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『アニメビジネスがわかる』

アニメビジネスがわかる
『アニメビジネスがわかる』
増田弘道/著
NTT出版

マッドハウスの元代表である著者が
産業としてアニメを分析した本。

第1章は製作費、
第2章はテレビ放映、映画公開など一次利用、
第3章は再放送、DVD、ネット配信、音楽関連、海外市場など二次利用、
それぞれを算出し、アニメはどれだけ儲かっているのかを検証している。

きちんとした数字が公開されていなかったアニメビジネスにおいて、
多少怪しげな計算もあるものの、2005年に製作されたアニメ作品を
本数や時間、放映時間、ネットワーク(地上波か全国かBSかなど)に分類し、
データをひとつひとつあげた上で算出しているので、
ここで出てきた数字にはなかなか説得力がある。

たとえば、地上波全国放映、ゴールデンタイムで、
キッズ・ファミリータイプの代表例である『ワンピース』の場合、
制作費に1100万円がかかるが、テレビ局からもらうのは900万円。
1本作ると200万円の赤字になる。
一方で、青年層タイプでスケールの大きい作品である、
『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』は
1話あたりの制作費が3000万円といわれる。
また、全国・準全国ネットワーク以外の番組については
制作費がほとんど支払われていない例もある。
などなど、これまでまったく知らなかった金銭面での
アニメビジネスが数字ではっきり例示されていて興味深い。

第4章では、日本のアニメが発展したきたのはなぜか、
日本のアニメの優位性、第一次から第三次のアニメブームなど
産業の歴史を検証。

『ジャパナメリカ』でも出てきたけど、
アメリカの劇場アニメが1秒12~24コマ、
ハンナ・バーベラの省略作画法で1秒8コマに対し、
鉄腕アトムは1秒3コマに満たない2000枚であり、
(現在のテレビアニメは平均3000~4000枚)
結果として、3コマ撮り、トメ、引きセル、口パクといった
日本アニメ独自の表現を生んだ。

「アトムではスケジュールが限界に達すると、
すでに放映された作品のセル画をつかって新作をつくるという
驚くべきバンクシステムの究極活用も行なわれていた。」

手塚治虫が『鉄腕アトム』の受注価格を55万円と決めたため、
アニメの制作費はずっと安いままなんだという、よく言われる話については、
テレビ番組の制作費が50万円、子供向けなら20万円だった当時、
55万円という価格は不当に低くはなかったという手塚の反論も掲載されている。

第5章が産業としてのアニメの問題点で、ここが一番おもしろい。

たとえば2Dから3Dへと移行するアメリカに対し、日本はどうするべきか。
(『ファイナル・ファンタジー』のトラウマによって、日本はCGアニメに躊躇している。
『アップル・シード』のような3Dアニメは、
アニメ業界以外の制作会社によって生まれた。)

音楽業界で起こった制作・流通のデジタル化は
いずれアニメ産業にも変化をもたらす。
そのためにもテレビ局から支払われる制作費の定義を
明確にすべきだといった話や、
(放送局から支払われる金額のほとんどが制作費に満たない、
あるいは全く出ないケースがあるにもかかわらず、放送局は
作品の著作権や二次利用から生じた収入の分配を要求する)
供給過多ではないかと思われる現在の制作本数、
(1970年のテレビアニメ新作数17作品に対し、
1980年 40作品、1995年 38作品、
2000年 62作品、2005年 124作品)
少子化、マンガのパワーダウンによる原作の不足、
プロデューサーの人材育成についてなどなど、
今までイメージで語られてきたことが明確に書かれていておもしろい。

将来の可能性が海外進出のための
アニメのブランディングみたいになってしまうのは、
まあ、いつもの話だなーという気がしますが、
日本アニメの現状を作品論ではなく、経済的にとらえた本としてオススメ。


◆読書メモ

ジョン・ラセターは競合するディズニーのアニメ制作部門は
セルアニメをつくるべきだと主張している。

3Dアニメが増加するアメリカでは、
メインキャラクターが動物やモンスターばかりになってしまった。
(CGの発達で、人間が主人公の企画は実写に移行した。
『パイレーツ・オブ・カリビアン』は当初アニメ企画であったが、
CG技術の発達によって実写となった。)

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