« 『カンブリア宮殿 村上龍×経済人』 | トップページ | 『2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?』 »

『インターネットは誰のものか』

インターネットは誰のものか 崩れ始めたネット世界の秩序
『インターネットは誰のものか 崩れ始めたネット世界の秩序』
谷脇康彦/著
日経BP社

“助け合い精神”で運営されてきたインターネットが、
ブロードバンド化の進展、検索エンジンの登場や、情報のタグ付けにより、
新しいビジネスチャンスを生み出し、“商業主義インターネット”へ姿を変えている。
グーグルなどのコンテンツプロバイダーが
ネット上のサービスで莫大な利益を得ている一方で、
インフラ整備に追われている通信会社やISPは、
ネットから十分な収益を上げることが難しい。
コスト負担の公平性が崩れる中、出てきたのが、“ネットワークタダ乗り論”。
この問題を解決しなければ、インターネットは遅くて使いものにならなくなったり、
接続料が値上げされたり、自由に楽しむことができなくなる。
そのための解決策を探ろうというのが本書。

著者は「総務省総合通信基盤局料金サービス課長」という肩書きの人。
ネットワークの中立性について、今後のインターネットのありかたについて
今現在、行なわれている議論を多くの人に知ってもらおうというところから
本書は書かれている。
お役人がわかりやすく書こうとしている文書なので、
章ごとにまとめがあったり、話にくどいところもあるが、
“インターネットにおけるコスト”という今まできちんと考えたことのなかった
問題を提示していて非常に勉強になった。

たとえば、インターネットの仕組みについて、
利用者→アクセス網(NTT東西など)→下位ISP→上位ISP→IX
という階層構造があり、IX(インターネットエクスチェンジ)は、
日本国内にはJPIX、NSPIXP、地域IXなどがあるが、
多くは東京と大阪に集中しており、これは国際回線の
海底ケーブルの“取水口”が、東京と大阪近郊にあることと関係している。
アメリカの第一階層に位置しているISPグループは「ティア1」と呼ばれ、
AT&T、グローバルクロッシング、レベル3コミュニケーションズ、
ベライゾンビジネス(元UUNet)、NTTコミュニケーションズ(元ベリオ)、
クエスト、サビィス、スプリントネクステルの8社がある。
つまり、Youtubeを見ようと思ったら、
アクセス網、下位ISP、上位ISP、国際回線経由でアメリカのティア1、
アメリカ国内のISPというルートを往復しなければいけないのだ。

ISP間をつなぐ方法には、「ピアリング」、「トランジット」、「IX」の3つがあり、
上位ISP同士のピアリングは、流れるトラフィックが大体同じなので、
「お互い様」ということでコストはかからないが、
上位ISPが下位ISPと接続するトランジットとIX接続には料金がかかる。
たとえばJPIXのIXの料金は、10ギガbpsのポートにつなぐ場合で月270万円、
1ギガbpsのポートで月72万円かかる。
また、地方のISPが東京や大阪のIXにつなぐには、
データ専用線を利用するが、1ギガbpsクラスの回線で月数百万円する。
まさに「インターネットはタダではない」のだ。

解決方法としては、
CDN(コンテンツ配信ネットワーク)、P2P、IPマルチキャスト方式、
クライアント・サーバー方式にP2P方式を組み合わせた「OLM」
(オーバーレイマルチキャスト)方式など、
技術によってトラフィックの急増に対応しようというものと、
帯域制御など、ルールを決めてトラフィックをコントロールする手段、
NTTグループが取り組んでいる次世代ネットワーク「NGN」
などが具体的に紹介されている。

「インターネットの均衡を取り戻し、商業主義インターネットの
更なる成長モデルを描くには、ネットワークのコスト負担の公平性と利用の公平性
という二つの観点から、新しいルール作りを進めていくことが必要なのです。
「ネットワークの中立性」(network neutrality)を確保できれば、
最悪のシナリオは避けられるようになります。」

なかなか難しい話で、簡単に解決するとも思えないが、
WinnyやYoutubeが人気を集めるほど、その裏では、
トラフィックが増大したり、アメリカとの接続が問題になったりするのだ
ということを考えてみてもいい本。

◆読書メモ

「インターネットはタダではない。我々もケーブル会社も投資をしている。
グーグルであれ、ヤフーであれ、誰であれ、パイプをタダで使おうというヤツは馬鹿だ」
(大手通信会社SBC会長・エドワード・ウィタケア)

「インターネットのオープンで中立的な構造がなければ、
グーグルは生まれてこなかっただろう。
私達はインターネットの将来を考えているが、それは単に私達のためではなく、
潜在的に(次の)グーグルになり得る他のすべての事業者のためである。
インターネットの本質にある「innovation without permission」(許諾を要しない革新)
という活気のある体系が、富と機会を地球上の人々にもたらす」
(グーグル)

1969年にアポロ11号が初めて月に着陸した時のコンピューターの能力は、
実は1983年に発売されて一世を風靡した家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ」
の計算能力と同じだったそうです。

« 『カンブリア宮殿 村上龍×経済人』 | トップページ | 『2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?』 »

「書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/27590/7241818

この記事へのトラックバック一覧です: 『インターネットは誰のものか』:

« 『カンブリア宮殿 村上龍×経済人』 | トップページ | 『2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?』 »