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『高校野球が危ない!』

高校野球が危ない!
『高校野球が危ない!』
小林信也/著
草思社

ハンカチ王子フィーバーばかりが注目されたが、
優勝した早実はラフ・プレーが多く、斎藤佑樹投手も死球がめだつ。
そこにあるのは「とにかく勝てばいい」という価値観ではないのか?
騒がれた特待生制度の問題点は、「有望選手を集めれば勝てる」
と多くの野球関係者が考えていることだ。
また、特待生制度の裏には、生徒不足に悩む高校の現実がある。
選手のプロ入りに際して報酬を受け取る監督がいる一方で、
部活動の予算不足に苦しみ、金銭的見返りのないまま、
教員の仕事と野球の指導を務める監督もいる。
選手経験や野球指導の経験もあるスポーツライターの著者が、
現場取材を通して、高校野球の問題点を説いた本。

有望選手を集めるために、中学生の段階からスカウトが動いているとか、
選手がプロ野球に入ると監督に報酬が渡るケースがあるとか、
いろいろびっくりな実態が書かれているわけですが、
私自身は特待生問題が騒がれたとき、
「強い高校に行きたい生徒がいて、有望な選手を欲しい高校があるなら、
特待生制度だってありなんじゃないの? 
なぜ高校野球だけがお金のからまない純粋さを求められるんだ?」
と思ったりしました。
「選手を「集める」より、「育てる」べきだ」という著者の主張はもっともだけど、
野球によって学校の人気をアップしたい高校側の
切羽詰った感じも理解できないわけではないと思ったり。

高野連がユニフォームのロゴマークを一切禁止していたり、
甲子園のベンチには神社のお札も千羽鶴も持って入ることはできないとか、
一試合2時間と決まっている、といった話もびっくりなんですが、
高野連が厳しくしていることで、他のスポーツと違って、
高校野球は商業主義から守られている面もある、
という著者の意見には素直にうなづけなかったり。

この本がいまいちすっきりしないのは、著者が問題点を指摘する一方で、
そうならざるえない現状も説明しているので、糾弾しきれていないからだと思う。
おそらく著者は現場に近すぎ、高校野球を愛しすぎているのだろう。
「高校野球は、甲子園のためにあるわけじゃない。
勝てばいい、儲かればいいという考えではなく、
高校野球を通じて人格を形成する本来の目的に戻るべきだ」
という著者の主張は美しいけど、著者自身が
「高校野球にいかにお金がかかるか」という現状を描いている以上、
完全にクリーンな高校野球なんて無理なんじゃないの?
むしろ特待生やドラフトの報奨金ははっきりさせた方がいい気がするし、
スカウトや監督が暗躍するくらいなら、エージェントを導入した方がいいし、
甲子園の視聴率を気にするくらいなら、スポンサーだってありなのでは。

著者は早実のラフ・プレーをことさら問題にしていたり、
ガッツポーズにしても苦言を呈しているが、
フェアプレーや心技体を強調されるのも違和感を感じる。
高校野球を美化することでは何も解決しないのでは?

◆読者メモ

中学野球の監督が有望な選手を特定の高校に進学させ、
3年後、プロ球団にドラフトされた場合、
スカウトとの交渉は中学時代の監督が行なう。

高校野球ではユニフォームのロゴマークを禁止している。
メーカー各社は、日本高野連の基準に則った、
マークの入っていないユニフォームや用具を高校生用に作っている。

「うちの学校は、野球部とサッカー部、それに吹奏楽部の活動が盛んです。
各学年でそれぞれ30人ちょっとの部員がいれば三つの部だけで約100人。
全校で300人の生徒が確保できます。
このほかに、有名校への進学を目指して一生懸命勉強してくれる
生徒たちが何割かいれば、学校の経営は安泰です」

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