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『風俗嬢菜摘ひかるの性的冒険』

風俗嬢菜摘ひかるの性的冒険
『風俗嬢菜摘ひかるの性的冒険』
菜摘ひかる/著
光文社

高校三年生のときに家を出て年上の女性と同棲し、
彼女の恋人である中年の編集者と「やっちゃって」みて
売春で小遣いを稼ぎ、キャバクラ、ヘルス、SMクラブ、
イメクラ、ソープと風俗を渡り歩いた菜摘ひかるの体験記。

今さら菜摘ひかる?って感じだろうが、
私は最近になるまで菜摘ひかるの名前すら知らなかったし、
ましてや数年前に亡くなったことも知らなかった。

菜摘ひかるは1973年生まれだから、コギャルブームより少し前の世代だが、
性を売ることを躊躇しない。むしろ、性を売ってお金を稼ぐことで
自分の存在意義を見出している。
彼女がどんなに仕事が好きで、楽しいと書こうとも、
その文章にはどこか痛々しさがにじむ。
(ネットの感想に「(自分の文章に)酔っちゃってる」
というのがあったけど、それもあると思う。)
彼女が29歳で亡くなったとき自殺説も流れたというが、
生き急いでいるような刹那的な感じがこのデビュー作からも感じられる。

◆読書メモ

「私の偽名の愛称を一生懸命呼びながらひとりで腰を振り勝手に果ててゆく
男たちの姿は、私を世の中の役に立っている気分にさせたのだ。
自分の行為に罪悪感はまるでなかった。
それどころか相手のつまらない話につきあって笑ってあげて、
なにかを買ってくれたがる人には喜んで買ってもらってあげて、
そしてセックスで気持ちよく射精させてあげたら、
当然報酬を受け取る権利を主張するべきだと私は思っていた。」

「私はあの品のないネオンの海と騒音の渦が好きだ。
そこに生息する女たちが好きだ。あそこにいるとひどく落ち着く。
だから私は、ある時間を過ぎるとどこからともなくやってきて、
身体じゅうにまとわりついた夜の匂いを引きずりながら
いつも決まった顔で靖国通りを渡り、区役所通りを奥に進む、
彼らと同じ流れの中にいたかった。
歌舞伎町の空気を構成する一員になりたかった。」

「気がつくと、騒音の中で本名以外で誰かに名前を呼ばれている、
それが自分がいちばん好きな自分の姿だった。」

「私のようなやる気のない女は、男の客相手に媚を売る商売をしてはじめて、
やっとそこそこくらいに相手にしてもらえる。仕事という大義名分のある、
こういうところでだけ私は恥も外聞もなく吹っ切れることができるのだ。
思いきりよく甘え上手の素直で愛嬌のある女になれて、
そしてたとえ嘘でもお世辞でも、みんなにきれいとか可愛いとか言ってもらえるのだ。」

「飲み屋でもどこでもそうだが、股間が膨らんでいるときの男の言うことは
みんなでたらめだ。彼らは気持ちよく射精するためならどんなことだって口にする。
そんなのは百も承知なはずなのに、耳もとで愛してるとか君がいちばんとか言われたら
やはり悪い気はしない。それに言ってもらえたらもらえたぶんだけ
ほんとうにいい女になれるような気もした。」

「自分を一個人ではなくただの性器として扱ってもらうことに
喜びを感じる私は、おかしいのだろうか。」

「ただ女であるというだけでできるものではない。だからこそ
彼らの期待に反しない限り、私は彼らに必要とされている。
そう感じた瞬間、私は心から安堵し満ち足りた気分になれるのだ。
いまはまだ、この仕事から離れることなんかできないと思ってしまうのだ。」

「うっとりと男の髪を梳き瞼を閉じたら、一瞬この男に愛されているような、
そんな馬鹿げた錯覚さえ感じた。」

「自己満足と言われてもいい。私は自分自身に手間をかけるのが好きだ。
かける金額の問題ではなく、それができない女は、
女を保つ余裕がないように私には思える。」

「「奈々ちゃんは会社の女の子よりずっと純粋な感じがする」
と言ってくれる客がいたが、当然のことだ。金をもらっているのだから。」

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