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『オタクはすでに死んでいる』

オタクはすでに死んでいる (新潮新書 258)
『オタクはすでに死んでいる』
著/岡田斗司夫
新潮新書

オタキング岡田斗司夫による最新のオタク論。
かつてオタクたちが持っていた共通意識、一体感のようなものが
いまや失われてしまった。
SF文化が滅んだように、オタク文化も崩壊しようとしている。
というのが基本的な主張。

この本の分類で行くと、私は第二世代にあたるわけで、
オタクが世間から差別されてきた世代。
実際、私が中学生の頃は、「アニメが好き、マンガが好き」と公言すれば
「暗い」と言われかねなかった。まだオタクという言葉はなかったけど、
アニメ好きの友達は「お宅は~」という呼び方をしていて、
「本当にこういう人たちってこういう呼び方をするんだ」と思った。
(ここで友達を「こういう人たち」って括って、
私は違うと主張しようとするところに、すでに差別意識があるよね)
それが、ひと世代下になると、アニメやマンガが好きだということや、
コスプレすることに、それほど抵抗がない、ように見える。
(まあ、私の会社が変わっているというのもあるけど)

『ハルヒ』や『らきすた』はともかく、
『デスノート』レベルの人気作品だったら、たぶん一般の会社でも
話題にできるだろう。まるで一億総オタク化したみたいで、
あれ、いつの間にこんなことになってるんだろう、
というのは私も思っていたことで、その一方で、
アキバにいて、美少女フィギュアを買って、ダサい格好で
AKB48みたいなアイドルを追っかける“萌え”なオタク像というのが、
いまだメディアでは強調されている。(TBSの初音ミク報道が典型的。)

第一世代である岡田氏の「オタクってもっと知的なものだった。
自分の趣味を自分で選び取った矜持みたいなものがあった。
ミリタリー好きもアニメ好きもSF好きも、好きなものは違っても
同じオタク大陸に住んでいるという共通認識があった。
SFオタクを名のるなら、自分の好きな作家でなくても
1000冊は読んでるべきであり、周辺の趣味についても
ある程度知っているのが常識だった。でももうそれは失われてしまった」
という叫びにも似た主張は、胸に響くものがある。

著者の言うところの「“オタク文化”が失われてしまった」、
「オタクは死んだ」というのが本当なのかどうなのか、
私にはいまひとつわからないところではありますが、
“萌え”で語られてしまいがちな昨今のオタク像や
オタクの歴史的分析、SFとの比較など、非常におもしろかったです。


◆読書メモ

・単に無口で地味なだけ、モテないだけで「おたく」と呼ばれるのは
可哀そうな話です。実際、そういう人もいっぱいいました。
当初、「おたく」というのは差別意識から生まれたグルーピングだったのです。

・何が好きかというのは表面の第一層にすぎない。その底の層に、
全員共通している何かがある。それが何かといえば、
「自分の好きなものは自分で決める」という強烈な意志と知性の表れだと
考えています。私がオタクと言うときには、この意味で使っていたわけです。

・1972年末、南沙織が『少年マガジン』の表紙になった。
『少年ジャンプ』以外のすべての少年マンガ誌、少年週刊誌は
アイドルの写真が表紙になった。
雑誌の売り上げを左右するのはマンガの品質ではなかった。
15、6歳の水着の女の子がグラビアに出るか出ないかで
売り上げが変わってしまう。1980年代あたりから、
日本は美少女好き、もしくは女の子が好きになっていった。
アニメにも変化の波が押し寄せ、性的なものが前面に出てくる。

・「やおい」や「ボーイズ・ラブ」というのは世間で思われているような
「ホモの男性が好き」というのとは少し違う。
「女という雑音(!)が入らない純粋な恋愛=やおい」
と考えている女オタクは多い。
なので「自分にとってのオタクを考える=自分の恋愛観を検証する」
ということにもなってしまう。女子のオタクやっている人というのは、
ちょっとものを考えると、すぐに自分のアイデンティティー問題になる。

・『電車男』以降、爆発的に人数が増え、オタク市場が何十億円、
何百億円と騒がれた。それは、一種の盛大な葬式みたいなものだったのです。

・トンカムというフランスの出版社社長と会食したときに、
「日本にはお小遣いがあるから、オタク文化が根付いた」と指摘されました。
ヨーロッパやアメリカなどでは、子供にお金というパワーを不用意に
与えるようなことはしない。ヨーロッパやアメリカの子供は、
お小遣いがもらえない。欲しいものはプレゼントでもらうしかなく、
大人が同意したもの=よい子向けの商品しか買ってもらえない。
日本では子供にお小遣いをあげるのは常識です。
かなり幼い頃から「自分の趣味に対する自己決定権」を持っている。
欧米人から見ればこの習慣は「まだ理性の弱い子供の害になる」
と受け取られます。

『携帯電話のデザインロジック』

携帯電話のデザインロジック―電話を超えた万能ツールはどのようにデザインされるのか?
『携帯電話のデザインロジック
電話を超えた万能ツールはどのようにデザインされるのか?』

編著/カラーズ
誠文堂新光社

◆読書メモ

・日本の携帯電話は春、夏、秋、冬、4シーズン展開するが、
世界の標準では「信じられない」。

「あんなに小さなキーを押して長いメールの文章をやりとりする
などということは誰も想像できなかったと思います。
携帯情報機器の進化は人間が持ち合わせた機能やセンサーの優秀さや
精密さをあらためて人間に教えてくれます。予想もできなかった人間の
隠された力や機能がこのような電子機器によって露になるということがいえます。
これからの驚きは、機械の進化ではなく、
それを使いこなす人間の機能に気づくことだと思います。」
(深澤直人)

