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『性犯罪の心理』

性犯罪の心理
『性犯罪の心理 あなたは性犯罪の実態をどこまで知っているのか?』
作田明・著
河出書房新社

痴漢、のぞきなど軽い(!)ものから、小児性愛、強姦、ストーカーまで
性犯罪の実体について心理的側面から考察した本。

女性なら誰でも性的な犯罪について恐怖心を持っていると思う。
たとえば、通りすがりに胸を触られる程度の(!)痴漢だとしても、
相手にとっては女性であれば誰でもいいわけで、
(もっと言っちゃえばプッシーであれば人間じゃなくてもいいのではとすら思う)
被害自体は対したことがなくても(!)、
自分の全人格を否定されたようなひどく嫌な気分になる。
これが強姦であればなおさらで、女性ならその痛みを理解できるはずだ。

しかしながら、世間は性犯罪に対してワイドショー的に騒ぐくせに、
その実体は(被害者に対する配慮もあるのだろうが)まったくはっきりしない。
「わいせつな行為」って何だよ、いったい。
また、逆に具体的に事件が説明されるときは
報道の体裁をとっていてもそこには絶対に興味本位な視点がある。

著者は「性犯罪を実行する人々を理解する作業がなければ、
犯罪者の矯正・更正を含め犯罪の予防や再犯防止についての計画も立てられない」
とし、性犯罪について真摯に考えたいと本書の目的を語っているが、
残念ながら、内容はずいぶん中途半端な印象だ。
実際の事件ケースと犯罪者の心理面解説というパターンが多いのだが、
阿部定や大久保清事件となると、なんとなく「昭和異常事件簿」みたいになってしまう。
かといって、最近起きた具体的な犯罪となると、どうしてもワイドショー的。
犯人や被害者の名前は変えてあるものの、ストーカー犯罪の例は
沼津の女子高生ストーカー殺人だと容易にわかるので、
それまでの犯罪暦やストーカーにいたるまでの交際の過程などは読んでいて辛い。
心理面の分析においても「彼の精神状態は、
パーソナリティ障害に解離性障害が加わったものである」って言われても。
ストーカー犯罪の対策について、
「いちばん大切なことは早くから相手の性格を見抜き、
危険な行為に走りそうになる人とは極力接触を避けることではないだろうか」
ってのはどうなんですか。

性犯罪について研究も対策もまったく不十分なんだなーということが
著者の文章からもうかがえて不安になる。
それでも、著者がまじめに本書を記したことは理解できるので、
今後の展望に期待したい。

◆読書メモ

「最大の問題は、強姦とは、ほとんどの場合、顔見知りの男性が平然と犯す、
女性の性的権利に対する侵犯なのである。
強姦とは、性的攻撃というよりは他人の権利の暴力的な侵害なのである。」

「メーガン法に代表される性犯罪前歴者の徹底的な監視と抑圧は、
皮肉なことに性犯罪を減少させるよりはむしろ増加させることにもなりかねない。」

「人々は一方では犯罪が激増しているので厳罰化を望むと叫びながら、
実際には犯罪者は一層少数派に陥っていることを知っていて
彼らを排除しようと躍起になっている。

 私は時々テレビ番組で犯罪についてコメントすることがあるが、
同席しているアナウンサーやコメンテーター、
あるいは番組の裏方であるディレクターの人たちが、
犯罪者は宇宙人のような異人種と考えているという実状を発見して
息がつまるような気持ちにとらわれたことが一度や二度ではなかった。

 私は基本的に人間は誰でも犯罪を犯しうる存在であると考えており、
こうした昭和二〇~三〇年代にはごくふつうの考え方であった思潮が
現代日本ではきれいさっぱりと消滅してしまい、大多数の国民が、一致して、
実際にはあり得ない、無機的・人工的な無犯罪社会を目指そう
としている姿に接して寒々とした思いを抱いているものである。」

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