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『グーグル・アマゾン化する社会』

グーグル・アマゾン化する社会
『グーグル・アマゾン化する社会』
森健
光文社

これはかなりおもしろかった。
Web2.0という言葉にいいかげんうんざりしてきた人にオススメ。

トーマス・フリードマンは、現代を“フラット化する社会”と呼んだ。
ごく限られたCDや書籍のミリオンセラーに見るように、
多様化、分散化が進む一方で、“一極集中”が起こっているのではないか。
現代は巨大な一極とフラット化の社会なのではないか、と著者は言う。

グーグルのページランク、アマゾンのリコメンデーションやアフィリエイト、
タグやパーソナライゼーションは、
“スケールフリー・ネットワーク”において、
「金持ちはますます金持ちになる」という
“収穫逓増”、“自己組織化”の現象を起こす。

「絶えず情報が往来し、進化を続けるウェブでは、
収穫逓増が起こる仕組みがある。あるところでハブができると、
とくに空間的、物理的な制約がないウェブでは、急速に一極集中が起きる。」

「個人にとってパーソナライゼーションが便利なことは疑いないとしよう。
では、これだけ豊富な情報が流通する中で、
パーソナライゼーションが行きわたることは、社会にとって有益なのだろうか。」

「パーソナライゼーションの目的は情報の拡散ではなく、絞り込みにある。
その傾向は、マイページやブロゴスフィア、SNSに表れている」

「ネットワーク上では、考えが異なる別の集団の意見を排除し、
同じ集団内で考えが極端に偏るという傾向が指摘されている。
パーソナライゼーションが進み、“集団分極化”が広がった場合、
情報はその特定の集団の中だけで偏って流通する可能性がある。」

はたして“群集の叡知”は
「一極集中的な思考を回避し、多様性を認知しつつ、
主体性ある思考を貫けるのか」

たとえば、私がある建物の設計年をググって調べたとする。
検索結果の上位10件のサイトが設計年を「1985年」としていたら、
私はそれを信じて自分のブログにも設計年を「1985年」と記すだろう。
誰かが「それは1985年じゃなくて1980年だよ」と誤りを指摘しても
その声が小さければ(検索結果の上位に表示されなければ)
その声は届かない。こうして「1985年」という誤った情報が流布する。
この例は単に数字の誤りだけど、これが人の意見だったら?

著者によると靖国参拝を支持するという意見のほうが
ネットでは多数を占めるのだそうだ。
そうした情報の一極集中に何か怖いものを感じるのは私だけではないだろう。

「ロングテールビジネスで成功したのは、
アマゾンやグーグルのような一部のヘッドだけなのでは」
という指摘ももっとも。
アマゾンのように大量の在庫を抱えることができて、
長いテールの部分から玉を拾い出すシステムをもっていなければ
ロングテールで利益をあげることはできないわけで、
誰もが簡単にまねできるわけではない。
すでに「ロングテールは幻」ではないかという声も聞かれるそうだ。

ミリオンセラーからYouTubeの極楽とんぼの動画、
自民党の圧勝や靖国問題、
(ちょっと幅が広すぎるけど)社会のあちこちで起きている
一極集中現象をネットから分析している点でかなりおもしろい。

『「みんなの意見」は案外正しい』など、
今まで読んだ本の意見も広く引用されているので、
この手の本ばかり読んでいる私には、
ひとつのまとめとして参考になった。

便利にググっているつもりで、私たちは、
グーグル様の手の平で踊らされているだけなのかも。


◆読書メモ

スケールフリー・ネットワークの説明に
『ベーコンの神託(The Oracle of Bacon)』が出てくる。
ある俳優とケヴィン・ベーコンの間係数を調べるサイトで、
例えばジョニー・デップだったら、
ジョニー・デップは『ノイズ(The Astronaut's Wife)』でブレア・ブラウンと共演、
ブレア・ブラウンはケヴィン・ベーコンの『バイバイ・ママ(Loverboy)』に
出演しているから、ジョニーのベーコン数は2ということになる。
もともとは、ケヴィン・ベーコンが多数の映画に出演しているのを利用して
俳優と俳優をつなげていく学生の遊びだったらしいが、
(何年か前に流行ったときちょっと『News Week』に記事が載っていた。
ケヴィン・ベーコンに限らず、勝手に俳優相関図とか考えると暇つぶしになります)
これを発展させると、
「どんな人でも6人の人を介せば、誰とでもつながる」という
スタンリー・ミルグラムの“六次の隔たり”になる。

