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『メディア・イノベーションの衝撃』

メディア・イノベーションの衝撃―爆発するパーソナル・コンテンツと溶解する新聞型ビジネス
『メディア・イノベーションの衝撃
爆発するパーソナル・コンテンツと溶解する新聞型ビジネス』

橋場義之、佐々木俊尚、藤代裕之、デジタルジャーナリズム研究会/編
日本評論社

情報ネットワーク法学会デジタル・ジャーナリズム研究会の
連続討論会をまとめた本。
佐々木俊尚氏のようなジャーナリスト、藤代裕之氏のようなブロガー、
新聞記者、ニュースサイト記者、テレビプロデューサーらが
ネット時代のジャーナリズムについて意見を交わしている。

第1部「ネット時代のジャーナリズムとは何か」、
第2部「ブログは報道機関になりうるか」といったテーマでは、
そもそもジャーナリズムとは何かといった話も出てくる。
第3部では、苦戦するオーマイニュース日本語版の現場から、
市民ジャーナリズムは可能なのか、克服するべき問題点が議論され、
第4部では、新聞やテレビのような“マスメディア”と、
ブログのような“パーソナル・メディア”の中間に位置し、
それぞれを結びつける検索エンジンやソーシャルブックマークのような
“ミドルメディア”の役割が語られている。
CGMの台頭によって“メディアインフレーション”(メディアの増大)が
起こり、既存のメディアの価値が相対的に下がったという話は納得。

そのほか、広告宣伝用のブログを自動作成し、
ネット世論を操作する“ボット”の存在について、短いながら触れている。
“ボット”ではないが、ブログに商品記事を書くことで謝礼を払うという
マーケティングが増えているのは、最近気になっていたところで、
実際に新製品について検索すると、似たような記事のブログばかりが
引っかかることが何度かあった。
あちこちの個人ブログに商品名のキーワードが掲載されると、
結果として、テクノラティなどのランキングの上位に商品名が登場する。
この手法を使ったわけでもないと思うが、先日、ある商品の宣伝で、
ブログランキングで上位になったグラフを誇らしげに掲載していた。
本来であれば、ブログランキング上位=クチコミ人気が高いことの証明
になるはずだが、一足飛びにブログランキング上位だけで宣伝材料になり、
それを機械的に操作しようとするマーケティングも生まれてきている、ということだ。

討論会なので、意見がひとつに収束したり、結論が出ているわけでもなく、
もともとジャーナリスティックな意識が強い人たちの意見なので、
多少、バイアスがかかってる感じもある。
(そして、ちょっとマスメディア的な上から視線も感じる。
というか、この本のタイトルと表紙って、
評論的なものに興味がある人以外に売る気あるとも思えない。)
それでも、いろいろ示唆に富んでいて一考の価値はある本。

◆読書メモ

「誰でもジャーナリズム的な行動はできるし、
ジャーナリズムに関わることができる。それに、
たとえば読者が5人しかいないとしても、受け手側がその情報を
有用だと思っていれば、それはジャーナリズムだと思う」
(ダン・ギルモアの言葉)

「国民国家というものが、国民に対して、ある種の統一した振る舞いや
考え方を知らせ、行動させたいという意志があったから成り立った。
要は、国民の統一した意識を作り出すためにジャーナリズムの需要が出現し、
大きくなったわけです。」(川上慎市郎)

「書き手・送り手の側がアーキテクチャを利用するという手もあります。
僕はフリーで原稿を書いていますが、知名度だけが勝負の世界なので、
いかに検索エンジンに自分の名前がたくさんヒットするかということを、
毎日考えながらやっているわけです。
たとえば、見出しです。ウェブの記事では、見出しにものすごく注意を払って書いて、
そこでSEOがきちんと行なわれるようにします。」(佐々木俊尚)

「産経新聞のサイト「イザ!」立ち上げに関わった人が、「新聞で読まれるものと
ネットで読まれるものは全く違うので驚いた」と書いていました。
「拉致問題とか靖国みたいなものが読まれるのかと思ったら、
全然読まれない」というのです。おそらく産経は「イザ!」を発足させたときに、
ネットが右傾化しているというので、自分たちのスタンスが支持されると
想定していた。でも、現実にはお色気や雑学記事ばかりが読まれまくった。」
(藤代裕之)

「ヤフーのニュースでは、実は、“クリックさせるための見出し”は
作っていないのです。トップページのニュースの見出しは最大13文字で、
クリックしなくても、なるべく内容がわかるようにしています。
読者を釣るような、あざとい見出しにはなるべくしない。」
(祝前伸光)

「ヤフー・ニュースは今、ヤフー全体PV(ページビュー)の10%ぐらいです。
10%というと、相当大きなボリュームです。
ヤフーのサービスは100個以上ありますが、一番大きいのはたぶん
ヤフー・オークションで、ヤフーニュースはそれに次ぐ規模です。
つまり、ヤフー・ジャパンにとって、ニュースはものすごく大きい存在なのです。」
(祝前伸光)

「イギリス人プログラマーがグーグルニュース用のRSSフィードを作ったら、
セルゲイ・ブリンとラリー・ページは<停止命令>の文書を送り付けた。
皮肉なことに、そこには『グーグルニュースの見出しを
他のサイトで見せることは容認できない』とあった」
(アダム・ペネンバーグによる『ワイアード』の記事)

「分極化については、経営コンサルタントのバルディス・クレブスが、
ソーシャルネットワーク解析ツールを使い、オンライン書店での
政治関連書籍の傾向をマップ化したものも、よく知られている
(“Divided We Stand... Still”)。このマップでは、
保守層とリベラル層の購買傾向が、見事に分断されている。」
(平和博)

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