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『東京駅はこうして誕生した』

東京駅はこうして誕生した
『東京駅はこうして誕生した』
林章・著
ウェッジ

日本の鉄道の誕生から、東京駅の建設、山手線の開通まで
鉄道が東京という街を形成した歴史を追う。

交通博物館について調べていたとき、
万世橋駅が東京駅より先に完成していたことにちょっと驚いたのだが、
東京の鉄道は新橋~横浜間に始まり、長い間、上野と新橋間は空白地帯だったのだ。
(東京駅完成後、万世橋駅はターミナル駅としての役割を終えている)

そのほか、当時、国だけで鉄道網を作るには財政負担が重すぎたので、
私鉄により鉄道を拡大し、1906年の鉄道国有化によって国鉄にしたこと
(それまでは私鉄が70%を占めていた)
“中央停車場”という名前は開業直前に“東京駅”となり、
初めて“駅”という呼称が使われた(それまでは“停車場”)など、
日本の鉄道の開拓史がよくわかる。

著者は、お雇い外国人技師ヘルマン・ルムシュッテルが
新橋~上野間を赤レンガのアーチ橋による高架橋を提案したこと、
中央停車場をターミナル(終着駅)ではなく、
パス・スルー(通過)方式の始発駅にすると提案したことを
高く評価している。

赤レンガのアーチ橋は今もその姿を残しており、
シカゴのような鉄橋にしなかったことで、騒音の少ない、現在の景観を作った。
また、東京駅をパス・スルー方式にしたことで、
ロンドンのようにいくつものターミナル駅を抱えず、
地方から乗り入れる鉄道はすべて東京駅に集約されることになった。
その後、山手線が環状に都心をつなぎ、
私鉄が山手線の各駅をターミナルとして郊外から乗り入れる。
結果として、郊外から都心へ集約し、都心から郊外へ分散していく
現在の東京の背骨が完成した、と著者は言う。
まさに鉄道が東京を作ったのだ。

東京駅というと私はまっさきに辰野金吾を思い浮かべてしまうが、
設計だけでなく、鉄道建設を請け負った建築会社、
松の木を一本、一本埋めていく基礎工事の様子など
東京駅の建設を通して、日本の近代が作られていく様が
エキサイティングに描かれている。
私のような建築ファンや鉄道ファンのみならず、
現在の東京の姿や街のあり方を考える上で参考になる一冊。

◆読書メモ

明治5年(1872年)、旧暦9月12日、日本初の鉄道、新橋~横浜間開通。
明治14年(1881年)、上野~青森、大宮~高崎間認可。
明治18年(1885年)、後に山手線となる品川線(品川~渋谷~新宿~赤羽間)開通。

東海道線の起点である新橋駅、東北線のターミナルである上野駅、
この都心の空白地帯に鉄道を通すことが決定。“中央停車場”と名づけられる。

「凡そ物には中心を欠くべからず。
猶ほ恰も太陽が中心にして光線を八方に放つが如し、
鉄道もまた光線の如く四通八達せざるべからず、
而して我国鉄道の中心は即ち本日開業する此の停車場に外ならず、
唯それ東面には未だ延長せざるも此は即ち将来の事業なりとす、
それ交通の力は偉大なり」
大正3年(1914年)12月18日、東京駅開業式典における大隈重信の祝辞

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