« 『アイドルにっぽん』 | トップページ | 『カネと野望のインターネット10年史』 »

『ヤンヤン 夏の想い出』

ヤンヤン 夏の想い出
『ヤンヤン 夏の想い出』

※前置き
エドワード・ヤンの訃報を聞いて数年前に買ったDVDを取り出してきて、
「さあ、見よう」とセットしたら、オープニングが違う。
「あれ、こんな場面なかったよな? なんかの予告編?」と思ったら、
中身が『ヤンヤン 夏の想い出』ではなく、『友へ チング』だった。
DVDのプレス面も『ヤンヤン』なのに、内容だけまるきり違うのだ。
すぐに検索してみたら、3年前のリリースでポニーキャニオンがお詫びをしていた。
プレスミスらしいけど、こんなことってあるんだねー。
リリースに書いてあった電話番号に電話してみると、最初に応対してくれた人は
「え? 内容が違うんですか?」とまったく事情を知らない様子。
電話を回されたカスタマーセンターでは、すぐに「大変申し訳ありませんでした」
という感じで、「お手数ですが着払いで送っていただけますか」とのこと。
木曜日の夜に送ったら、土曜日には『ヤンヤン』が送られてきましたが、
数行のお詫びの手紙が入っていただけだったので、
これ以上どうしろと言われても困るのだろうが、なんかなーという気分も。
3年間、封を切らずにほっておいた私も悪いのですが、
すごく好きな映画なので、特別なときに見たかったんだよ。
(ポニーキャニオンのお詫びリリースが2004年3月なんだけど、
アマゾンの履歴を確認したら、私がDVDを購入したのは2004年6月。
こういうのって回収しないの? それともプレスミスは一部だけだったのかしら)

というゴタゴタもあったりしましたが、
追悼エドワード・ヤンということで、久しぶりに見ました。

公開当時、映画館で見たとき、オープニングの記念写真を撮る場面だけで、
泣けたんだけど、いったい何に対して泣いているのか自分でもわからなくて、
ただ、幸せな風景に涙が出た。
靴を取られたヤンヤンが階段の踊り場をぴょこぴょこと横切っていく場面も
すごく好きなんだけど、なぜこの場面が好きなのかうまく答えられない。
この映画全部がそんな感じで、すごく好きで、すばらしい映画なんだけど、
その理由はどれもうまく言葉にできない。

ストーリーだけ見れば、ヤンヤンの家族はいろいろ大変な目に遭っているわけで
おばあちゃんは意識不明で眠り続けているし、母親は精神的にまいって宗教に走るし、
父親まで過労で倒れるし、自分の恋はうまくいかないし、
私がティンティンの立場だったら、かなり泣くと思うんだけど、
映画全体はいつでも幸せな家族の風景を映してるように美しいんだよね。

窓ガラスの使い方(一場面に電話している秘書とNJを同時に映すとか、
泣いている妻と、彼女が見ている風景を同時に映しこむとか、
シャッターを閉めたときの夜景の美しさとか)、
登場人物が見ている対象を画面には入れず、見ている人物の表情だけを映したり、
恋人たちを引きで捉えた絵(そのため隣人の少女の顔は最後までよくわからない)、
父親の過去の恋と、娘の恋、息子の恋がシンクロする場面の美しさとか、
技術的にもすごいんだが、それをいちいち指摘してみても意味があるのかどうか。

3時間もある映画なのだが、私はこの映画で初めて
「このままこの映画が終わらなければいいのに」という気分を味わった。
この映画を超える傑作は、エドワード・ヤン以外には撮れないだろうと思った。
そして、彼が亡くなった今、この映画を超える作品は誰にも撮れなくなってしまった。

エドワード・ヤンの訃報を聞いたとき、とても悲しかったのだけど、
その悲しさの理由が、やっぱり自分でもよくわからず、
あと何本か見れるはずだった傑作が決して見れないからなのかとも思ったけど、
たぶん、私は、この映画のオープニングに流れる幸せな気持ちを思い出して
悲しくなったんじゃないかと思ったりした。

「悲しんでる理由が後ろからじゃ分からなかった」

「なぜ世の中はこんなにも夢と違うの」

「人生をやりなおすチャンスなんて必要ない。1度でいい」

« 『アイドルにっぽん』 | トップページ | 『カネと野望のインターネット10年史』 »

「映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/27590/7147134

この記事へのトラックバック一覧です: 『ヤンヤン 夏の想い出』:

« 『アイドルにっぽん』 | トップページ | 『カネと野望のインターネット10年史』 »