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『一千一秒物語』

一千一秒物語―稲垣足穂コレクション〈1〉
『一千一秒物語』
稲垣足穂/著
ちくま文庫

有名な作品ですが読むのは初めて。
私の歳で『一千一秒物語』といえば、最初に思い浮かぶのは松田聖子。
絶妙なタイトルです。

「ある夕方 お月様がポケットの中に自分を入れて歩いていた」
もうこの一文でSFとか耽美とか常識とかの概念が音を立てて崩れ落ちる。
すげー。
どの文章もビジュアル化が不可能なのだが、
絵にするならシュールレアリズムの世界。
プラタナスとかマロニエとかブリキ製とかムーヴィとか
モダンな世界は私のイメージでは1960年代だが、
『一千一秒物語』が書かれたのは1923年(大正12年)。
稲垣足穂が先鋭的だったせいもあるだろうけど、
大正、1920年代という時代がいかにお洒落だったか思い知らされます。

「これを守護するように、両側に硝酸ストロンチウムの紅焔が立昇っていたが、
これは土星を湾内に誘導しようとする仕掛である。
色花火を用いて星を釣ることは、僕はこちらにきて初めて検証したが、
この作業はもともとピーコック教授の説にもとづいている。」
『螺旋境にて』
のように、さっぱり意味のわからない文章もありますが、
その言葉が流れていく感じがそれだけで美しい。

「私とは余り年齢の違わない人は、あのスクリーン、
といってもそれが隙間風にゆらゆらする只の白幕にすぎなかった頃、
そんな垂幕の前にぶら下がり、一種の驚嘆さにおいてフィルムからの
投影を見守っている私たち映画ファンにとって、
「日露戦争」が如何に目覚しい題目だったかを、よく憶えているに相違ない。」
『人工戦争(バタイユアルテイツシエル)』

日本語の持つパワーを教えてくれる目からウロコの名作。


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