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『フラガール』

フラガール メモリアルBOX
『フラガール』

わかりやすいというのは決して悪いことではなく、
うちの母は寅さんシリーズをいつも大笑いしながら見ているが、
寅さんのわかりやすさというのは偉大だとすら思う。
しかし、この映画のわかりやすさには居心地の悪いものを感じる。
泣き所はいっぱいあるが(ありすぎだ)、
どれも登場人物が先に泣き出してくれるので、非常に明快。
つられて泣いてしまう観客も多いだろう。

常磐ハワイアンセンターという目の付け所は良かったと思う。
炭坑+ダンスといえば『リトル・ダンサー』や、(鉄鋼だけど)『フル・モンティ』など
イギリス映画の佳作がある。人員削減の相次ぐ炭坑を舞台に、
変わりゆく時代、起死回生をめぜす町、若い世代の夢を描くあたりはそっくりで、
このテーマなら日本映画でもできると最初に思いついた人はかしこい。
しかし、そこらへんがうまく整理できているかというと、どの話も中途半端。
富司純子演じる母と蒼井優演じる娘の対立、
徳永えりの娘と父、豊川悦司と同僚の関係、
松雪泰子演じるフラダンスの教師と町の関係などで
それぞれテーマは描かれているのだが、どれも浅く、
最後はすべてお涙頂戴でうやむやに解決されている。
どうせお約束のパターンを歩むなら、これらすべての対立が
最後のダンスシーンに集結して昇華されるべきだった気がするのだが。
主役不在というか、軸がきちんと通ってない印象。

松雪泰子は老けメイク(本当に老けてるのかもしれないけど役作りかも)で
新しい役どころを果敢に演じてるが、彼女のがんばりが生かしきれていない感じ。
蒼井優はあいかわらずかわいいし、ダンスも見事だが、
『ハチミツとクローバー』で彼女に惚れた私としては全然もの足りない。

彩度の低い映像は「こんなことが昔あったんですよ」と言っているわけだが、
過去の物語として書く必要があったのかな。
常磐ハワイアンセンター(現スパリゾートハワイアンズ)は今でも営業中だし、
さびれゆく町をどうやって活性化するか、未来に希望がもてない中で
若い世代の夢を親たちはどうやって叶えるのか、
勇気を与えるファンタジーは現在にも通用するのでは。

旅行博でパラオの女の子たちが踊るのを見て
すごくスローモーな踊りなのになぜかものすごく感動したことがある。
パラオの踊りとフラでは種類が違うかもしれないが、
プリミティブでストレートなダンスは誰が見ても心に響くはずだ。
蒼井優の練習シーンとステージシーンも
本来フラがもっている魅力を最大限に利用するべきで
あのスローモーションの使い方やカット割りはむしろ踊りを殺していた。

というわけで私は不満だらけなのだが、
もともとの素材(常磐ハワイアンセンターの物語、役者、フラ)は悪くないので、
結果的に多くの人に支持されているのだろう。
今年度の邦画各賞を総なめし、
(まったく信用していない)日本アカデミー賞では5部門で受賞している。

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