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『グエムル-漢江の怪物-』

グエムル-漢江の怪物- スタンダード・エディション
『グエムル-漢江の怪物-』

なんともめちゃくちゃな映画である。
正体不明の怪物にさらわれた娘を助けるために父親が立ち上がる
というストーリーを映画にするとき、
ハリウッド映画ならていねいに状況設定を作りこむだろう。
なぜ怪物が誕生したのか、なぜ娘だけ生き残ったのか、
なぜ家族全員が娘のために命をかけるのか、
孤立無援の中で怪獣に立ち向かわなければいけないのか。
ハリウッド映画の設定が90点くらいだとすると、
日本映画はがんばって70点~60点くらいのぬるーい設定で描く。
しかし、この映画はそんな説明など必要としない。
ソン・ガンホが娘の名前を叫ぶだけでOKであり、
葬儀の場面で家族全員がのた打ち回って泣けば十分なのだ。
(葬儀の場面が「笑える」ということがすごい。
この場面のペ・ドゥナの存在感もすばらしい。)

怪獣映画の形をとりながら、
反米反政府へのメッセージをこめたエンターテイメントであり、
家族再生の物語として見えなくもない。
韓国では歴代観客動員数をぬりかえる大ヒットを記録しながら、
日本ではたいしたヒットにならなかったのは、
多くの観客がこのめちゃくちゃさをおもしろいと感じるより
よくわからなかったのではないかと思う。
(一家は果敢に怪獣に立ち向かっていくわりに、政府からは逃げる。
家族が戦う相手はグエムルではないのだ。
娘の探し方もどうみても賢いとは思えないむちゃくちゃな戦法。
韓国では政府に対するデモが日常的に行なわれてるのかもしれないが、
怒りの矛先が見えにくい。
ウィルス説はもっとうまく話にからめてもよかっただろう。)

しかし、このめちゃくちゃな映画にはめちゃくちゃなりのパワーやすごさがあり、
日本映画が学ぶべき点は多い。


グエムルが『WXIII 機動警察パトレイバー』をパクったという説に関しては、
両方を見ていればまったく違う映画だということはわかるはず。
『WXIII』は優れたアニメだが、『グエムル』を見て
「廃棄物13号だ!」と思うのは、相当ひねたマニアだ。
グエムルのデザインはそれほど奇抜なものではなく、
薬物によって奇形になった水生動物だとすれば納得がいく。
(100歩とは言わず)50歩くらい譲って、グエムルが廃棄物13号のパクりだとして
『マトリックス』が『攻殻機動隊』をパクっても「ジャパニメーションが影響を与えた」
と賛美されるのに、なぜ韓国だと非難されるんだ。
(ちなみにグエムルの視覚効果はオーファネージ、
模型制作はWETAワークショップ、クリーチャー・アニマトリクス構成は
ジョン・コックス・クリーチャー・ワークショップ。)
『グエムル』を韓国のパクり映画だと敬遠するのは非常に残念な話で、
私としては、『WXIII』も『グエムル』も一見の価値がある作品なので、
どうせなら両方見てほしいと思う。

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