんとなくわかる。
廃墟が人気なのもそれが理由だと思う。
なんにもないがらんどうのビルでも、
華やかだった時代や人々の暮らしが影みたいに残っている。
残念ながら、それは写真では伝わりにくく、
この写真集でも、撮りに行った本人にはわかるんだろうが、
写真を見るだけでは、そこに残っているであろう影はわかりにくい。

それほど長いものではないが、
軍事施設にいた元特攻隊員たちのインタビューも載っている。
最初は廃墟写真集にインタビューなんていらないよと思ったが、
この本でいちばんインパクトがあるのは写真ではなく彼らの言葉だった。

「回天」とは、人が乗り込み操作する魚雷。
元回天隊員で、現在、全国回天会会長の小渕氏は言う。
「特攻といえば人命を軽んじ、効果も薄い愚かな戦法だったと論じられる傾向がある。
己の命を捨て、何千、何万の命を生かそうとした、回天は非人道的な兵器どころか
人道的な兵器である。」
「回天は実現すれば自ら乗り込むことになる現場の若い軍人からの要望で実現した。
彼らはボタン一つで動く機械でもなければ、生命を軽く考える異常者でもなかった。」

特攻艇「震洋」の元隊員の話。
「紙を渡されて二重丸か○か×をつけるように言われた。
私は○をつけました。二重丸が全体の3分の2で圧倒的に多かった。
×をつけた人はいません。」
「これはもう戦争にはならないな、というくらい薄々感じましたよ。
震洋がいくらあっても連合艦隊の代わりになるわけないですから。」
「私なんか極端な話、地元の神社なんかにお参りしない。
やはり、なんと言っても靖国神社。
もし今、日本に何かあって、お前もう一度戦争に行くかと言われれば、行きます。」

「伏龍」は、一人用潜水具を着用し、棒付き機雷を持って、水中から敵艇を突く。
危険な潜水具だったため、訓練中の事故で亡くなる人が多かった。
鼻で吸って口で吐く。これを間違えると炭酸ガス中毒を起こし死に至る。
苛性ソーダの入った清浄缶に亀裂が入ると、海水と反応して沸騰した
苛性ソーダが逆流してくる。それを飲み込んで死んでしまう人もいた。

元伏龍隊員の話。
「軍隊に入る前は三越百貨店の店員だったんです。
復職した私に上司は2週間の特別休暇を与えた。
原因は私の顔。人殺しの顔だったんですよ。
昨日までアメリカ兵をどうやって殺そうかと、そればかり考えていましたから。
そんな顔でお客様の前に出るわけにはいかない。」
「復職してからは平和が続いて、
天皇陛下を護ろうなんて考えはケロッと忘れてしまいました。」

「桜花」は、上空で飛行機を母機から切り離し、敵艦に体当たりする。
着陸する必要がないので車輪はない。

元桜花隊員の話。
「国旗と言うのはその国の歴史みたいなものでしょう。
アメリカは日本と戦争して、その恐ろしさが骨身にしみたはずです。
だからこそ占領軍政策で日本人を洗脳し、骨抜きにしてしまった。
あげくに日本人自身が、日の丸はいけないなどと言い出す始末。
いい歴史も悪い歴史も背負って、初めて国旗と言えるんじゃないですか。」
「今のような世の中だったら、私は死んで三途の川を渡った時、
戦友に何と言ったらいいのか言葉がない。
もう少し時間が経ったら、反動で世の中が少しは良くなってくれるんじゃないかと
期待しています。そのためには私も長生きしないと。
もう少し戦友に報告することが出来てから、三途の川を渡りたい。」

実際に国のために命を懸けようとした人たちの言葉だから、
「特攻なんて愚かな行為だ」と切り捨てることはできない。
それでも、特攻という戦い方を選ぶしかないところまで
青年たちを追い込んだ、日本はやはり愚かだったんじゃないのか。

◆読書メモ
この本を読んで、大阪砲兵工廠が、
当時、日本の軍事力を支えた、大軍事施設だったと知りました。
大阪砲兵工廠は終戦前日の8月14日の空襲で壊滅。
この本には出てきませんが、私が大阪に行ったときに見た
大阪砲兵工廠化学分析所は、大阪砲兵工廠で唯一残った遺構。
工場自体はもっともっと広く、現在、跡地は、
大阪城ホール、公園、大阪ビジネスパークになっています。

Rimg0214
大阪砲兵工廠化学分析所

Rimg0216
ここはかなりはっきり“場の雰囲気”が残っている廃墟。

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寝屋川から。左が大阪ビジネスパーク、右が大阪砲兵工廠化学分析所。
ここらへん一帯が大阪砲兵工廠だった。

88式7cm半野戦高射砲
88式とは皇紀2588年(1928年)を意味する。

掩体壕(えんたいごう)
軍用機を敵機から守る格納庫のこと

JR外房線新茂原駅近くを一直線に伸びる、通称千メートル道路は
当時の滑走路跡と言われている。

トーチカ

回天発案者のひとり、黒木大尉は試作機を操縦中、消息を絶ち、
翌朝、発見され引き上げられたときには、すでに息がなかった。
事故の詳細な所見と遺書が艦内に残されていた。
(もうひとりの発案者、仁科中尉は敵艦に突撃して戦死。)

菊水紋 楠木正成

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