« タンジー | トップページ | 『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』 »

『オタク・イン・USA』

オタク・イン・USA 愛と誤解のAnime輸入史
『オタク・イン・USA 愛と誤解のAnime輸入史』
パトリック・マシアス・著
町山智浩・編・訳
太田出版

アメリカに生まれ、アメリカに育った著者が、
日本のアニメやマンガ、特撮がどんな風にアメリカに輸入され、
今のようなムーブメントになったかを語る。
著者はメキシコ系アメリカ人。
アメリカ社会で生きるために、彼の両親は彼にスペイン語を教えなかった。
祖先の伝統や文化と切り離された子供にとって、民話や神話の代わりになったのは
ディズニーアニメであり、『スター・ウォーズ』だった。
「それが僕の場合は日本のアニメや特撮だったんだ」と彼は言う。
「世界のオタクたちは、自分を取りまく環境、支配的な文化に不満があって、
そこからの脱出を日本製のファンタジーに求めたんだ」と。
「僕は今、中野ブロードウェイのカフェでこの原稿を書いている。
ずっとあこがれていた日本に住んでいるなんて夢みたいだ」

『ゴジラ』は原爆の死と破壊の記憶から生まれたが
今のアメリカ人の若者に当時の日本人の気持ちを理解するのは難しい。
『モスラ対ゴジラ』を輸入したヘンリー・G・サパスタインは、
「ゴジラを何かのややこしいメタファーじゃなくて、明快なヒーローにすべきだ」
と東宝に進言するが、安っぽいヒーローになったゴジラに幻滅したのも彼自身だった。
(サパスタインはハリウッド超大作『Godzilla』のコンサルタントを務め、
ニューヨークプレミアの1ヵ月後、死亡する。)

以下、アメリカの輸入史はかなりめちゃくちゃ。

『ウルトラマン』はアメリカでも著者をはじめ多くの子供の心をとらえ、
何度も再放送されたが、『ウルトラセブン』はつまらないギャグ満載で、
アイスラッガーによる戦闘シーンは暴力描写としてカットされた。
(だからアメリカでは決着がつく場面がない!)
『ガッチャマン』は『スター・ウォーズ』にあやかるため、
惑星を守る宇宙のヒーローに改変された。
(それでも白鳥ジュンのパンチラ・キックは残った。)
『宇宙戦艦ヤマト』は、“ヤマト”が日本の戦艦であるとマズイので
“アルゴ”という名前になり、巻き寿司はチョコレートケーキに、
酒を飲む場面はミネラルウォーターへと変更された。
『マジンガーZ』や『コン・バトラーV』はアニメは一切放送されなかったが、
オモチャは『ショーグン・ウォリアーズ』としてバカ売れした。
2007年には『トランスフォーマー』と『ボルトロン』の実写映画が公開される予定。
(『ボルトロン』は、『百獣王ゴライオン』と『機甲艦隊ダイラガーXV』を
編集してひとつにしたもの、だそうだが、どっちも知らないよー)
『マクロス』は、『サザンクロス』と『モスピーダ』とあわせて
むりやりひとつのシリーズにして、『ロボテック』として放映された。
(吹き替えだったにもかかわらず)日本版ビデオを見たコアなファンは
飯島真理のリン・ミンメイを愛した。
(その後、フィラデルフィアの「オタコン」に招待された飯島真理は
「私はミンメイじゃないし、中国人でもありません」と発言している。)

そんな改変とカットの時代をくぐりぬけ、アニメやマンガはアメリカに定着する。

95年に上陸した『セーラームーン』は「セクシーすぎる」と反発を受け、
放映が打ち切られたが、ファンからの投書が殺到し、
ケーブルテレビ局に放送が引き継がれた。
(『パワーパフガールズ』はアメリカ版『セーラームーンとして制作された)
『ガンダム』シリーズは、2000年になって『ガンダムW』が初めて放映され、
アメリカの女の子たちの心をとらえた(アメリカにも腐女子がいるのだ。)
小池一夫に影響を受けたフランク・ミラーは、『シン・シティ』を描き、
女忍者ミホ役にデヴォン青木をキャスティング。
(『ワイルド・スピードX2』のジョン・シングルトン監督も
デヴォン青木を「アニメ・ガールが本物になったみたいだ」と評する。)

アメリカのオタク少年が日本を冒険する『メガトーキョー』など
アメリカ人が描く“マンガ”も増え、少女マンガは一般の書店でも買える。
(『SHOJO BEAT』は、白泉社、小学館、集英社のマンガを集め、『NANA』、
『紅色HERO』、『赤ちゃんと僕』、『風光る』、『絶対彼氏。』という豪華連載。)
『メガトーキョー』の作者フレッド・ギャラガーは言う。
「人生の問題の解決方法は全部少女マンガに載っている」
(そんなことないけどね)

今の若いファンは自分がオタクであることを誇りに思っている。
日本ではオタクという言葉はネガティブな意味を持っているけど、
アメリカではポップ・カルチャーのひとつとして使われている。
一方、“萌え”はアメリカの場合、チャイルド・ポルノにつながってしまうので微妙。
アメリカのオタクたちはまだ二次元キャラより本物の異性の方がいい。
『電車男』の段階で『電波男』には達していないと。

おもしろかったので、あちこち引用メモしちゃいましたが、ざっとこんな内容。
基が連載コラムなので、広範な話題が語られてます。
日本アニメの改変が、文化比較にもなっていておもしろい。
(アニメじゃないけど、アメリカに輸入されたピンク・レディーが
司会者と水着姿でジャグジーに入る『ピンク・レディー・ショー』は
最悪のテレビ番組としてあっという間に打ち切りになったが、
6歳だった著者に忘れられない印象を残した話など最高。)

アメリカから見たということで、オタク文化論としても客観的で読みやすい。
やはり『メガトーキョー』の作者フレッド・ギャラガーの言葉。
「アメリカのオタクは日本のことをオタクのユートピアだと信じてる。
でも、アニメやマンガは日本人にとっても自国の文化についての
ファンタジーで、つまり現実とは違うんだ」

日本のアニメが世界に誇れることは私も認めるし、
それが世界でも認められていることも嬉しいと思うが、
日本政府が“クールジャパン”としてビジネスにしようとしてるのは
なんだかバカげていて、
「あんたたちにアニメやマンガが本当に理解できるの?」と思う。

著者も次のように書いてます。
「昔からのオタクたちは、誰よりもアニメが世間に認められることを願っていたが
望んでいたのは作品として評価されることであって、
ビジネスマンどもに食い物にされることではない。」

« タンジー | トップページ | 『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』 »

「書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/27590/3312647

この記事へのトラックバック一覧です: 『オタク・イン・USA』:

« タンジー | トップページ | 『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』 »