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『Tira mi su だから私はがんばれる!』

Tira mi su―だから私はがんばれる!
『Tira mi su だから私はがんばれる!』
荒川静香・著
角川書店

荒川静香のエッセイ。
といっても、公式サイトに書いていた日記に、ファンのメール、
「今だからいえるエピソード」を追加した程度で
最初に手にとったときに感じたのは「ずいぶんお手軽な作りだなー」
ということでした。1時間もあれば読み終わる。

それでも、さすがに金メダルを取った(それだけの努力をした)
荒川静香本人の言葉なので、ところどころに光るものがある。
ファンのメールも最初はこんなの不要ではと思ったけど、
オリンピックのフリーの演技を、実況中継的にメールでつづる
というのはおもしろかった。
文字で普通に読んでもフィギュアの演技はわかりにくいけど、
ファンの生の声はそのときの感動をちゃんと伝えてくれる。

オリンピックもすごかったけど、
去年の全日本選手権は本当にすごかった。
村主章枝、荒川静香とも「絶対オリンピックに行く」という気迫が
テレビのブラウン管を通してもビシバシ伝わったきた。
4位になった恩田美栄も良かった。
あの時点で、彼女のオリンピック出場はすでに難しかったはずで、
だからこそ、自分の最高の演技を全日本でしたのだと思う。
オリンピック出場は総合点で決定されたが、
荒川と4位の中野友加里のポイント差はわずか17点。
全日本での恩田美栄の活躍がなかったら、
順位点で中野友加里が上回ることもあったのでは。

去年のグランプリファイナルからオリンピックまで
荒川の試合を見ていないと、このエッセイの背景がわかりにくい。
試合結果は載っているものの、そのときの荒川の演技まで覚えていないと。
また、NHKが彼女の新採点システムへの取り組みを特集していたけど、
(オリンピック前に放送され、オリンピック後は何度も再放送していた)
それも見ていないと、わかりにくい。
そういう意味ではフィギュアファン限定の本でありながら、
荒川ファンにはもの足りない内容なのでは、と思う。

◆読書メモ

「何が自分に足りなかったのか? 彼女(浅田真央)が目をひくのはどうしてなのか?
それは、新鮮さだったとわかりました。
結果にこだわらず、スケートが楽しいという気持ちで純粋に滑ること。
今の自分に足りなかったのはそこだ、と。
守りに入ったプログラムでは、結局は守った以下の点数しか得られず、
守るのではなく、どんどん攻めて戦う。気持ちを全面に出して戦う。
それが大切なんだと、そういう気持ちを彼女から学びました。」

(全日本選手権でホテルから試合会場に移動)
「カップルだらけの中に、
ひとりすごい派手なメイクでジャージ姿の私、完全に浮いてましたね~。
クリスマスの最中に、イベントでにぎわっている都会での大会は、
選手の精神衛生的に良くないと思います。」

(フリーの曲を直前に『トゥーランドット』に変更)
「プログラムを変えずに音楽をプログラムに合わせた。
プログラムを撮影したビデオをコンピューターに取り込み、
そのプログラムに合わせて音楽をコンピューターで処理し、
回転数などをうまく合わせながら、私が滑っている映像に(音楽を)当てはめました。」

オリンピック期間中は選手がコメントを出すことができないため、
期間中の日記は後日、WEBサイト上に公開したもの。
(これちょっと不思議。選挙中の政治家でもないのに、
なぜこんなシステム?)

「試合の前は誰かしら捕まえて、たわいもない話をしたりして。
傍から見たら、試合前に集中してないように見えていたと思うのですが、
緊張しないように、わざとそうしていたのです。
私の場合、集中力は試合のためだけに使うほうがいい。
あまり事前に集中し始めると、肝心の試合のときに集中力が切れてしまうのです。
私は、集中力があまり長く持続するほうではありませんから。」

「全日本での失敗は、それまでの私によくあったケースで、私の弱点でした。
自分の弱点を見つけるのも、認めるのも簡単ではありません。
その弱点を受け入れることができ、
だから、オリンピックで気をつけようと、
直前の全日本ではっきりと認識できて良かったと思います。」

「あのラストステップ。ホンの10秒あるかないかの短い間でしたが、
これは私にとって、まるでスローモーションのように感じられました。
いろいろなことがよみがえりました。楽しくて、そして、嬉しかった。
そんな風に気持ちが充実してたので、
メダルは、そのときはもうどうでもよかった。」

You Rise Me Up
「Rise Me Up」はイタリア語で「Tira mi su」

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