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『スティーブ・ジョブズ神の交渉術』

スティーブ・ジョブズ神の交渉術―独裁者、裏切り者、傍若無人…と言われ、なぜ全米最強CEOになれたのか
『スティーブ・ジョブズ神の交渉術』
竹内一正・著
経済界

iPodを成功させ、ピクサーを売却しディズニーの取締役となった
スティーブ・ジョブズ。彼の成功の裏には、
傍若無人で傲慢ともいえる彼独自の経営術、交渉術があったとする本。

客観的な視点は期待できないので、読んでる側からすると、
ジョブズの悪口だらけ、という印象。
実際、ジョブズはかなり難しい人物らしい。
著者はアップルで働いていたことがあり、
ジョブズは、非常に魅力的だが、一緒に仕事をするのは大変な上司だったようだ。
しかし、ほとんどの話が噂話や有名なエピソード、著者が社内で聞いた話なので、
どこまで真実なのかはよくわからない。
ディズニーとの交渉にしても、実際にどのような話し合いが行なわれたのか、
まったく書かれていない。それで“交渉術”って言われてもね。
一応、ビジネスに役立つ指南書みたいな体裁をとっているのだが、
ジョブズの真似なんて誰にもできないし。

彼のプレゼンテーションのうまさは有名で、
毎年、Macworld Expoのジョブズの講演のあとでは、
のせられた聴衆がアップルストアに新製品を買いに走る。
(今年はiPhoneでしたね。)
ビジネス的にはそこらへんをもっと分析してほしかったところ。

それでも、ここで描かれているジョブズのめちゃくちゃな性格や仕事のやり方、
アップルを創業し、成功させたとたんに会社から追い出され、
ネクストの事業に失敗し、彼をアップルに迎え入れてくれた経営者を追い落とし、
iMacやiPodで成功する、という浮き沈みの激しいジョブズの半生はおもしろいし、
非常に魅力的なピカレスクである。

◆読書メモ

個人的にはピクサーをめぐる話がいちばん興味深い。
ルーカスがCG部門を売ったのは、妻と離婚し、慰謝料が必要だったから、とか。
ルーカスがコンピュータ部門を売りたいらしいとジョブズに教えたのはアラン・ケイ。
買い手候補だったディズニーのジェフリー・カッツェンバーグはこれを断わり、
もうひとりの候補ロス・ペローは、契約当日、GMから放逐され、契約は白紙になる。
これを待っていたジョブズが3000万ドルを1000万ドルに値切りピクサーを買収。

ジェフリー・カッツェンバーグはジョン・ラセターをディズニーに戻ってほしいと誘うが
「ディズニーでも映画はつくれる。でもピクサーなら歴史がつくれる」と断わっている。

1988年、経営が低迷するピクサーの人員削減を発表。
「われわれはこれをやらなきゃいけないんですが」と営業担当副社長が
シーグラフで発表する短編アニメ制作の説明をすると、絵コンテを見たジョブズは
数十万ドルの出費を認める。この結果制作されたのが『ティン・トイ』だった。

1989年、ピクサーのコンピュータ部門を売却。
1995年、『トイ・ストーリー』の大ヒットとともに、ピクサーは株式公開を果たす。
2006年、ジョブズが1000万ドルで買ったピクサーを、ディズニーは74億ドルで買収。
ジョブズはディズニーの筆頭株主になり、取締役に就任する。

創業メンバー、アルビー・レイ・スミスは、ある会議でジョブズに反論したため、
ピクサーを離れ、社史からも名前を抹消される。


「『ミスター・インクレディブル』をディズニーなしで制作」と本文にはあるが、
『トイ・ストーリー』から『カーズ』まではディズニーと契約中だったはずで、
『ミスター・インクレディブル』もディズニー傘下で作られていると思う。
当時、ピクサーとディズニーの契約は散々もめていて、
私が心配していたのは『トイ・ストーリー3』の行方だったのだが、
(『トイ・ストーリー』はディズニーに版権があるため、
ピクサー以外のスタッフで続編制作が進められていた)
ピクサーとディズニーの買収が成立したので、
続編は無事、ピクサーの手で作られることになったようだ。

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