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『日本人はなぜ黒ブチ丸メガネなのか』

『日本人はなぜ黒ブチ丸メガネなのか』
友利昂介・著
ごま書房

黒ブチ丸メガネ、カメラを下げた日本人像から
フジヤマ、ゲイシャ、武士道、アニメ、
パールハーバーまで、アメリカの日本観を探る。

『ティファニーで朝食を』に登場するユニオシをはじめ、
アメリカの映画に登場する日本人はなぜそろいもそろって
黒ブチ丸メガネなのか?
著者の考察によると、これにはちゃんと理由があって、
まず、明治時代、近代化政策の中で、(目が悪くなくても)
メガネをかけることが一種のステータスだった風潮が日本にあり、
これが欧米諸国から見ると奇異に写り、風刺漫画に描かれた。
次に、1920年~1930年、黒ブチ丸メガネの“ロイド眼鏡”が日本で流行。
(ロイド眼鏡は、セルロイドとアメリカ人俳優ハロルド・ロイドのダブルミーニング)
東条英機など多くの軍人・政治家がこのロイド眼鏡をかけていた。
(A級戦犯28人のうち、9人が黒ブチ丸メガネだった)
戦時中、海外の目に写った日本人政治家が黒ブチ丸メガネであり、
反日感情をもって戯画化された日本人は
当然黒ブチ丸メガネ姿だった、というわけだ。

マルコ・ポールが黄金の国ジパングとして描く元になった
“黄金の宮殿”は中尊寺金色堂だったとか、
日本の住宅事情を揶揄する“ウサギ小屋”という単語は、
原文のフランス語では“cagi a lapins”という
都市型の集合住宅を指す俗語で侮蔑する意味はなかったとか、
(この言葉、もっと古い言葉かと思っていたら、1979年、
EC事務局がまとめた対日経済戦略報告書に登場したものだそうだ。)
ニンジャによる連続殺人事件を追うサスペンス
『ザ・ニンジャ』がアメリカ人によるニンジャ観の源流であり、
そこには戦時中の日本兵のイメージが投影されているとか、
(「日本人のやり方というのは軍国主義的だからね」、
「(戦時中の日本兵の顔には)知性と呼べるようなものはなく、
だがそこには狡猾さといったようなものがあった」などの台詞が出てくる)
など、興味深い話もいっぱい。

アメリカに輸入された日本のアニメからは
ことごとく暴力的な場面やお色気描写(パンチラ)がカットされているが、
(セーラムーンの入浴シーンは胸の谷間が露出しないように
わざわざ編集でお湯を増やしてある)
日本においてはファンタジーである戦闘シーンも、
「銃犯罪や殺人、麻薬、児童ポルノなどの犯罪が多いアメリカ社会では、
ファンタジーどころか、日常と隣り合わせの厳しい現実」であり、
そのために子供に見せることのできない描写とされた
という話は説得力がある。

また、人が海外の国について最も考えるのは戦時中であり、
「戦争のときほど、他国の情勢や国民の価値観を意識する時機はない」
そのため、戦時中は悪いイメージばかりが強調され、
戦争が終われば相手国に興味を失い、その悪いイメージだけが残る、
という説ももっとも。
だから日本人のイメージは、いつまでたってもパールハーバーで
何考えてるかわからなくて、狡猾なんですね。

という感じでいろいろおもしろかったんですが、
残念なのはその文体。
「「あ、そうか。ゲイシャも普通の人間だったんだ」…本を読み、
映画を観たアメリカ人はそう思ったに違いない。もっと早く気づけよ。」
「彼ならば、「日本のアニメが世界を席巻」という事実を
証明してくれるに違いない。頼むぞ宮さん!なれなれしいよ!」
といった感じであちこちに一人つっこみが入ってるのだが、
これが全然おもしろくないのだ。
私だけかもしれないが、むしろこういう文体って
バカにされてるような気がしてしまう。
戦争責任という微妙な話のときに
「真珠湾攻撃をあれだけ非難する以上は、
ちゃんとヒロシマ・ナガサキについての自らの過ちも
ちゃんと反省しているんだろうな? アメリカさんよ?」
とこられてしまうと、なんだか読むのが嫌になってしまう。
著者はこういうフランクな語り口が読みやすいと思って
やってるんだろうが、結果的に論旨が伝わりにくくマイナスである。

あと重箱の隅つつきのようだが、
『Mr.インクレディブル』に登場する日独ハーフのデザイナー
エドナ・モードも黒ブチ丸メガネであるとし、
「モデルは桂由実という説も」と書いているが、
これについてはブラッド・バード監督があちこちのインタビューで
「どこの国に行っても「エドナは○○○がモデルですか」って
その国の有名デザイナーの名前があがるんだけど、
エドナは誰がモデルでもないよ。みんなにそれを聞かれるんで
驚いているくらいだ」と明確に否定している。
これひとつとって、著者の手落ちを責めるのはバカげているが、
なんだかほかの部分の考察も大丈夫なのかという気がしてしまう。

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