『マイクロトレンド』

マイクロトレンド
『マイクロトレンド 世の中を動かす1%の人びと』

著/マーク・J・ペン、E・キニー・ザレスン
監修/三浦展
NHK出版

選択肢が氾濫する現在、誰もが夢中になるような
巨大な影響力を持つトレンド(メガトレンド)などもはや存在しない。
全人口の1%にしかならない個性的なグループ“マイクロトレンド”が
社会に大きな影響力を及ぼす力となる。統計によって
マイクロトレンドを分析することで、社会動向が見えてくる。
として、41のマイクロトレンドグループを分析している本。

グループには、「10歳以上年下の男性とつきあっている女性」とか、
「子育てに積極的な父親」、「プチ整形マニア」、「社交的ギーク」など、
なるほどと思うものもあったり、「子供のベジタリアン」とか、
「学校に行かず自宅で教育を受けるホームスクール」など、アメリカっぽいものも。
(原著では70グループが紹介されており、
極端に日本と違う例は翻訳から外されているらしい。)

わりと受けたのが「DIY Doctors(素人医師)」。
「自分で自分の症状を調べ、病気を診断し、治療する人々。
医療系ウェブサイトで自己診断して、病状がフルカラーで印刷されたものを手に
病院を訪れる」人たちのことなのだが、自分で診断こそしないものの、
医者に行く前にネットで調べて、医者の説明から質問事項まで
わかった気になっている、ってのは私にも当てはまるよなー。
(医者は忙しいので、その場で全部説明してくれる訳じゃないから、
基礎知識ぐらいつけておかないと、「何か聞きたいことはありますか?」
と言われても、質問もできなかったりするからなんだけど。
たしかにネットで中途半端な情報だけ仕入れて、
「私は○○なんだけど、これって○○ですか?」と
教えてgooとか2ちゃんで質問している人っていっぱいいるんだよね。
心配ならさっさと医者に行けと言いたい。)

グループそれぞれには納得できるものも、そうでないものもあるけど、
もうメガトレンドの時代じゃなくて、マイクロトレンドが世の中を変えるんだよ
というのは、その通りだと思う。


◆読書メモ

・最もマイクロなマイクロトレンドとは、自分という個人の中のトレンドであろう。
だとしたら、まず自分の日常生活における意識や行動の小さな変化に対して
自覚的であることが、マイクロトレンドを発見するいちばんの早道であるに違いない。

・クーガー
かなり年下の男性とつきあう女性のこと。

・2007年、ウォールマートは、マーケティング部門の上級幹部同士である
上司と部下が関係を持っていることがわかると、この2人を解雇した。
これによって同社の広報は、カップルの私的メールを同社サイトの
トップページに掲載した。

・人種的マイノリティや宗教的に少数派の人々が
自分と同じ民族や宗教の相手を探すのも簡単だ。
EligibleGreeks.comやEthiopianPersonals.com、Muslima.comなど
マイノリティ向けのデート相手紹介サイトがある。

・LGBT
L レズビアン、G ゲイ、B バイセクシャル、T トランスジェンダー

・アメリカの14のカレッジや大学では、入学願書に「男性」「女性」
「自らの性認識」のどれかにチェックを入れることができるようにしている。

・ユニセクシャルは、「生物学が運命を決めるのではない」という
フェミニストの革命的な信条を、イデオロギー的に受け継ぐ可能性を持っている。

・2004年、イギリスでは親が子供を叩く権利を認める法案を通過させた。

・娘の道(Daughter Track)
専門職に就いていても親を介護するために休職する女性。
20年前には子育てのために休職する女性を
「母の道」(Mommy Track)と呼んだことに掛けている。

・イギリスの平均通勤時間は45分、欧州連合全体では38分、
イタリアでは23分、ドイツでは44分。アメリカは25分。

・トレップ
アントレプレナー(起業家)の短縮語。

・インターネットの父として広く知られるヴィントン・サーフは、
ほかの研究者とうまく会話ができないため(彼も多少耳が悪かった)、
あるいはろうあ者の妻と会話ができないイライラから、
電子通信(のちの電子メール)を開発したといわれている。

・子供であれば聞き取れる高周波音を、40代や50代以上の多くはすでに
聞き取れなくなっている(そのため、「モスキート」リングトーンと呼ばれるこの音を、
学生は授業中の携帯電話の着信音に利用している)。

・ペスカン(ベジタリアンの内、魚だけは食べる)
ヴィーガン(卵、牛乳、チーズ、蜂蜜も含む動物由来の食材をすべて避ける)

・音声補正機能つきテレビ会議システムが開発当時、
女性の声の周波数域が想定されていなかったのは有名な話だ。
文字通り、このカメラは女性の声を聞き取れなかったのである。

・編み物の流行は9.11以降に起こった、外出を控えて家の中で過ごすことを
好む「ネスティング」というトレンドの一環だといわれる。

・2006年の調査によると、インターネットポルノによる収入は
ABCテレビ、CBS放送、NBCテレビの3社の収入を足した額の2倍近くであった。
400万を超えるアダルトサイトが存在し、全体の12パーセントを占める。
検索エンジンで検索される言葉の4分の1がポルノに関する言葉だ。
アダルトサイトのアクセス数は、グーグル、ヤフー、MSNへのアクセス数の
合計の3倍以上である。

