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『ベビー・ビジネス』

ベビー・ビジネス 生命を売買する新市場の実態
『ベビー・ビジネス 生命を売買する新市場の実態』
デボラ・L・スパー・著
ランダムハウス講談社

人工授精(AI)、体外受精(IVF)にはじまり、
代理出産、養子縁組、着床前遺伝子診断(PGD)、クローン作成まで
ベビー・ビジネスの実態を追う。

倫理的な抵抗が根強くある一方、自分の子どもを得るためなら
どんな大金を払ってもかまわない人々がおり、それに答える技術も進歩している。
需要と供給のバランスで、ベビー・ビジネスが成立しているのに、
法律や制度は一向に追いつかない。
子どもが売買されている現実を直視し、制度を整えるべきだと著者は訴える。

女に生まれたからには子どもを産んでみたいと思ったこともあったけど、
今は子どもを産むのも育てるのも大変そうだからいいやと思ってるので、
どんな苦労をしても子どもが欲しいという気持ちはよくわからないのだが、
実際、そう考える人たちの想いはかなり深刻なんだろう。

「女性の妊娠のしやすさは27歳前後でピークを迎え、
その後、36歳以降に劇的に下降する。
平均的な28歳の女性は、妊娠に至る可能性が72パーセントある。
それに対して、平均的な38歳の女性の場合、
わずか24パーセントの可能性しかない。」

「不妊の女性は、がん、HIV、心臓疾患などによって
引き起こされるものと同じように、異常に高いレベルのうつ状態に陥る。」

「ある不妊患者はこう語る。
『生物学的に子どもを持つことができる能力を奪われるというのは、
死に直面しなければならないようなもの--
ほとんど自分の半分が死んでしまうようなものです……
なぜなら、子どもを持つことは、人間は必ず死ぬという事実を
人が受け入れていくために、何より大切な方法だからです』」

クローン作成は一時期クローズアップされた話題だったが、
現在、そのほとんどが頓挫しているらしい。
是非はともかく、ミッシー・プリシティはニュースを追っていたこともあったので、
ビジネスとして成り立たないまま終了しているらしいのは残念だ。

「1996年、クローン羊ドリー誕生。
2002年、ロズリン研究所の科学者たちが悲しげに報告したところによると、
ドリーは年齢不相応に老化していて、
通常もっとずっと年老いたヒツジがかかる急性関節炎にかかっていた。
2003年2月14日、わずか生後6年半で、
ドリーを創造したチームは不本意ながら彼女を安楽死させた。」

「1997年にミッシーという名のイヌのクローンを作るためのプロジェクト
『ミッシープリシティ』プロジェクトが始まった。
2002年、プロジェクトの一環として、ネコのCC(カーボンコピー)が登場。
ベンチャー企業GSC(ジェネティック・セービングズ・アンド・クローン)には
依頼が殺到、2004年までに5万ドルの企画(クローン作成、過程を撮影したビデオ、
カリフォルニアまでの旅費をパッケージにしたもの)は8人の顧客を確保した。
(2006年10月、GSCは不採算を理由に同年末で廃業することを発表した。)」

「1998年、クローン作成の態勢が整ったことを発表したリチャード・シードは
一躍有名になったが、物議をかもした以外は対した成果を上げないうちに引退した。
2002年、カルト教団ラエリアンは、
母親の皮膚細胞から作られたとされる赤ん坊イブの誕生を主張した。」

代理母ビジネスにまつわる人種格差、胚性肝細胞(ES細胞)は生命か否か、
病気の子どものためのドナーとして、次の子どもが欲しいという親に
遺伝子診断を認めるべきか、加熱する精子バンク、卵子提供などなど
ベビー・ビジネスをめぐるいろんな問題が書かれていて興味深い。

レインボー・キッズのサイトでは養子縁組を求める子どもたちの写真やビデオが
ずらっと並んでいて、まさに人身売買という気分になる。
(著者はすでに息子が二人いるが、女の子をひとり養子縁組している。)

翻訳が読みにくく、同じ話がくりかえし出てきてだらだら長いのは難点。
それでも日本ではなじみのない話(西欧の不妊の歴史、母親代行業としての
乳母の話、アメリカにおける養子縁組の歴史)はカットされているとか。
ベビー・ビジネスの現状を知る上ではおもしろい一冊。

「ある不妊の女性が言ったように、
『万人にとって正しいことでないのはわかっているけれど……
ある人にとって自分の子どもを持つ唯一の方法がこれだとしたら、
そしてその人が一か八かやってみたいと思うなら、その機会を奪うべきではない』」

◆読書メモ

中にはもっと極端なバンクもあり、子どもが18歳になったら
連絡をとることを承知した男性をドナーとすることによって、差別化を図っている。
レインボー・フラッグ・ヘルス・サービスは、透明性を徹底するため、顧客に約束する。
「あなたの子どもは隠しごとなく成長します。『父親』が行方不明のババリア王や
チャールズ・マンソンかもしれないと空想することもありません」

1999年には、アイビーリーグの大学新聞に掲載された小さな広告が、
非常に限定された卵子に対して支払うと謳った5万ドルという額で、
人々を驚かせた。求められたのは身長178センチメートル以上、
SAT(大学進学適性試験)得点1400点以上、家系に医学的問題がないことだった。

悪名高いベビーMのケースでも、ニュージャージ州の最高裁判所は、
最終的には「人が(つまり代理母が)親権を放棄するという契約同意事項は
……当裁判所では強制力を持たない
……文明社会では、金銭で買えないものもある」と判決した。

新しい代理母の多くは、生殖補助技術によって
白人の子どもを身ごもることが可能になった、有色人種の女性だった。
2000年には、アメリカの最も大きなプログラムにおける
ホスト型代理出産の30パーセントが、代理母と夫婦の人種が異なるものだった。

このような不平等は赤ん坊ビジネスのほとんどすべての面に見られることは
認めざるをえない。複数回のハイテクの不妊治療を受ける財力があるのは、
あるいはグアテマラ人の子どもを養子にするために
2万5000ドルの費用を支払えるのは、裕福で高度な教育を受けたカップルだ。

出生前検査への次の段階は、超音波の出現とともに始まった。
最初は第一次大戦中に潜水艦の探査のために使われた技術である。
「海中の潜水艦と子宮内の胎児にはたいした違いがない」

2005年の2月、シカゴのあるカップルが、5年前に凍結した胚を廃棄したかどで、
地元のクリニックを訴えた。クリニックは誤って財産を破壊してしまったと主張したが、
それに対して原告はクリニックが自分たちの子どもを殺したと申し立てた。

大富豪のカップルがオーストラリアのクリニックで受精して複数の胚を得たが、
その後二人は、胚の移植以前に飛行機事故で亡くなった。
カップルが遺したかなりの財産を相続する資格を得ることを期待して、
その胚を宿したいと申し込んだ女性が何人かいた。

IVFやICSIで生まれる子どもたちの35パーセントが多胎児だ。
また無視できない割合の子どもたちが未熟児や低体重児として生まれる。

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