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『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』

そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります
『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』
川上未映子/著
ヒヨコ舎

『タイタンの妖女』『一千一秒物語』と2冊続けて
高レベルの本を読んでしまったので、普通のぬるい本を読む気になれず、
この2冊とまったく無関係でもない、これをセレクト。

ブログ『未映子の純粋非性批判』の書籍化、なんですが、
“文筆歌手”だけあって、この未映子さんの文章がすごい。

「交通事故とか一方的な傷害や天災や事件に巻き込まれたりなど、
そんなニュースを見たり聞いたりすると、や、人生には、
というよりも世界にはどこぞに巨大なロシアンルーレットが備え付けられてて、
毎日毎日、何発も何発も弾は撃ちまくられていて、
なぜか今日現在、自分や周りの友人らに当たっていないことが不思議なもんやな
という気持ちになる。強制参加の本気のロシアンルーレットゲーム、
一律に制限時間付きではあるけれども。
それにしても撃ってるのは誰やねん。あなたがたの目的はなんやの。
てゆうか、そのロシアンルーレットどこ製。」
(2003年10月10日 ロシアンルーレットは遊びやないのやで)

「鳩よ、おはようカラスよ、おはよう。名前も知らんなんか茶色くてときどき見かける
焼きおにぎりみたいな鳥よ、おはよう。工事現場のおっちゃんよ、おはよう。
コンビニのやる気微塵も伝わらんちょっと栗毛で天パの兄ちゃんよ、おはよう。
中也よ、おはよう、かの子よ、おはよう、ホッケよ、おはよう、おはよう。
横光と森茉莉よ、おはよう。あなたがたは一生懸命書いた己の文章が
没後このように東京の片隅の、ほんとの片隅の本棚でなんのアレもなく
半永久的に隣り合わせに棲息していることを、ま、知る由もないわよ。」
(2005年7月13日 絶唱体質女子で!)

「なま暖かく体がいきなり浮く感覚、
春の匂いがして匂いがして匂いがして匂いがして私は途端に動かなくなり、
もうどうにもこうにも一歩も足が前に出んようになって、動かなくなり、
体を前に出そうとするのだが、動けず苦しく、どうにもこうにも這い這い家に引き返した。
泣き出さんばかりの、いいかげん、いよいよいったい、飽きたまえよ、私の思春期部よ、
しかしながら質量を持つ人間が春の匂いにあのようにやられるなんて、
初めての春でもあるまいし、そんな阿呆なことがあるか。あったんや。」
(2006年2月17日 春におそわれる)

どこを切り取っても文学。
サラサラと書いているようで、言葉は非常に選ばれているし、
本当にサラサラと書いているのなら、それは彼女のこれまでの
文学的、精神的、物理的な経験の蓄積が豊富なんだろう。
「天才の文章」と評されてましたが、ほんとに。

情緒不安定な感受性が読んでる側からしても心配になりますが、
情緒不安定さを文章にできる表現力が彼女にはあり、
歌であれ、詩であれ、文章であれ、彼女が表現者であることは必然なのかなと。


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