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『秒速5センチメートル』

秒速5センチメートル 特別限定生産版 DVD-BOX
『秒速5センチメートル』
at 下高井戸シネマ

独特の世界観で人気を集めている新海誠の最新作。
この作品を見る前に、ヤフーで配信されていた、
『彼女と彼女の猫』、『ほしのこえ』、『雲のむこう、約束の場所』
と立て続けに新海作品を見たのだが、この人のテーマはいつも同じ。
遠い日の恋、失くした夢、宇宙への憧れ、
移り変わる四季の美しさ、「私はここにいるよ」

主人公が『北の国から』の純くんのように、ぶつぶつと独白する構成も同じ。
(『雲のむこう、約束の場所』は吉岡秀隆が声優を務めている。)
正直、そのセンチメンタリズムには辟易する。
ヒロインがいつも「お前はエロゲーのキャラクターか」と言いたくなるほど、
リアルさの欠片もない、うすっぺらくて甘々なのもどうなのか。
(『雲のむこう、約束の場所』でサユリが「飛行機! すごい!」と言って
走り出す場面があるが、今どきアニメのキャラクターだってあんな女の子走りしないよ)
リアルに書き込まれた背景の一方で、内容的にも絵的にも
まったくキャラクターに魅力がない。
延々としゃべり続けるナレーションだけがキャラクターを支えている。

『ほしのこえ』の宇宙間遠距離恋愛や、
『雲のむこう、約束の場所』の分断された日本といったSF的設定がないぶん、
『秒速5センチメートル』は純粋にラブストーリーで甘々度もパワーアップ。
そんなに初恋が大事なら獲得する努力をすればいいじゃん、
あきらめて消えてしまう恋なら、いつまでも追い続ける必要があるのか、
再会したとしても、理想化された彼女と現実の彼女は違うはずなのに、
と主人公に最後までイライラ。
なんつーか、壮大なラブレターみたいな映画だと思ったのだが、
他人が他人に贈ったラブレター読んでもね。

とまあ、欠点はいろいろあるのだが、人気があるのもよくわかる。
うすぺっらいキャラクターに対し、背景がもつ圧倒的な力。
『雲のむこう、約束の場所』の電車内の場面では、天井を光が走るのだが、
いつも電車に乗っていても私にはそんな光は見えない。
おそらく、新海誠にしか見えない光があるのだ。
めちゃくちゃ書き込まれているが、「リアル」という訳でもない。
新宿駅など知ってる場所が出てくるとそれは明らかで、
この映画の新宿駅は未来都市のような美しさで輝いている。
きっと、これも新海フィルターがかかっているのだ。
太陽の光や雲や星にいたってはアニメだからできる絵。
人が出てこない場面ですら実写でつくろうとしても絶対に無理。
振り向いたところに回り込む夕陽や、綺麗な放物線を描いて上昇する紙飛行機
なんかも、すべてアニメだからできる美しすぎるシーンだ。
(ロケットが飛んだときはいくらなんでもあんまりだと思ったが)

この人の持つ絵のパワーはたしかにものすごいものがあるので、
脚本とキャラクターデザインをまったく違う人にするとか、
まったく違う世界観の原作がある作品に取り組むとか、
どっかのアニメスタジオのプロジェクトを一度手がけてみるとか、
今までとは違う取り組みをしてほしいなと思う。
今のまま、自分の好きな世界を小さなプロジェクトで作り続けても、
マニアックなファンは支持するだろうけど、
こんな同人誌的なことをやってるのはもったいないと思うのだ。

ほしのこえ(サービスプライス版)
『ほしのこえ』
新海誠の第2作。これもほぼひとりで作っているとか。
携帯のメールが数ヵ月や数年の時差を経て届くというところがよい。
“携帯メールでいつでもつながっている”という幻想を
この設定によって、いったん打ち壊し、それでも二人の間に絆はあるのか?
という宇宙間遠距離恋愛の話になっている。
ロケットを見上げる場面は『秒速5センチメートル』でも同じようなシーンがある。
この人はロケットそれ自体より、雲が描く軌跡が好きなんじゃないのか?

雲のむこう、約束の場所
『雲のむこう、約束の場所』
南北に分断した日本(正確に言うと北海道と本土?)という設定が
多少スケール間を感じさせるものの、
「眠り続ける彼女を救うのか、世界を救うのか」という世界系のお話。
少年2人と少女1人が出てくるけど、これもやっぱり基本的には
少年がひとりの少女を想い続ける話だから、男の子はひとりでも良かったのでは。
『秒速5センチメートル』もそうだけど、少女のキャラクターに魅力がないので、
なぜそこまで彼女を想い続けるのか共感しにくい。
中学生の夏に「彼女が世界のすべてだった」としても、
大人になってまで「彼女=世界」なんて、どうなの。
(SF的設定により、文字通り、彼女は世界のキーなのだ)


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