『アーティスト症候群』

アーティスト症候群―アートと職人、クリエイターと芸能人
『アーティスト症候群 アートと職人、クリエイターと芸能人』
著 大野左紀子
明治書院

本来、絵画の芸術家を指していたはずの「アーティスト」という言葉は、
いつの間にか浜崎あゆみからヘアメイク、ガーリーフォトまで、
誰でも彼でもアーティストと呼ばれるようになった。
そこには「アーティストと呼ばれたい」という願望があり、
「アーティスト」という言葉に込められた付加価値がある。
でも、本当の「アーティスト」って、「アート」って何だったんだろう、という本。

ねーさんから借りた本。おもしろかった。
特に、工藤静香、FUMIYART、石井竜也など
芸能人アーティストの作品分析が秀逸。
画家としての片岡鶴太郎に「過去と訣別したかった男の焦心と小心を見る」
という文は、そうそう!よく言ってくれた!という感じ。
誰もが感じているだろう芸能人アーティストへの違和感を、うまく言葉にしている。
それぞれの作品も冷静かつ客観的に評価していて、
批評していながら、意地悪な感じがないのもいい。

著者自身、芸大を卒業し、30年間、アーティストとして活動していた経験があり、
現在のアーティスト飽和状態の中で、
本来の“アート”が置き去りにされていることに疑問を感じていたのだろう。
後半は、彼女がいかにアーティストになって、いかにアーティストを辞めたか
という話なのだが、ここらへんはちょっと個人的かつ観念的すぎて
ついていけないところも。
文章は非常に読みやすくてわかりやすいので、著者が文筆業に転向した(?)
のはまちがいじゃないと思うのだが、著者の言うところの“アート”は、
言葉ではなく、やはりアートでしか伝えられないものなのだと思う。


◆読書メモ

・本田美奈子は「アイドルじゃなくて、アーティストと呼ばれたい」と発言。
それを聞いた松任谷由実は、「彼女がアーティストなら、私は神だ」
と言い放ったという。

・個性的だと言われる彼女達(浜崎あゆみ、倖田來未) のファッションやイメージを
辿っていくと、どうしても全盛期のマドンナに行き着く。日本の女性アイドルは
オリジナリティを出そうと張り切れば張り切るほど、マドンナの呪縛から逃れられない。

・ビル・ゲイツやロックフェラーの邸宅は、日本建築の方法で建てられている。

・小林秀雄の「美しい「花」がある、「花」の美しさといふ様なものはない」は、
「美」は定義できないものであることを示す言葉として有名だ。

・東京にいたのは、芸大の作曲科を出た坂本龍一がYMOを結成し、
東急ハンズ渋谷店がオープンする前年の77年から82年の春まで。
パルコの広告のイラストを山口はるみが描き、浅葉克己がアートディレクションをし、
糸井重里がコピーを書いて話題になっていた頃だ。
その広告戦略は「パルコ文化」と呼ばれていた。

・1週間に2回は、西武美術館と同じフロアにあった
アート関係書籍専門店「アールウィヴァン」に通っていた。
下の階のスタジオ2000では時々実験フィルムや文化講演の企画があって、
いかにも「コンテンポラリー」な感じの「黒づくめの人々」が来ていた。
それはまるで80年代初頭のトンがった文化に集まる黒い虫のようだった。

・十代のころ知っていた美術は、平原を大きく蛇行していく
大河のようなものだったと思う。それは悠々と海に向かって流れている。
実際に出会ったのは、地下水路だった。地下にある細い水路が次々と合流し、
徐々に太くなり勢いを増していく。その最終地点は、高い山の中腹にできた
亀裂のように「外の世界」に向かって突然ぽっかりと開かれており、
水路の水はそこから大きな滝となって水しぶきを上げながらどうどうと落ちている。
私もその水の一滴となって落ちて行き、はるか下にある巨大な固い岩盤に
小さい穴を穿つのだ。そんな妄想で頭の中をいっぱいにしていた。

・料理人から大工まで、陶芸家から映画監督まで、
自分の作ったものを人々に提供する者は、こう味わってほしい、
ここを見てほしい、これを楽しんでほしい、これについて考えてほしい
という願いや意図をもっているものだ。それが伝わらなくては、
他にどんな面白い解釈をされても、作り手は浮かばれない。


『ケータイ小説活字革命論』

ケータイ小説活字革命論―新世代へのマーケティング術 (角川SSC新書 37)
『ケータイ小説活字革命論 新世代へのマーケティング術』
著/伊東寿朗
角川SSC新書

魔法のiらんどで、『天使のくれたもの』、『恋空』の書籍化に携わった著者が
ケータイ小説のムーブメントについて語った本。

読む側としては当然、こんなプロモーションやこんな苦労をして、
ケータイ小説の大ヒットに結びつけた、という戦略的、ビジネス的な話を
期待するわけだが、著者はあっさりと「ケータイ小説の大ヒットは
仕掛けられたものではない」と言い切る。
そこには「自分のために書いた」著者がいて、著者を支えた読者がいて、
自然発生的な口コミがケータイ小説全体のプロモーションとなり、
書籍化、映画化というビジネスの拡大に結びついたのだという。
(『Deep Love』は、作者Yoshiが女子高生、ケータイ、渋谷をキーワードに、
戦略的に書かれたもので、現在のケータイ小説とは意味が異なるが、
『Deep Love』の大ヒットが、ケータイで小説を読む習慣や
その後のケータイ作家を生み出したという。)

