« 『携帯電話のデザインロジック』 | トップページ | 多摩川サイクリング »

『オタクはすでに死んでいる』

オタクはすでに死んでいる (新潮新書 258)
『オタクはすでに死んでいる』
著/岡田斗司夫
新潮新書

オタキング岡田斗司夫による最新のオタク論。
かつてオタクたちが持っていた共通意識、一体感のようなものが
いまや失われてしまった。
SF文化が滅んだように、オタク文化も崩壊しようとしている。
というのが基本的な主張。

この本の分類で行くと、私は第二世代にあたるわけで、
オタクが世間から差別されてきた世代。
実際、私が中学生の頃は、「アニメが好き、マンガが好き」と公言すれば
「暗い」と言われかねなかった。まだオタクという言葉はなかったけど、
アニメ好きの友達は「お宅は~」という呼び方をしていて、
「本当にこういう人たちってこういう呼び方をするんだ」と思った。
(ここで友達を「こういう人たち」って括って、
私は違うと主張しようとするところに、すでに差別意識があるよね)
それが、ひと世代下になると、アニメやマンガが好きだということや、
コスプレすることに、それほど抵抗がない、ように見える。
(まあ、私の会社が変わっているというのもあるけど)

『ハルヒ』や『らきすた』はともかく、
『デスノート』レベルの人気作品だったら、たぶん一般の会社でも
話題にできるだろう。まるで一億総オタク化したみたいで、
あれ、いつの間にこんなことになってるんだろう、
というのは私も思っていたことで、その一方で、
アキバにいて、美少女フィギュアを買って、ダサい格好で
AKB48みたいなアイドルを追っかける“萌え”なオタク像というのが、
いまだメディアでは強調されている。(TBSの初音ミク報道が典型的。)

第一世代である岡田氏の「オタクってもっと知的なものだった。
自分の趣味を自分で選び取った矜持みたいなものがあった。
ミリタリー好きもアニメ好きもSF好きも、好きなものは違っても
同じオタク大陸に住んでいるという共通認識があった。
SFオタクを名のるなら、自分の好きな作家でなくても
1000冊は読んでるべきであり、周辺の趣味についても
ある程度知っているのが常識だった。でももうそれは失われてしまった」
という叫びにも似た主張は、胸に響くものがある。

著者の言うところの「“オタク文化”が失われてしまった」、
「オタクは死んだ」というのが本当なのかどうなのか、
私にはいまひとつわからないところではありますが、
“萌え”で語られてしまいがちな昨今のオタク像や
オタクの歴史的分析、SFとの比較など、非常におもしろかったです。


◆読書メモ

・単に無口で地味なだけ、モテないだけで「おたく」と呼ばれるのは
可哀そうな話です。実際、そういう人もいっぱいいました。
当初、「おたく」というのは差別意識から生まれたグルーピングだったのです。

・何が好きかというのは表面の第一層にすぎない。その底の層に、
全員共通している何かがある。それが何かといえば、
「自分の好きなものは自分で決める」という強烈な意志と知性の表れだと
考えています。私がオタクと言うときには、この意味で使っていたわけです。

・1972年末、南沙織が『少年マガジン』の表紙になった。
『少年ジャンプ』以外のすべての少年マンガ誌、少年週刊誌は
アイドルの写真が表紙になった。
雑誌の売り上げを左右するのはマンガの品質ではなかった。
15、6歳の水着の女の子がグラビアに出るか出ないかで
売り上げが変わってしまう。1980年代あたりから、
日本は美少女好き、もしくは女の子が好きになっていった。
アニメにも変化の波が押し寄せ、性的なものが前面に出てくる。

・「やおい」や「ボーイズ・ラブ」というのは世間で思われているような
「ホモの男性が好き」というのとは少し違う。
「女という雑音(!)が入らない純粋な恋愛=やおい」
と考えている女オタクは多い。
なので「自分にとってのオタクを考える=自分の恋愛観を検証する」
ということにもなってしまう。女子のオタクやっている人というのは、
ちょっとものを考えると、すぐに自分のアイデンティティー問題になる。

・『電車男』以降、爆発的に人数が増え、オタク市場が何十億円、
何百億円と騒がれた。それは、一種の盛大な葬式みたいなものだったのです。

・トンカムというフランスの出版社社長と会食したときに、
「日本にはお小遣いがあるから、オタク文化が根付いた」と指摘されました。
ヨーロッパやアメリカなどでは、子供にお金というパワーを不用意に
与えるようなことはしない。ヨーロッパやアメリカの子供は、
お小遣いがもらえない。欲しいものはプレゼントでもらうしかなく、
大人が同意したもの=よい子向けの商品しか買ってもらえない。
日本では子供にお小遣いをあげるのは常識です。
かなり幼い頃から「自分の趣味に対する自己決定権」を持っている。
欧米人から見ればこの習慣は「まだ理性の弱い子供の害になる」
と受け取られます。

« 『携帯電話のデザインロジック』 | トップページ | 多摩川サイクリング »

「書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/27590/21332364

この記事へのトラックバック一覧です: 『オタクはすでに死んでいる』:

« 『携帯電話のデザインロジック』 | トップページ | 多摩川サイクリング »