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『オーマイニュースの挑戦』

『オーマイニュース』の挑戦
『オーマイニュースの挑戦 韓国「インターネット新聞」事始め』
呉連鎬/著
太田出版

2000年2月22日午後2時22分に創刊した、『オーマイニュース』は
「市民みんなが記者」をモットーに参加型メディアを実現。
2002年の大統領選挙に大きな影響を与え、盧武鉉候補を勝利に導いた。
創刊時の苦労から、世界から注目を浴びるようになった2004年までを
『オーマイニュース』のオ・ヨンホ代表自らが語る。

代表自らが語った苦労話と成功譚といった感じではあるが、
『オーマイニュース』がどのようにして韓国に新しいメディアを築いたか、
熱のこもった文章で描写されている。
しかし、8月28日に創刊された日本版『オーマイニュース』は、
さっそくさまざまな問題を抱え、波乱の幕開けとなっている。
日本で新しいメディアが実現するまでは、まだまだ道のりは遠そうだ。

著者は韓国で『オーマイニュース』が成功した要因として、
韓国にはマスコミに対する不信・不満が、数十年にわたって積み重なってきたこと、
若い人たちの政治への参加意識が高いこと、などをあげている。
「政治の世界、マスコミ、財閥が腐りきっているだけに
改革しようというネチズンの意思は熱い。」

一方、巻末の解説で浅野健一氏は、
「日本ではスポーツ、ファッション、音楽関係の雑誌をつくりたいとか、
アナウンサーになりたいという若者は多い。
だが、社会派の硬派のルポを書きたいとか、戦争の現場を取材したいとか、
社会から差別をなくすために貢献したいという学生は年々減っているように思える。
日本の大学や職場で「世の中を良くしよう」などと言ったりすると、
“変な人”にされてしまう。」と語る。
「韓国に比べて日本には「準備された市民」が極端に少ない。
それは、この国では、「市民革命」が一度もなかったことと関係する。
実際、日本人が人民のパワーで政治を変えたことはほとんどない。」
(この本が出版されたのは2005年4月。まだ日本版の具体的計画はない。)

浅野氏は『オーマイニュース』が記者クラブを廃止に追い込んだ
功績は大きいと言う。
(韓国にも記者クラブがあるのか、と思ったら、
記者クラブは日帝が韓国に残したもので、
こんな制度は日本と韓国にしかないそうだ。)
『オーマイニュース』の提議とネット世論の高まりを受け、
盧武鉉政府は記者クラブを開放、
取材を希望するすべてに記者に機会を与える「開放型登録制」に変更した。

韓国の政治情勢に詳しくないので
『オーマイニュース』が大統領選にどのような影響を与えたのか、
本書だけではよくわからない。
また、『オーマイニュース』と盧武鉉政府との関連を指摘し、
本当に市民の声がストレートに反映されているのかという意見もあるようだ。
『オーマイニュース』を単純に成功したメディアとして見ていいのか、
日本の記者クラブの閉鎖性は確かに頭にくるが、
誰もが記者クラブに出入りすることはいいことなのか、
市民が参加することで世界がよくなるのか、いろいろと疑問もあるのだが、
実際にネット世論が政治を変えた例として『オーマイニュース』は注目に値する。
日本版の今後の行方も見守りたい。

◆以下、読書メモ
記者は宿命的に「自分の記事こそ本質をついている」
という前提で読者と向き合う、傲慢な存在だ。

四百人の編集局員を率いる『朝鮮日報』のサイトも、
その百分の一の四人しかいない『オーマイニュース』のサイトも、
ネチズンの見る画面であるコンピュータ・スクリーンでは同じサイズなのだ。

「朝鮮王朝末期から日本の植民地時代にいたるまで、日本の朝鮮半島における
植民地侵略を支持、賛美したり、民族の独立を妨害、遅延させ、
各種の収奪と強制労働などの先頭に立ったりして、
植民地統合と侵略戦争に協力した者たちの行為を記録した人名辞典」を
『親日人名辞典』といい、2006年8月、発売予定。
2004年1月、『オーマイニュース』は『親日人名辞典』の募金キャンペーンを行ない、
たった11日で目標の5億ウォンを集めた。

クリティカル・マス(ある事案を社会全体の世論へと作り上げるのに十分な、
適正数の世論作り集団)。
2001年の秋の時点で、『オーマイニュース』のトップ記事は、
数時間後に2、3万人が読む。その程度ならクリティカル・マスになりうる。

自由には二重性がある。私たちは「匿名意見の自由」を保障している。

1981年、当時CNN放送の会長だった、テッド・ターナーは
「インターネットはどんなメディアよりも新聞をまず『飲み込んでしまう』ようだ、
紙新聞は今後、10年以内に消滅するだろう」と語った。
しかし、2004年現在、紙新聞はまだなくなってはいない。
『シカゴ・サン・タイムズ』の副会長マーク・ホーノンは
「トイレがあるかぎり、『紙新聞』はなくならないだろう」と言った。

創刊時、金大中大統領にインタビューを申請したが、
「スタートして間もないインターネット新聞の創刊記念インタビューを受け、
もしそのインターネット新聞が数ヶ月で廃刊してしまったら、大統領の負担になる」
とインタビューを断わられた。
「しかし、もし一年間生き残ったら創刊一周年の記念インタビューは
前向きに検討しよう」という返答をもらい、
一年後、金大中大統領はこの約束を守り、単独インタビューを受けた。

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