私は、『恋空』をPCで途中(ミカが流産したところ)まで読んで挫折して、
その後、ケータイで再チャレンジして挫折して(ヒロと別れたところ)、
今にいたっているので(まだ半分終わってない)、
「ケータイ小説なんて、波乱万丈な人生でストーリーをひっぱって、
恋人の死で泣かせる程度のもんだろう」ぐらいの認識しかないわけですが、
著者は、「修行だと思って、1冊読んでみてほしい」という。
実話ベースというのも私はかなり懐疑的だったのですが、
(レイプされて妊娠して流産してって話が続けば、
どこからどこまで実話だよという気にもなるのです)
『天使のくれたもの』も『恋空』も、恋人の死を乗り越えようと、
著者たちは「自分のために」小説を書いたという。
時にはユーザーの中傷によって、サイトの更新をやめたりするものの、
ほかのユーザーたちの「続けて欲しい」という声に押されて書き続けた
作家も多いらしい。
そして、実際にケータイ小説によって救われている読者も大勢いるのだと。

ケータイ小説をビジネスとして見る現在の動きは、供給過剰で、
読者を置き去りにしているのでは、という懸念もあるが、
若者たちの生み出したカルチャーとして
ケータイ小説をちゃんととらえてほしいと力説する。

全体を通して、著者の個人的な想いがたらたらと書かれているので、
ケータイ小説がどのように生まれ、どのように書籍化され、
大ヒットになったかという具体的な流れはあまり見えてこないし、
ビジネス本としてはたぶんまったく役に立たない。
しかし、せめて1冊ちゃんと読んでみようかという気にさせる程度に
著者の想いが届く本ではある。

◆読書メモ

・魔法のiらんどは、システム会社ティー・オー・エスの谷井玲氏が
家族で中華料理店に行ったとき、息子がケータイでチャットをしているのを見て、
ケータイを使ったコミュニケーションサービスを始めようと考え、
ケータイでホームページがもてるサービスを開始した。
サービス開始当初は、担当者の足元にサーバーが置かれていた。

・出版社の人間から「本当に売れてるんですか」とよく聞かれたが、
彼らがチェックするPOSデータは、都市部の大手書店のデータを中心としており、
そこにはケータイ小説が売れているという結果は現われにくかった。
『Deep Love』の経験値から、スターツ出版は『天使のくれたもの』を
地方都市などに効果的に商品を投入した。

・『天使のくれたもの』は編集部に泣きながら電話をしてきた女性がいて、
それがきっかけで書籍化された。

・「インターネットの仮想空間でのコンテンツとリアルマーケットを連動する試み」
という謳い文句をインターネットの歴史の中で、しばしば聞いたが、
僕は「また言ってらぁ……」と、鼻で笑う気持ちをよく押し殺したものである。
しかし気づくと、“インターネットの仮想空間でのコンテンツとリアルマーケットを連動”
が、ケータイ小説の世界では、すでにできあがっているではないか。
しかも、誰かが無理やり「仕掛ける」わけでもなく、ユーザーのニーズから
自然発生的に生まれてきているから、これほど強力なものはないのである。

・『恋空』の美嘉さんは、上下巻合計約700ページに及ぶ大作をケータイで、
しかもほとんど右手の親指だけを使って、1ヵ月で書き上げたという。


『グーグルが日本を破壊する』

グーグルが日本を破壊する (PHP新書 518) (PHP新書 518)
『グーグルが日本を破壊する』
著/竹内一正
PHP新書

グーグルの台頭によって社会はどう変わるのか。
テレビ、CM業界、携帯電話、新聞、マイクロソフト、
はてはグーグルが掲げる理想像から次世代の検索エンジンまで論じた本。

全体的な感想を言うと、「視点は悪くないのだが、論点がなっちゃいない」
という感じ。
たとえば、「ヤフーはなぜ日本ではグーグルに勝っているのか」という話で
「ヤフージャパンの筆頭株主はヤフー本社ではなくソフトバンクで、
日本の利用者のニーズを優先させたから」と説明されているのだが、
全然、納得できない。そもそもヤフージャパンだってかなりヤバいでしょ。

また、「次世代の検索技術や、コンピューターの新しいアーキテクチャーが誕生したら、
ページランクに最適化されたグーグルの巨大なデータセンターの上で、
次世代技術が、最適かつ最速で走る保証はどこにもなく、
グーグルの巨大なデータセンターはお荷物になるだけ」
としているのだが、そんなわけないだろ。
グーグルの検索をいまだにページランクだけで語るのが無理がある。

そのほか、ヤマ場CMとかグーグル八分とか中国における検閲とか
今さらな話題で、グーグル脅威論としても弱すぎる。
ネット広告がテレビCMや新聞を駆逐するって話はもういいでしょ。
(ひとつ思ったのは、グーグルの成功も新聞の低迷もすべて広告費が
握っているのはなぜなのか、ということ。
広告以外の収入がなく、新聞のような“文化的情報”も
広告に左右されてしまうシステム自体に問題があるのでは。)

