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『ウェブ恋愛』

ウェブ恋愛
渋井哲也・著
筑摩書房

“ウェブ恋愛”というと出会い系ばかりがクローズアップされがちだが、
インスタント・メッセンジャーによるチャットから恋が生まれたり、
趣味系サイトに感想メールを送ったことで始まる恋もある。
一方で、自分のブログに恋愛を書き綴る人々や、
メル友という手段で“本当の恋”を探し続ける依存症的な人々もいる。
実体験を取材し、ウェブ恋愛を考察した本。

この本の体験談が示しているように、
ウェブ恋愛といっても、ネットがきっかけになっているだけで、
普通の恋愛と大きく変わることはない。
趣味系サイトのように、共通の話題がベースにあったり、
メールによって相手のイメージが作られていると、
実際に会ったあとで恋に発展しやすい、ということはあるかもしれないし、
恋人募集のメル友の場合、合コンと同じく恋愛が目的で相手を探してるわけだから、
気が合えば交際を始めるのも早い、ということもあるかもしれない。
一方で、実際に本人に会わないうちに
メールやチャットで好きになって、つきあい始めたり、
遠距離恋愛になるケースも多いので、ネットでつながっていれば
まったく会わなくてもいい、という人もいるらしい。

「メッセンジャーやメール、電話でいつでもつながっている。
また、メッセンジャーや電話でエッチな会話をする。
それで性欲まで満たすことができるのなら、
好きな相手が目の前にいる必要は、もはやない。
ウェブ恋愛は、肉体的な接触がなくても成り立つということだ。」

正直、実際に会わないで恋に落ちるという感覚は私にはよくわからない。
そもそも、そんなにみんな誰かと出会って恋に落ちなければいけないものですか?
また、自分の恋愛話をブログにあからさまに書く人の気持ちも私にはよくわからないが、
それについては以下のように説明されている。

「日記の内容はその日に体験した出来事でひき起こされた
自分自身の感情を記述することが多い。
この場合、日記を書くことでその感情体験はいっそう強められる。
楽しい恋愛体験の真直中にいる人が日記をつけると恋心はいっそう高まり、
悲嘆にくれている人が日記を書くと、
少なくとも一時的には悲しみがいっそう増すのである。」

ただ、恋愛体験をウェブ上につづる例として、
『電車男』や『59番目のプロポーズ』があげられているが、
ここらへんを一緒くたに語るのはちょっと無理がある。
著者自身、ウェブ恋愛の体験者らしいが、
ウェブ恋愛自体がめずらしくもなくなった今、それぞれの体験談から
何か結論を引き出すのは難しい。
インターネットで“本当の愛”を見つけることは可能か、という疑問から
この本が始まったのだとすると、そもそも“本当の愛”とは何かという話になる。
後半はスタンダールや三島由紀夫の恋愛論まで引用されているが、
全体的に何が言いたかったのかよくわからない本になってしまっている。

◆読書メモ

人間の恋愛は、動物の恋愛と違って、そういうふうに
心とからだが分裂しているところにできてくるのだろうと思います。
人間には心があるから、心で証拠を求めようとしても、からだで求められない。
からだで求めようとしても、心で求められない。
こういう人間独特の分裂状態から、恋愛が生まれてくる。
(三島由紀夫『新恋愛講座』)

押見輝男『自己との対話-日記における自己フォーカスの効果』は、
パソコン通信を含めた日記について「書き手の自己フォーカスを刺激する」としている。
書くという行為によって自己対話する、つまり自分を見つめ直すのだ。
自己フォーカス(人が自分の注意を自分自身の方に強く向けること、
換言すると、自分を対象としてみること、自分を自ら注目すること)
が高まった自覚状態では、往々にして、自分の状態が自ら望ましい、
正しいと考える規準には達していないことが多いため評価はマイナスとなり、
この不快さを弱めるために、人は自己への注意を高める状況から逃げようとするか、
あるいは自己評価がマイナスにならないように
自分の状態を正しいとみなす規準に一致させようと試みるという。

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