全言語圏のウェブページは、
2006年春の段階で800億ページ以上に及ぶとされる。

調査会社ニールセン/ネットレイティングスの2006年6月末の調べによれば
1位はヤフーで、日本語圏の総ページビューの25.4%と、全体の4分の1を占める。
2位の楽天が3.1%、3位のmixiが2,5%
米調査会社の調べによれば、
米国での検索エンジンにおけるグーグルの利用比率は、約53%、
フランスやドイツでは70%、イギリスでは80%近くのユーザーがグーグルを利用。

インターネットドメインにおけるIPアドレスの発行数の約半数を
米国は自国ドメインとして管理している。
欧州が欧州域における自発的な管理を強く求めたにも関わらず、
米国は断固として拒否し、その権利をわたさなかった。
現在ネット上を流れるデータの大半が、米国を経由するようになっている。

ブログに書き込まれた情報は、いつか誰かの役に立つかもしれないし、
あるいはまったく役に立たないかもしれない。
未来の状況はまったく想定不能だが、役に立つ可能性は決してゼロではない。

LAMP
LはOSのLinux、AはサーバーソフトApache、
MはデータベースソフトであるMySQL、Pはスクリプト言語PHPを指す。

アパッチの開発で中心的な役割を果たした
コラボ・ネット社のブライアン・ベーレンドルフは、
リーナス・トーバルズばかり注目されて悔しくないかと聞かれて、
「彼はその賞賛のすべてに値します。
オープンソースコミュニティには才能豊かな人が大勢います。
彼らは知的挑戦のためにコミュニティに入り、大きな違いを生み出しています。
私は喜んで『ナンバー2』と書かれたTシャツを着て歩きますよ」
と答えている。

リコメンデーションを実現するアルゴリズムは
協調フィルタリング、クラスター(集団形成)・モデル、検索ベース方式
と大別して3つあるが、アマゾンのリコメンデーション機能は、
「Item-to-Item Collaborate Filtering(商品間協調フィルタリング)」。
最初に、ユーザーが閲覧した複数間の商品のマッチングと類似性を数値化。
次に、購入対象の商品とほかの関連性があるすべての商品の類似性について
データベースを参照。その結果、出てきた数値の高いものから
リコメンデーションとして表示。この二段階の計算を0.5秒以内で行なっている。

『アマゾン・ドット・コム 成功の舞台裏』
ローレンス・レッシング『CDDE-インターネットの合法・違法・プライバシー』

情報だけが流通するウェブにかぎって言えば、
アーキテクチャの精度を高めることこそが、
人を呼び寄せ、情報を増殖させる鍵となる。

つねに、数時間から数ヵ月分は、世界中のウェブデータと丸ごと同じものを、
グーグルは保有しているのである。グーグルのウェブサーバーは
ある種のパラレルワールドで、グーグルの検索において、
ウェブの世界は、グーグルのものであるという言い方もできようか。
逆に言えば、クローラーが拾ってこないウェブデーターは、
グーグルでは認識されない。グーグルで認識されないウェブサイトは、
ほぼ存在しないのに等しいということになるのである。

沈黙の螺旋
「自分の意見が優勢と認知した人は声高に発言し、
劣勢と認知した人は孤立を恐れて沈黙する。
その結果、優勢意見はより勢力を増し、
劣勢意見はますます少数意見になる」

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