米国で始まっているGoogle TV Adsや
「グーグルが米国の700メガヘルツ帯域の競売に参加した」話には
興味があるのだが、それがどんな影響を与えていて、どんな意味があるのか
さっぱりわからなかった。


◆読書メモ

・「グーグルは与え、グーグルは奪い去る」
(『ザ・サーチ』に出てくる題名)

・グーグルCEOエリック・シュミットは、2007年株主総会前の記者懇談会で、
会社最大の危機について「われわれがあまりにも早く成長を続けていること」
と語っている。

・フォールト・トレラント(Fault-Tolerant)
個々に問題が起きても、全体のシステムとしては問題なく動く。
従来、フォールト・トレラントは、ハードウェアで実現するのが常識だった。
グーグルはこれをソフトウェアに切り替えることで、一般的なパソコンを使いながら
膨大な処理能力を低価格で実現させた。

・米国トヨタは2006年、NBCと「CMが視聴者の関心を惹かなかった場合、
埋め合わせに無料のCMを放映する」というCM契約を結んだ。

・携帯電話でネットを利用する日本は、むしろ例外的。
米国ではモバイルユーザーの6分の1しかインターネットを利用していない。

・USAトゥデーなどを傘下にもつ新聞チェーン・ガネット社は
ペーパー新聞とネット新聞の編集体制を一元化。
傘下89紙の編集局を統合し、24時間体制で活動する体制に変えた。

・ビル・グロスは13歳で最初の会社をつくり、カリフォルニア工科大学在学中に
ソフト開発会社をつくり、1996年にアイデアラボを設立、イートイズなどを生み出す。
1997年にゴートゥー・ドットコム(のちのオーバーチュア)で、
検索と金儲けを結びつける検索連動型広告を思いつく。

『宮大工の人育て』

宮大工の人育て (祥伝社新書 (104))
『宮大工の人育て 木も人も「癖」があるから面白い』
著/菊池恭二
祥伝社

◆読書メモ

・もはや日本には樹齢千年、二千年の檜は存在しない。
薬師寺の金堂、西塔の再建には台湾の檜が使われた。
檜は日本と台湾だけに分布する樹種で、同じ緯度であっても
中国にも米国にも存在しない。
自然林の北限は福島県あたり、南限は台湾中央部に連なる阿利山。
阿利山は台湾最高峰の玉山の北西部に連なる山々の総称。
玉山の日本統治時代の名称は「ニイタカヤマノボレ」の新高山。

・檜の寿命は樹齢と同程度とされ、樹齢二千年の檜なら、
伐採してから二千年は持つといわれる。
法隆寺はちゃんと手入れを続ければ、あと千年は持つ。

・韓国は植生分布の関係で松の木がよくとれる。
古い宮殿のような文化財をみても松の建築が多い。

『宇宙旅行はエレベーターで』

宇宙旅行はエレベーターで
『宇宙旅行はエレベーターで』
著/ブラッドリー・C・エドワーズ、フィリップ・レーガン
ランダムハウス講談社

大気圏から地球に向かって10万キロメートルのケーブルを垂らし、
ケーブルを伝って宇宙空間へ乗り物を上昇させる
“宇宙エレベーター”構想について解説した本。
著者はロス・アラモスやNASAで宇宙エレベーターを研究している人物なので、
建造方法から、安全上の問題点、地球上の発着基地である“アース・ポート”の
建設候補地など、かなり具体的なところまで説明し、
宇宙エレベーターは夢物語ではなく、投資してくれる国や企業、個人があれば、
実現可能なプロジェクトであると強調している。

宇宙エレベーターはエレベーターというより、
ケーブルカーかリフトのようなイメージで、
カーボンナノチューブの発見により、ケーブルの実現が可能になったという
(カーボンナノチューブの実用にはまだ数年かかるらしいが)。
現在のロケットによる宇宙開発は、費用のほとんどが
大気圏外へ飛ばすための燃料にかかっているので、
宇宙エレベーターが実現すれば、95パーセントがカットでき、
人工衛星や宇宙旅行がずっと安く、安全に行なえるという。

著者たちは、この本で投資家を真剣に募集しているようで、
アメリカが中国に先を越されたときの経済的損失や
最初に実現させたものが宇宙開発の富を独占することを強調。
投資可能な企業や個人のリストアップまで勝手にしている。

後半のステーションへの旅行を描いた部分には夢があり、
可能ならちょっと宇宙へ行ってみたい気分にもなる。
早ければ(投資してくれるところがあって、プロジェクトが開始されれば)
2030年には実現可能だという。はたして間にあう?

◆読書メモ

・静止軌道に到着するまでは7日間、
ペントハウス・ステーションまでは、さらに5日間かかる。

・予想では、地球低軌道のツアーが2万ドル(約200万円)、
月面滞在ツアーが100万ドル(約1億円)。
現在の国際宇宙ステーションへの旅行費
4000万ドル(40億円)よりは安い。

・2004年7月号『ディスカバー』の表紙には
「Going Up(上へまいります)」という文字と
宇宙服を着てエレベーターのボタンを押している宇宙飛行士の
写真が載っている。

・筆者たちが宇宙エレベーターの実現に向けて動きだしたとき、
最初におこなった作業は、SF小説を読んで、資料としてスクラップすることだった。

・宇宙エレベーターについての講演で、
エレベーターの全長が10万キロメートルであるというと、たいていの場合、聴衆は笑う。
「つまり、10万キロメートルという長さは、人の想像を超えた数字なのである。」
ところが、つり橋の建築業者の集まりでの講演では、笑いが起こらなかった。
「つり橋の建設をおこなう人たちは、つり橋を作る際に、
実際に10万キロメートル以上のケーブルを扱っているのである。」

