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『ネットvs.リアルの衝突』

ネットvs.リアルの衝突―誰がウェブ2.0を制するか
『ネットvs.リアルの衝突 誰がウェブ2.0を制するか』
佐々木俊尚・著
文藝春秋

『グーグル Google』『ウェブ2.0は夢か現実か?』の佐々木氏の新刊。
(ほんとによく働くなーこの人。)
前半はWinny裁判について、P2Pソフトの歴史から、
開発者逮捕にいたる経緯、裁判の行方までていねいに追っていて、
佐々木氏のジャーナリストとしての取材ぶりが光る。

Winnyは「ヒッピームーブメントからサイバースペース独立宣言へと続く
インターネットの理想」を反映していたという話はとてもおもしろい。

「金子被告はFreenetの影響を受けてWinnyの開発をスタートさせた。
Freenetは、60年代から綿々と続くコンピュータ文化の哲学を、
色濃く反映している。コンピュータネットワークの世界は自由であり、
国家や企業の介入は受けないという哲学だ。」

個人的な考えではWinny開発者は自分のソフトがどう使われるか
十分、意図しており、確信犯的だった。
そういう意味では、まったく無罪とは言い切れないと思う。
(「包丁を作った人まで罰せられるのか」というよく使われるたとえでいうと、
「殺人に使われるとわかっていて、それに適した包丁を作って
あきらかに殺人の意図のある人間に売った」ということだ。
でも、こんなたとえからは何にもわかんないよね。)
むしろ問題は、「著作権違反幇助」といった形で開発者を裁くしかない
現在の著作権法にある。現行法で罪に問えるのは
著作物をアップロードした人間だけなのだが、
じゃあ、Winnyを使ってダウンロードしていた人たちに罪はないのだろうか?

私はもう著作権なんてオープンにしてしまって
すべてをネット上で共有してしまってもいいんじゃないかとすら思っている。
音楽も映画も本もテレビもいつでも閲覧可能で、
ダウンロードなり、閲覧して納得した人なりが対価を払うとか。
そういう考えにいろいろ問題があることはわかっているけれど、
著作権の形が現状に対応しきれていないことは確かだ。

後半は「インターネット世界とリアル社会の対立」をテーマに
様々な論点があげられており、ついていくのにちょっと息切れ感もあるが、
日中韓にとって、オープンソースが国家戦略のひとつになっているとか、
TRONの復活とか、国産検索エンジンをめざす情報大航海プロジェクトとか、
いろいろ知らなかったことも論じられていて勉強になる。

「パソコン以後に情報社会の中心を司るハードウェアとして、
日本はデジタル情報家電によって覇権を握ろうとしていたが、
iPodが登場したことによってこの目論見は崩れ、
半導体、OSに続く標準化戦争の三度目の敗戦になろうとしている」
といった考えは興味深い。
今読んでおくべき一冊。

◆読書メモ

「私は、科学技術はすばらしいものだという1970年代に生まれ育ちました。
今でも私は、科学技術はすばらしいものだと信じています。
そしてこれまで、私はいろいろなプログラムを作って発表してきました。
新しい技術を生み、それを外に出していくことこそが、私の技術者としての
自己表現であり、また私なりの社会への貢献だと考えているからです。」
(金子氏の裁判での証言)

「P2P技術が出てきたことで著作権などの従来の概念が
既に崩れはじめている時代に突入しているのだと思います。
お上の圧力で規制するというのも一つの手ですが、
技術的に可能であれば誰かがこの壁に穴をあけてしまって
後ろに戻れなくなるはず。最終的には崩れるだけで、
将来的には今とは別の著作権の概念が必要になると思います。
どうせ戻れないのなら押してしまってもいいかなって所もありますね。」
(47氏としての2ちゃんでの発言)

伝説的な雑誌『ホール・アース・カタログ』について
「最終号の裏表紙には、田舎道の朝を撮影した写真がありました。
そして写真の下には、こんな言葉が書かれていました。
『ステイ・ハングリー、ステイ・フーリッシュ(ハングリーであれ、そして馬鹿であれ)』
それは彼らが雑誌を終えるに当たって残した最後のメッセージだったのです。
私は、いつもそのようにありたいと願い続けてきました。そして今、卒業して
新たな道を踏み出すあなたたちにも、同じようにあってほしいと願っています」
(スティーブ・ジョブスのスタンフォード大学卒業式での講演)

「反戦運動も、ウッドストックも、さらには長髪も忘れよう。
60年代の最大の遺産はコンピュータ革命だ」
「インターネットを経験した人は、自分が官僚主義の非情な世界ではなく、
文化の薫り高い牧歌的世界の中にいると感じるだろう。
その世界は実のところ、60年代の残映だ。
当時のヒッピー共同体主義と自由主義が、サイバー革命の原型を形作ったのである。」
(『ホール・アース・カタログ』をつくったスチュアート・ブランド)

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