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『ケータイ小説活字革命論』

ケータイ小説活字革命論―新世代へのマーケティング術 (角川SSC新書 37)
『ケータイ小説活字革命論 新世代へのマーケティング術』
著/伊東寿朗
角川SSC新書

魔法のiらんどで、『天使のくれたもの』、『恋空』の書籍化に携わった著者が
ケータイ小説のムーブメントについて語った本。

読む側としては当然、こんなプロモーションやこんな苦労をして、
ケータイ小説の大ヒットに結びつけた、という戦略的、ビジネス的な話を
期待するわけだが、著者はあっさりと「ケータイ小説の大ヒットは
仕掛けられたものではない」と言い切る。
そこには「自分のために書いた」著者がいて、著者を支えた読者がいて、
自然発生的な口コミがケータイ小説全体のプロモーションとなり、
書籍化、映画化というビジネスの拡大に結びついたのだという。
(『Deep Love』は、作者Yoshiが女子高生、ケータイ、渋谷をキーワードに、
戦略的に書かれたもので、現在のケータイ小説とは意味が異なるが、
『Deep Love』の大ヒットが、ケータイで小説を読む習慣や
その後のケータイ作家を生み出したという。)

私は、『恋空』をPCで途中(ミカが流産したところ)まで読んで挫折して、
その後、ケータイで再チャレンジして挫折して(ヒロと別れたところ)、
今にいたっているので(まだ半分終わってない)、
「ケータイ小説なんて、波乱万丈な人生でストーリーをひっぱって、
恋人の死で泣かせる程度のもんだろう」ぐらいの認識しかないわけですが、
著者は、「修行だと思って、1冊読んでみてほしい」という。
実話ベースというのも私はかなり懐疑的だったのですが、
(レイプされて妊娠して流産してって話が続けば、
どこからどこまで実話だよという気にもなるのです)
『天使のくれたもの』も『恋空』も、恋人の死を乗り越えようと、
著者たちは「自分のために」小説を書いたという。
時にはユーザーの中傷によって、サイトの更新をやめたりするものの、
ほかのユーザーたちの「続けて欲しい」という声に押されて書き続けた
作家も多いらしい。
そして、実際にケータイ小説によって救われている読者も大勢いるのだと。

ケータイ小説をビジネスとして見る現在の動きは、供給過剰で、
読者を置き去りにしているのでは、という懸念もあるが、
若者たちの生み出したカルチャーとして
ケータイ小説をちゃんととらえてほしいと力説する。

全体を通して、著者の個人的な想いがたらたらと書かれているので、
ケータイ小説がどのように生まれ、どのように書籍化され、
大ヒットになったかという具体的な流れはあまり見えてこないし、
ビジネス本としてはたぶんまったく役に立たない。
しかし、せめて1冊ちゃんと読んでみようかという気にさせる程度に
著者の想いが届く本ではある。

◆読書メモ

・魔法のiらんどは、システム会社ティー・オー・エスの谷井玲氏が
家族で中華料理店に行ったとき、息子がケータイでチャットをしているのを見て、
ケータイを使ったコミュニケーションサービスを始めようと考え、
ケータイでホームページがもてるサービスを開始した。
サービス開始当初は、担当者の足元にサーバーが置かれていた。

・出版社の人間から「本当に売れてるんですか」とよく聞かれたが、
彼らがチェックするPOSデータは、都市部の大手書店のデータを中心としており、
そこにはケータイ小説が売れているという結果は現われにくかった。
『Deep Love』の経験値から、スターツ出版は『天使のくれたもの』を
地方都市などに効果的に商品を投入した。

・『天使のくれたもの』は編集部に泣きながら電話をしてきた女性がいて、
それがきっかけで書籍化された。

・「インターネットの仮想空間でのコンテンツとリアルマーケットを連動する試み」
という謳い文句をインターネットの歴史の中で、しばしば聞いたが、
僕は「また言ってらぁ……」と、鼻で笑う気持ちをよく押し殺したものである。
しかし気づくと、“インターネットの仮想空間でのコンテンツとリアルマーケットを連動”
が、ケータイ小説の世界では、すでにできあがっているではないか。
しかも、誰かが無理やり「仕掛ける」わけでもなく、ユーザーのニーズから
自然発生的に生まれてきているから、これほど強力なものはないのである。

・『恋空』の美嘉さんは、上下巻合計約700ページに及ぶ大作をケータイで、
しかもほとんど右手の親指だけを使って、1ヵ月で書き上げたという。


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