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『タイアップの歌謡史』

タイアップの歌謡史
『タイアップの歌謡史』
速水健朗・著
洋泉社

戦前から始まる映画・CM・テレビドラマ・キャンペーン、
タイアップから生まれたヒット曲にスポットを当てた歌謡史。

タイアップというと80年代、90年代が中心だと思っていたけど、
『有楽町で逢いましょう』は有楽町そごうのコピーに始まり、
映画化、主題歌のヒットへと続くタイアップだったとか、
『東京音頭』は戦意高揚のために作られた(戦後は歌詞を変更)とか、
今まで知らなかった事実もいろいろ。

それでもやっぱりタイアップの全盛期は80年代。
資生堂のCMに起用された『裸足の季節』で登場し、
グリコのポッキー、SEIKOとタイアップしたデビュー当時の松田聖子。
『色・ホワイトブレンド』、『彼女とTIP ON DUO』、
『MUGO・ん…色っぽい』、『吐息でネット』、
能天気なタイトルを見ているだけで楽しくなる化粧品のキャンペーンソング。
当時はそれを普通に受け止めていたけど、
広告代理店がヒット曲やアイドルを作っていた時代だったわけだ。

「『ザ・ベストテン』は、『風のエオリア』(松下電器)、『ランナウェイ』(パイオニア)など、
スポンサーの日立と競合する企業のイメージソングもそのままオンエアした」
という話も当たり前のことかと思っていたが、
「森永製菓提供の『夜のヒットスタジオ』では、松田聖子は
グリコのイメージソング『風立ちぬ』を歌えず、B面の『Romance』を歌った」という。

「フォーク歌手がテレビ出演を拒否したのは、商業主義への反発だけでなく、
ラジオを中心としたタイアップビジネスに組み込まれていたため、
商売敵のテレビには出演しなかったというのが真相」とか
電通主催の西サモアを訪ねる「南太平洋裸足の旅」から
結果的に『時間よ止まれ』、『魅せられて』、『いい日旅立ち』
が生まれたとか、メディアとの関係も書かれているのだが、
そこらへんもっとつっこんで欲しかったところ。
よく調べてあるけど、本からの孫引きも多いので説得力が弱い。
できれば、タイアップの渦中にいた作曲家や代理店側の話が聞きたかった。
(イメージソングがどういう風に作られるのか、
キーワードを歌詞にどうやって入れていくのかとか興味がある。)

CMのイメージソング全盛から、歌番組のなくなった90年代には
アニソンやドラマの主題歌がマスメディアへの唯一の露出となり、
『スラムダンク』とまったく関係ない主題歌をビーイング系のZARDが歌ったり、
『ラブストーリーは突然に』のようなダブルミリオンが登場。
ヒット曲のほとんどがタイアップソングとなる。

今はシングルの売上げだけでヒットを計るのは難しい時代で、
「CDシングルではミリオンセラーを持たない倖田來未だが、
2006年5月に発表した『恋のつぼみ』は、
着うたフルのダウンロード数が200万件を突破している」
という指摘はけっこう重い。(『恋のつぼみ』もドラマの主題歌)

なんにせよ読み終わったあとで
無性に松田聖子が聞きたくなるという点で
私のような80年代歌謡曲好きにはよい本だと思う。

◆読書メモ

「旅で真に発見するものは、風景や事物ではなく“自分自身”である」
電通、藤岡和賀夫『ディスカバー・ジャパン』キャンペーン

『スター誕生』(1973年~83年)

リッチでないのに リッチな世界などわかりません
ハッピーでないのに ハッピーな世界などえがけません
夢がないのに 夢をうることなどは……とても
嘘をついてもばれるのです
(1973年に自殺したCMディレクター杉山登志)

松田聖子デビューの直前に山口百恵が引退を宣言、
山口百恵の宣伝予算が松田聖子のデビュー用に回された

ミノルタの『いまの君はピカピカに光って』と前後して、
オリンパスは大場久美子を起用(1979年)、ペンタックスは早見優(1982年)
カメラメーカー各社は男の子にとっての
理想の被写体(ガールフレンド)をCMに起用したのだ。

おニャン子クラブとは、テレビが仕掛ければ
素人でもアイドルになれるという実験のようなものだった。

華原朋美の「たのしくたのしくやさしくね」では
盛り上がる部分に曲の中で最も高い音符が連続し、
globeの「DEPATURES」では高音へと駆け上がるサビを
配置しているといったように、カラオケで歌う際に、
自己陶酔を味わうことができるような曲作りを積極的に行なっていた。

映画『私をスキーに連れてって』にも
西武観光、プリンスホテルら西武グループが全面協力、
登場するホテルもスキー場もすべて西武グループのものだった。

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