・宇宙には、使用済み燃料タンクの破片や、廃棄された人工衛星などの
“宇宙ゴミ(スペース・デブリ)”が分布している。
宇宙基地からは同じ軌道上にロケット打ち上げることが多いので、
ケープ・カナベラ(ケネディ宇宙センター)やバイコヌールなどの上空には
宇宙ゴミが密集している。

・ニンビー(NIMBY)症候群
「Not In My Back Yard(自分の裏庭にはあってほしくない)」
空港を利用するが、飛行機が自分の家の真上を通過することは望まない。
金属や鉱山資源は利用するが、自宅の窓から鉱山が見えることは望まない
という逆説的心理。

・年間10億ドルの投資を10年間続ける資金的余裕があれば、
民間企業が宇宙エレベーターを建造することも可能。
可能性のある企業リストには、月産10トン規模のカーボンナノチューブ製造施設を
建設した三井物産も入っている。

・中国では固定電話が十分普及しないうちに携帯電話が普及した。

「映画『アルマゲドン』や『ディープ・インパクト』を観たことがある人もいると思う。
映画としてのできばえはともかく、これらは非常に重要な問題を扱っている。」

「ほかの天体に暮らし働き、自分たちの都合でそれを動かしたりすらする
私たちの子孫を考えると、なんとも突飛なSFのようだ。
現実的になれ、と私の頭のなかで声がする。
しかし、これは現実なのだ。私たちは技術の先端におり、
不可能と決まりきった日常との中間点にいるのだ」
カール・セーガン『惑星へ』

・アーサー・C・クラークは、1979年出版の『楽園の泉』で
宇宙エレベーターを描き、本書に序文をよせている。
「この本を契機として一般の関心が高まれば、ひいては国家や
産業界にもその影響が及び、宇宙エレベーター実現に向けての動きが
加速することになるだろう。その勢いに乗って、『楽園の泉』のハリウッドにおける
映画化の話が、できるだけ早く実現するようにと願っている。」

・「宇宙エレベーターはいつ実現するのか」という質問に対して、
SF作家のアーサー・C・クラークは次のように答えている。
「宇宙エレベーターは、人々がそのアイデアを
笑いぐさにするのをやめてから、50年後に実現するだろう」
今や笑い声は聞こえなくなった。

『デジタル匠の誕生』

デジタル匠の誕生~「ものづくり日本」を再生せよ~
『デジタル匠の誕生 「ものづくり日本」を再生せよ』
著/岸宣仁
小学館

“匠の技”によって支えられてきた日本のものづくりが、
デジタル化によって大きく変わろうとしている現状をリポート。

ベテラン職人が手で加工していた作業が、デジタル化によって
若い女性でも作業が可能になった最新工場。その一方で、
デジタル化によって中国、韓国に追い上げられている日本の製造業。
技術情報が海外に流出している知的財産権の保護の問題。
などが主な内容。

文章が硬いので読むのにちょっと苦労したが、
「日本はものづくりで世界一!」では既になく、
このままでは中国、韓国に抜かれるどころか、
製造業そのものが危ないということは、なんとなくわかりました。
一時期、海外の工場に頼っていた生産拠点が、
アジアの人件費の高騰や、情報流出の懸念などから
国内に回帰しているという話もなるほど。

「匠」とか「ものづくり」とか「暗黙知」って言い方、あまり好きじゃないんだけど、
“暗黙知”を“形式知”にすることによって日本の生産効率を上げよう、
デジタル化によって次世代の職人を育成しよう、
という考えと、
最後までデジタル化できない部分にこそ日本のものづくりの価値がある
という話だと思います。

◆読書メモ

・中国の国際標準化戦略
次世代DVD規格「EVD」
無線LANの独自規格「WAPI」
(「Wi-Fi」とは互換性がなく、情報を暗号化して盗聴を防ぐ)
第3世代携帯電話の通信規格「TD-SCDMA」
標準獲得を左右する重要なポイントが人口にあるとすると、
中国が国際標準を取って市場に製品を投入すれば、
外国企業は巨大な中国市場を無視できない。

・シャープの亀山工場では、生産ラインへの入場制限を厳重にし、
社員ですら担当が違えば原則立ち入り禁止の措置が取られ、
「工場全体を見て歩けるのは社長1人のみ」と言われている。

・漆を加工する際、温度を徐々に上げていき、何時間かその状態を保っているうち、
ピークからわずかに温度が下がる瞬間がある。
ベテラン職人が「取り出すのは今」と感じるのはまさにこの瞬間で、
化学的に分析した結果、「酵素を触媒とする酸化重合反応が起きて
温度が下がる瞬間」であることが判明した。

