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『NHKにようこそ!』

NHKにようこそ!
『NHKにようこそ!』
滝本竜彦/著
角川書店

NHKとは日本放送協会のことではなく、日本ひきこもり協会のこと。
大学を中退し、4年間ひきこもっている青年が、
自分がひきこもりなのは悪の組織NHKのせいだと妄想する青春小説。

『ローゼンメイデン』、菜摘ひかるの次が『NHKにようこそ!』だなんて、
だんだんドロップアウトしてるような気がしますが、
このセレクトは私の趣味というより大人の事情なのでご心配なく。

著者の滝本竜彦氏は『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』でデビュー、
ひきこもり代表みたいに言われてる人だけど、前に雑誌の対談で見た写真では、
ずいぶん綺麗な女の子みたいな顔をした人だなという印象がある。
『NHKにようこそ!』は原作以上にコミック版の人気が高いらしく、
『涼宮ハルヒの憂鬱』の後番組としてアニメ化されて現在放映中。

本書も実際にひきこもり体験がないと書けないような痛い内容が盛りだくさん。
ブラック・ユーモアとして笑いとばすにはあまりに痛い。
前半は痛くて、ドラッグに走る後半は辛い。
そのため軽い小説なのに読むのにまる一日かかってしまった。
ひきこもるというのは外の世界から逃げて、
安心できる家の中にとどまっていることだと思っていたけど、
本書を読む限り、外に出て行けないことをひきこもっている本人が
一番苦痛に感じているのだ。

ひきこもり青年が不思議な美少女と出会って、一歩を踏み出す
というストーリーは予定調和だが、季節の移り変わりの風景描写とか
ぐるぐる回る思考とか、ところどころに確かな文才が感じられる。
ひきこもったことはなくとも、未来が見えない不安とか、
モラトリアムな青春を送った経験なら誰にでもあるはず。
それがきちんと小説の形に昇華されていてうまい。

◆読書メモ

エロゲーの別名は『美少女ゲーム』である。
美女ゲームではなく、美少女ゲーム。
……そのあたりに、何か深い病巣が隠れているようではある。

「あたしたちは何も悪くないのに、ずいぶんとむやみにいろいろ辛いことが
身のまわりに起こる。それはなぜかというと、巨大な組織があたしたちに
悪い陰謀をしかけているからで」

「人間の一生って、苦しいことと楽しいことの割合は、きっと九対一ぐらいなんです。」
「わざとこんなに辛い世の中を作った神様は、きっとすごい意地悪なヤツなんです。」
「そんな悪い神様がいるんなら、逆にあたしたちは健やかに生きていけるよ。
神様に不幸の責任を押しつけられれば、逆にその分あたしたちは
すっかり安心できるでしょ?」

悪い組織と戦いたい。もしも戦争などが勃発したならば、
俺たちは速攻で自衛隊などに入り、神風特攻していただろう。
きっとそれは、意味のある生き様で、格好いい死に様である。
もしもこの世に悪者がいてくれたのならば、俺たちは戦った。
拳を振り上げて戦った。そうに違いない。
しかし悪者はどこにもいない。世の中はいろいろと複雑で、
目に見えるような悪者など、存在しない。それが辛く、そして苦しい。

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