« 『グエムル-漢江の怪物-』 | トップページ | 谷川真理ハーフマラソン »

『超人類へ!』

超人類へ!  バイオとサイボーグ技術がひらく衝撃の近未来社会
『超人類へ! バイオとサイボーグ技術がひらく衝撃の近未来社会』
ラメズ・ナム・著
西尾香苗・訳
インターシフト

遺伝子に異常がある子供を救うための遺伝子治療に始まり、
遺伝子を操作することによって運動能力をアップしたり、
IQの高い子供を選択したり、若さを保ったまま寿命を延ばすなど、
現在の科学技術から未来の人間像を描く。

たとえば、注意力に問題がある人の治療薬であるリタリンを
通常の人が服用すれば集中力や記憶力が向上するという。
また、睡眠障害の治療薬であるモダフィニルを
正常な人が服用すると4、5日間続けて起きていられるそうだ。
これらの研究が進むと、「頭の良くなる薬」が簡単に利用できる
ようになると著者はいう。

しかし、それはいいことなのだろうか?
誰だって病気の子供を救いたい。それと、アインシュタイン並の
IQをもった子供を授かりたいという考えはまったく別。
著者は「遺伝子を操作して能力を増強したからといって、
自分のアイデンティティが変わるわけではない、
ドラッグやアルコール、映画や本の影響、経験によって、
私たちはいつでも変化している。神経工学による選択もそれと同じ」
というのだが、遺伝子を選ぶのと映画を選ぶのが同じわけがない。
だいたい遺伝子操作によって誰もが能力増強できるなら、
オリンピックも漢字検定もその意味を失うだろう。

この本のいちばん驚異的なところは第9章「接続された脳」だ。
たとえば、首から下が麻痺してしまい、意識ははっきりしているのに、
体を動かすことも、言葉も話すこともできない患者の脳に
電極を埋め込むと、彼はコンピューター画面のカーソルを動かして
文字を伝えることができるようになった。
目の見えない患者の視覚野に電極を埋め込み、
カメラの映像をコンピューターを通して患者の脳に伝えると、
患者は目が見えるわけではないが、障害物をよけることは可能になった。
ここまでは現在の時点で、実際に行なわれている例だ。
この研究が進んで、人間の脳とコンピューターが接続された場合、
目に見えるのは実際のカメラ映像ではなくてもいいはずで、
遠く離れた場所の映像を送ったり、テレビゲーム画面だったり、
透視機能やズーム機能があってもいいわけだ。
また、コンピューターがネットに接続していれば、
脳-コンピューター-ネットを通して、情報を引き出したり、
他のユーザーと会話したり、完璧な記憶を保存することができるようになる。
(他のユーザーに自分の記憶を体験させることだってできる!)
『攻殻機動隊』みたいな未来はSFではないのだ。

著者はIEやOutlookの開発者のひとりだそうで、
だからというわけでもないだろうが、こうした未来を手放しで歓迎している。
私は自分の脳をネットに接続するより、ゴーストのほうが大事だわ
とか思っちゃうけど(今でも十分ネットに侵食されてる?)、
そこはこの本の解説に引用されているビル・マッキンベンの言葉が語っている。
「本書で語られることに対して、私はまったく賛成できないが、
とはいえ、かなり説得力のある本に違いない」

◆読書メモ

長時間の集中を要求される爆撃機パイロットは、出撃時には覚醒剤、
休息時には睡眠薬という服用サイクルでミッションをこなすという。
しかし、これらの薬剤には副作用があり、また数日間連続する戦闘に
用いるわけにはいかない。そこで、DARPA(米国防総省国防高等研究計画局)は、
最新科学の成果を取り入れて、1週間24時間ぶっ通しで
兵士に任務を遂行させられる手段を開発しようと試みている。
また、5日間食糧なしで戦える方法なども研究している。(訳注より)

« 『グエムル-漢江の怪物-』 | トップページ | 谷川真理ハーフマラソン »

「書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/27590/4947145

この記事へのトラックバック一覧です: 『超人類へ!』:

« 『グエムル-漢江の怪物-』 | トップページ | 谷川真理ハーフマラソン »