『ぼくには数字が風景に見える』

ぼくには数字が風景に見える
『ぼくには数字が風景に見える』
著/ダニエル・タメット
講談社

サヴァン症候群で発達障害のアスペルガー症候群である著者が、
自分の生い立ちと、彼から見た数字や文字の“共感覚”について語った手記。

数学好きの父のためにアマゾンで注文したのだが、
話題になった本だけにおもしろかった。

著者のダニエル・タメットが「普通の人と違う」ということを感じながら、
積み木を積み重ねていくように一歩一歩、自立していく様子が感動的。
高校を卒業してひとりで電車に乗ったこともないのに、
彼は海外にボランティアとして旅立つ。
彼が愛するのは自分の家の部屋と図書館の静けさなのだが、
その安心できる場所から出て、自分の足で歩こうという勇気が感じられる。
また、彼の文章が几帳面な性格をよく現わしていて、
色と数字のディティールに満ち、素直でていねいで読みやすい。

また、彼の成長をささえた両親がとても良い。
たとえば、頭を上げて歩けない彼のために、
母親は「あれはなにかしら」と遠くにある垣根や建物について質問し、
歩きながらそれを見るようにうながしたので、
彼は頭を上げて歩くことができるようになったエピソードとか、
パズルの本を買い与えたり、チェス・クラブや図書館に連れて行ったり、
発達障害の子をどうやって育てたらいいのか何も知識もなく、
裕福でもない両親の努力と地道に注がれた愛情がすばらしい。

彼はサヴァン症候群という稀有な例だけど、誰でも努力や勇気をもって
人生を切り開いていくことができるのだと静かに語っている。

※原題は『Born on a Blue Day』
日本語タイトルといい、かわいいイラストの表紙といい、
講談社はこういう造りがうまいですね。

◆読書メモ

ダニエル・タメットのサイト『Optimnem』

あるとき、ぼくの累乗計算好きを知っている弟のリーが、計算機を片手に
ぼくに問題を出した。23は? 529。48は? 2304。95は? 9025。
それからリーはもっと長い式を出した。82×82×82×82は?
十秒ほど考えた。両手をしっかり握りしめ、その形と色と質感を確かめた。
45212176とぼくは答えた。弟がなにも言わなかったので、ぼくは弟を見上げた。
弟の顔がいつもと違っていた。微笑んでいた。
そのときまでリーとは親しい間柄ではなかった。
リーがぼくに微笑みかけたのを見たのはこれが初めてだった。

「誕生日はいつ?」とフランに訊かれたので、
ぼくは「1979年1月31日」と答えた。
「65歳になる日は日曜日だね」とキムが答えた。
ぼくはうなずいて、キムに誕生日を訊いた。
「1951年11月11日」とキムは答えた。
ぼくはにっこりして「その日は日曜日だ!」と言った。
キムの表情が輝き、ぼくにはふたりの心が通い合ったのがわかった。

グルフォス(「金色の滝」という意味)で一日を過ごしたことがあった。
白河に位置し、幅が32メートルにまで及ぶ巨大な白い滝が、
深さ70メートル幅2.5キロメートルの渓谷まで落ちていた。
細かな霧がひっきりなしに湿り気を帯びた大気へ巻き上がっていき、
それが89という数字を思い浮かべたときの風景とよく似ていた。

ぼくの能力は以前とまったく変わっていないのに、子どものころや思春期には
その能力のせいで同級生たちから疎まれ、孤立を深めたが、
大人になってからはその能力のおかげで人とのつながりや新しい友人ができたのだ。

甥の写真を見ると、生きることと愛することは奇跡だといつも思う。

チョコレート嚢腫

自分の病気についていろいろ書くのもどうかと思ったのですが、
女性であれば他人事ではない話だし、
私も人様のブログをずいぶん参考にしたので、公開していくことにしました。

3月に健康診断を受けたときに、
超音波エコーで「卵巣に傷がある」と言われ、
おそらく“チョコレート嚢腫”なので婦人科を受診するように言われました。
このとき、触診も内診も男性医師だったので、
「生理痛はひどくないですか」と聞かれたときも
「そんなことないです」とちょっとムっとしながら答えてしまったのですが、
チョコレート嚢腫の場合、症状として月経痛を伴うことが多いので、
この質問も理由のないものではなかったのです。
(男性医師を嫌がるのは失礼なことだと思うのですが、
婦人科の診察はただでさえストレスが大きいので、
健康診断ぐらい女性医師にしてほしいのです。)

「癌など緊急性のあるものではないので」
病院への紹介状は健康診断の結果と一緒に郵送する
ということだったので、4月までしばらく放置。
ところが、生理前に不正出血があり、怖くなったので
あわててレディースクリニックを受診しました。
チョコレート嚢腫が子宮に関する病気で、
場合によっては摘出手術が必要だということは
健康診断のときに聞いていたし、ネットでチェックもしていたので、
今、考えると、初めからレディースクリニックじゃなくて、
手術のできる病院を受診するべきなのですが、
「女性医師が選べるほうがいい」と思ってしまったのです。

レディースクリニックは、さすがに専門だけあって、
受付に入れるのは女性のみ。入口のところで番号札を渡され、
その後は、名前ではなく番号で呼ぶというプライバシーの徹底ぶり。
ここでも超音波エコーの結果、やはりチョコレート嚢腫だろうとの診断。
私の場合、右の卵巣に嚢腫があって大きさが約7cm。
子宮の直径が7cmぐらいなので、結構、大きい。
5cm以上になると手術が必要なので、血液検査とMRIを
クリニックで行なった後、病院に紹介状を書きましょうと言われました。
ここまではある程度予想していたのですが、
「子宮は不安定なものなので、チョコレート嚢腫によって捻転が起きると
七転八倒の痛みで救急車を呼んで緊急手術することになる」
と聞いて急に不安に。(茎捻転の話はネットにも書いてあったけど、
怖そうだったらから、ちゃんと読んでいなかった。)
「運動しても大丈夫ですか?」と聞くと、
「捻転は寝返りうっても起きるときは起きるので、
日常生活では何をしてもかまいません」とのこと。
(つまり捻転を防ぐ手段はないってことです)

