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『そんなんじゃクチコミしないよ。』

そんなんじゃクチコミしないよ。 <ネットだけでブームは作れない!新ネットマーケティング読本>

最近、『謎の会社、世界を変える。 エニグモの挑戦』を読んだのですが、
エニグモの創業者たちは、まあなんて前向きなんだ、と思うくらい、
「『バイマ』のサービスが始まったら世界が変わる」みたいなことを言ってるんですが、
正直なところ、私は『バイマ』や『プレスブログ』が世界を変えたとはとても思えなくて、
この本が今どきのITベンチャーを描いているという点ではおもしろいと感じましたが、
エニグモという会社がやってることは、それほど斬新さを感じないのです。

ブロガーに企業からリリース情報を流して、記事を書いてもらったら報酬を与えるという
『プレスブログ』のサービスが始まったとき、「これはブログ記事を
お金で買うことになるんじゃないの?」と多少違和感を感じました。
で、その違和感は『プレスブログ』同様のサービスが増加していくとともに大きくなって
たとえば、ある新製品について検索したところ、
リリースの孫引きみたいなブログばかりが引っかかって
実際にその製品を買って使用した感想がほとんど見つからなかったとき、
メーカーの広報担当が「この製品は話題のキーワードランキングで何位になった」と
嬉しそうに話すとき、「今やブログは広告として使われている」ことを感じるわけです。

この本の著者が危惧してることもそれで、
「ネットクチコミとかブログマーケティングなんて嘘。
ブロガーに報酬を払って記事を書いてもらうサービスはいまやスパムと化している。
これは企業とブロガーの関係を悪くするだけで、
マーケティングの原点を問い直すべき」というのが主なポイント。

私自身はネットだから起こるクチコミっていうのは確かにあると思っていて、
クチコミが発生するところと波及するところ、クチコミの内容がうまく合えば
ネットクチコミで大ヒットというのはあながちまちがいでもないと思うのですが、
それを企業が金で買うことはできないし、広告のあり方としても効果がない
(ターゲットとなる消費者にちゃんと届かない、購買に結びつかない)
ってのは納得。

この本のマイナスポイントを上げるとすると、
『そんなんじゃクチコミしないよ。』というラフなタイトルからも感じられるとおり、
ブログをまとめた本なのですが、全編、このラフな書き方なので、
読みやすいぶん、その口調に「友だちじゃないんだから」みたいな気分にもなる。
それから、ブログ記事のURLがたくさん載っているんですが、
これがネットならクリックして参照するかもしれないけど、
本の場合、このURLをわざわざ打ち込んで元記事を読むってほとんどしないよね。
書籍化する段階で、元記事の要約なり、なんなりをもっと載せてもよかったのでは。


◆読書メモ
・クチコミは意図的に起こせない。あくまで結果論に過ぎない。
・ネットの力でヒットしたと言われる『時かけ』の興行収益は2.6億円。
 この程度のヒットなら『アメリ』をはじめ、過去にいくつかある。
 同時期に公開され、批判の多かった『ゲド戦記』の興行収益は76億円。
 ネットのクチコミでバカ売れするなんてありえない。
・企業ブログが炎上しても、それで商品が売れなくなることはない。
 影響が出るとしたら、マスメディアがニュースとして取り上げたとき。
・ネットで話題になったとされるナイキの『Nike Cosplay』でさえ、
 世間の大半の人は知らない。ナイキの売上げに貢献したかどうかも不明。
・テレビCMの効果は10年前と大差なく、崩壊なんかしていない。
「○○を検索」なんて画面に出さなくても、気になる人はCMを見て検索する。
・ブロガーはその商品が本当に好きなら、報酬がなくても紹介する。
 逆に、報酬がなければ書かないという人は企業にとって必要な顧客ではない。
 ブロガーと企業の関係を「広告」でつなぐべきではない。
・ワードサラダ-複数の単語を適当に組み合わせた文章をつくり、
 検索エンジンをだます手法。スパムの一種。
・ネットが日常的な人もいれば非日常な人もいる。
 ネットを使いこなしている人は「一般大衆」ではない。
 ネット環境の普及率は上がったけど、利用率はまだこれから。
 マーケティング関係者はそこを冷静に見るべき。
・CGMはほとんどが二次情報。
 ブログの書き込みの元ネタは4マス(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)。
 広報はブロガーの入手する一次情報のありかを見据えてアプローチすることが必要。
・『伝染歌』のトイレットペーパープロモーションは話題になったけど、
 話題になったことで興行成績に影響したのか。
 このプロモーションのゴールはパルコのトイレに人を集めることではなく、
 映画館に足を運んでもらうことにあるはず。
・企業はCGMを構成する人々を「消費者」ではなく、「パートナー」ととらえ、
 製品開発やブランディングにおいて、彼らとコミュニケーションすべき。

謎の会社、世界を変える。―エニグモの挑戦
『謎の会社、世界を変える。 エニグモの挑戦』
博報堂社員だった若者2人が、『バイマ』のアイデアを思いついて、
会社を辞めて起業し、『プレスブログ』などのサービスを軌道の載せていくまでを
当事者たちが、生き生きと語っている。
アマゾンには「楽しそうに仕事をしているのが伝わってくる」
と好意的な感想が多く、売れているみたい。
たしかに、アイデアを思いついてポンと起業しちゃう
彼らのフットワークの軽さが、いまどきのITベンチャーの姿なんだろうけど、
その楽天的で爽やかな感じに、私はどうもついていけないのだ。

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