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『宇宙旅行はエレベーターで』

宇宙旅行はエレベーターで
『宇宙旅行はエレベーターで』
著/ブラッドリー・C・エドワーズ、フィリップ・レーガン
ランダムハウス講談社

大気圏から地球に向かって10万キロメートルのケーブルを垂らし、
ケーブルを伝って宇宙空間へ乗り物を上昇させる
“宇宙エレベーター”構想について解説した本。
著者はロス・アラモスやNASAで宇宙エレベーターを研究している人物なので、
建造方法から、安全上の問題点、地球上の発着基地である“アース・ポート”の
建設候補地など、かなり具体的なところまで説明し、
宇宙エレベーターは夢物語ではなく、投資してくれる国や企業、個人があれば、
実現可能なプロジェクトであると強調している。

宇宙エレベーターはエレベーターというより、
ケーブルカーかリフトのようなイメージで、
カーボンナノチューブの発見により、ケーブルの実現が可能になったという
(カーボンナノチューブの実用にはまだ数年かかるらしいが)。
現在のロケットによる宇宙開発は、費用のほとんどが
大気圏外へ飛ばすための燃料にかかっているので、
宇宙エレベーターが実現すれば、95パーセントがカットでき、
人工衛星や宇宙旅行がずっと安く、安全に行なえるという。

著者たちは、この本で投資家を真剣に募集しているようで、
アメリカが中国に先を越されたときの経済的損失や
最初に実現させたものが宇宙開発の富を独占することを強調。
投資可能な企業や個人のリストアップまで勝手にしている。

後半のステーションへの旅行を描いた部分には夢があり、
可能ならちょっと宇宙へ行ってみたい気分にもなる。
早ければ(投資してくれるところがあって、プロジェクトが開始されれば)
2030年には実現可能だという。はたして間にあう?

◆読書メモ

・静止軌道に到着するまでは7日間、
ペントハウス・ステーションまでは、さらに5日間かかる。

・予想では、地球低軌道のツアーが2万ドル(約200万円)、
月面滞在ツアーが100万ドル(約1億円)。
現在の国際宇宙ステーションへの旅行費
4000万ドル(40億円)よりは安い。

・2004年7月号『ディスカバー』の表紙には
「Going Up(上へまいります)」という文字と
宇宙服を着てエレベーターのボタンを押している宇宙飛行士の
写真が載っている。

・筆者たちが宇宙エレベーターの実現に向けて動きだしたとき、
最初におこなった作業は、SF小説を読んで、資料としてスクラップすることだった。

・宇宙エレベーターについての講演で、
エレベーターの全長が10万キロメートルであるというと、たいていの場合、聴衆は笑う。
「つまり、10万キロメートルという長さは、人の想像を超えた数字なのである。」
ところが、つり橋の建築業者の集まりでの講演では、笑いが起こらなかった。
「つり橋の建設をおこなう人たちは、つり橋を作る際に、
実際に10万キロメートル以上のケーブルを扱っているのである。」

・宇宙には、使用済み燃料タンクの破片や、廃棄された人工衛星などの
“宇宙ゴミ(スペース・デブリ)”が分布している。
宇宙基地からは同じ軌道上にロケット打ち上げることが多いので、
ケープ・カナベラ(ケネディ宇宙センター)やバイコヌールなどの上空には
宇宙ゴミが密集している。

・ニンビー(NIMBY)症候群
「Not In My Back Yard(自分の裏庭にはあってほしくない)」
空港を利用するが、飛行機が自分の家の真上を通過することは望まない。
金属や鉱山資源は利用するが、自宅の窓から鉱山が見えることは望まない
という逆説的心理。

・年間10億ドルの投資を10年間続ける資金的余裕があれば、
民間企業が宇宙エレベーターを建造することも可能。
可能性のある企業リストには、月産10トン規模のカーボンナノチューブ製造施設を
建設した三井物産も入っている。

・中国では固定電話が十分普及しないうちに携帯電話が普及した。

「映画『アルマゲドン』や『ディープ・インパクト』を観たことがある人もいると思う。
映画としてのできばえはともかく、これらは非常に重要な問題を扱っている。」

「ほかの天体に暮らし働き、自分たちの都合でそれを動かしたりすらする
私たちの子孫を考えると、なんとも突飛なSFのようだ。
現実的になれ、と私の頭のなかで声がする。
しかし、これは現実なのだ。私たちは技術の先端におり、
不可能と決まりきった日常との中間点にいるのだ」
カール・セーガン『惑星へ』

・アーサー・C・クラークは、1979年出版の『楽園の泉』で
宇宙エレベーターを描き、本書に序文をよせている。
「この本を契機として一般の関心が高まれば、ひいては国家や
産業界にもその影響が及び、宇宙エレベーター実現に向けての動きが
加速することになるだろう。その勢いに乗って、『楽園の泉』のハリウッドにおける
映画化の話が、できるだけ早く実現するようにと願っている。」

・「宇宙エレベーターはいつ実現するのか」という質問に対して、
SF作家のアーサー・C・クラークは次のように答えている。
「宇宙エレベーターは、人々がそのアイデアを
笑いぐさにするのをやめてから、50年後に実現するだろう」
今や笑い声は聞こえなくなった。

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