ここでまとめておくと、
チョコレート嚢腫とは子宮内膜症の一種で、卵巣に病巣ができたために、
月経のたびに卵巣に血液がたまって袋状になったものをいいます。
(チューブ状のチョコレートに見えるからなんだけど、
このネーミング考えた人、最悪。
ほかにも“ブルーベリー斑”という呼び名もあったりして、こちらも最悪。)
通常、親指程度の大きさの卵巣が、チョコレート嚢腫になると、
小さい場合で3cm、大きくなると5cm~8cm、10cm以上という人もいる。
良性の腫瘍なので、命に関わることはないものの、
月経痛、性交痛、不妊症の原因になり、ほっておくと悪化したり、
破裂の危険があるので、小さい場合はホルモン剤治療、
5cm以上になると手術して摘出します。
症状によっては卵巣や子宮の摘出が必要なこともあり、
患者の年齢や妊娠を望むかどうかによって治療方法を検討します。

私の場合はもともと生理は軽いほうで、
健康診断でひっかかるまで、何も自覚症状がなかったのんびりぶり。
エコーによると、私の子宮は大きめで、
子宮が大きい人は生理痛が重いらしいんだけど、
「軽いほうです」と言ったら、先生には「それはラッキーですね」と言われました。
婦人科検診って超苦手だったけど、受けとくもんですね。
特に今年は仕事が忙しかったので、健康診断の申し込み期間を過ぎてしまい、
「まあ、いいや」とほうっておいたら、人事から連絡あり、
「めんどうだな」と思いながら申し込み。
しかし、1週間前になって、仕事の都合で受診は難しそうだとわかり、
「今から日程変更してもいいですか?」と連絡して、受診日を変えてもらったのです。

レディースクリニックから帰ってから、あらためてネットをチェック。
「激しい運動は控えたほうがいい」という意見もあって、
かすみがうらマラソンを1週間後にひかえていた私は、
フルマラソンって激しい運動じゃないのか?と急に不安が増す。
で、いろいろググった結果、
「ウォーキングやストレッチはむしろ推奨されている」
「筋トレ、ベリーダンス、乗馬も医者に相談したけどOKといわれた」
といった話を発見。最終的には順天堂大学のサイトで、
「スポーツや仕事など日常生活に制限はありません」
という言葉をみつけて、やっと安心する。
(順天堂医院の婦人科のサイトは手術や薬について
パンフレットを公開しているので一読がオススメです)

しばらく悩んだ末、かすみがうらマラソンは走りましたが、
体をひねるストレッチや筋トレは正直、怖くてできない。
足がすくんで動けなくなるってこういうことかと思いました。
(しかもランニング系の筋トレって骨盤を鍛えるものばかりなんだよね)
寝返りうっても捻転すると聞いて以来、寝返りをうつのも怖い。
健康であるってすごく大切なことなんだと思い知りました。

ググっていてわかったことは、この病気で悩んでいる女性が
結構いっぱいいるってこと。(私はまったく知らなかったけど、
子宮内膜症は女性の5人に1人はかかるというポピュラーな病気だそうです)
「子宮内膜症で妊娠した人いますか?」という質問があったり、
2ちゃんのスレッドでは、
「どんなに治療が大変でも不妊にだけはなりたくない」
「ここには子宮を摘出した人もいるんだから、そんな発言はデリカシーがない」
という論争があったり。
私は症状も軽かったし、絶対子供を産みたいという意志も希薄なので、
かなりのほほんとしてましたが、デリケートな問題に関わる病気なんだと再認識。
また、自分の意志に関わらず、女性というのは“産む性”なのだと実感。
でも私たちは子供を産むために生きてるわけじゃないよね。

私みたいに急に不安になってスレッドに書き込む人も多いらしく、
「チョコレート嚢腫と言われたんですが、~は大丈夫でしょうか?」
みたいな質問がいっぱい。で、基本的に答えは
「過去ログ読んでから質問してください。
自分の病気のことなのに、どうして自分でちゃんと知ろうとしない」
というもの。それもそのとおりだと思って、翌日、本を買ってきました。

子宮内膜症 改訂新版 [専門のお医者さんが語るQ&A] (専門のお医者さんが語るQ&A 8)
『専門のお医者さんが語るQ&A 子宮内膜症 改訂新版』
著/杉並洋
保健同人社

基礎知識編とQ&A編で同じ話が何度もでてきてくどいところはありますが、
現在使われているホルモン剤の種類と副作用や
腹腔鏡下手術と開腹手術など、
症状や治療法について詳しく説明してあります。
そもそも生理や出産の仕組みって保健で習った程度の知識しかないし、
すっかり忘れてましたけど、あらためて勉強すると、
女性のサイクルって驚異的だとちょっと感動したり。
私はこの本を読んでだいぶ安心しました。
(この本でもジョギングを含め、スポーツは推奨されている)

というわけで長々書いてきましたが、言いたいことは
女性は婦人科検診を受けましょう、
あと、保険も入っておきましょう、
同じ病気の人は気長に健康な体をめざしてがんばりましょう
ってことです。

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