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『ユビキタスとは何か』

ユビキタスとは何か―情報・技術・人間 (岩波新書 新赤版 1080)
『ユビキタスとは何か 情報・技術・人間』
坂村健/著
岩波書店

著者はTRONプロジェクトのリーダーであり、
YRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長という肩書きの人。
ユビキタス構想について、考え方、技術、実証実験、
インフラ整備のための問題点などについて書かれている。

大きくまとめると、いろんなものに“ユビキタス・コード(uコード)”と呼ばれる
ユニークな番号をつけて、“ユビキタス・コミュニケータ”でuコードを読み取ると、
ネットワーク経由で、その物に紐付けされた情報を取り出してくる、
というのが“ユビキタス・コンピューティング”の仕組みだ。

データをuコード自体に埋め込むのではなく、ネットワーク外部化することで、
買った薬に後から問題が起こった場合、メーカーがデータベース情報を
書き換えれば、薬を飲む前にそれが安全かどうかチェックできる。
(データをuコードに埋め込んでしまうと、後から書き換えができない。)

そのほか、uコードによって、物と物の情報がリンクすることで、
消費者は、お弁当の食材が何であるか、生産者は誰であるかを
知ることができるし、流通業者は、生産管理としてuコードを利用できる。
など、ユビキタスの可能性についても語られている。

「ユビキタス・コンピューティング研究の究極の目的は、
現実の世界のコンピュータによる完全認識ということになるでしょう。
それによって、社会全体の効率化をはかろうということなのです。」

個人でもuコードを取得して、
自分の持ち物につけることができる応用範囲の広さが、
バーコードやEPCコードのような製品コードとは違うところだとか、
アクティブ・タグとパッシブ・タグの2種類の電子タグの話だとか、
技術的な話もでてくるのだが、後半中心となるのは、
「ユビキタスは技術ではなく、インフラである」という話。

MOT(マネジメント・オブ・テクノロジー)
「技術それ自体ではなく、何の目的で、どう技術を使うか」ということを考える。

たとえば、アメリカで研究されている紫外線LEDは、
細菌検出器にもなるので、軍予算で開発が進められているが、
医療器具にもなるし、高密度記録可能なDVDの部品としても期待されている。
つまり、「技術をどう使うか」が大切なんだということで、
実現するための技術はすでにあるが、インフラとして整備するためには
社会の理解や制度が必要だということが何度もでてくる。

ここらへんの話がくどくて、何年も前からユビキタスという言葉だけは
ひとり歩きしているのに、いっこうにユビキタス社会が実現しないことに対する
著者の怒りみたいのさえ、感じられる。
まあ、ここにでてくるユビキタスの可能性だけを読んでも、
買った商品の生産者がすぐにわかるのって便利なの?
銀座を歩いていたら、建物の説明が表示されるのって楽しい?
という感じであり、そこは著者が説明しているように、
「インターネットによって、孫の写真をおじいちゃんに一瞬で送れるようになる」
と語ったところで、それはインターネットが実現可能な話の一例であって、
実現するだけなら、カラーファックスの方が簡単にできる。
ユビキタスで実現できる例を語ったところで、
ユビキタスは実現できない、ということらしい。
何を言ってるかわかりにくいと思うけど、実際、そういう内容の本です。

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