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本『NYLON100%』

NYLON100% 80年代渋谷発ポップ・カルチャーの源流
『NYLON100% 80年代渋谷発ポップ・カルチャーの源流』

著/ばるぼら
アスペクト

『NYLON100%』とは、1978年~1986年まで渋谷にあったカフェ。
パンク/ニューウェイヴの拠点として、
ヒカシュー、プラスチックス、ゲルニカなどがライブを行ない、
アーティストたちが常連として通った。
本書は、当時の店長から常連アーティストたちへのインタビューを通し、
『NYLON100%』とは何だったのかを描き出す。

といっても、私はこの本に出てくる固有名詞がほとんどわからない。
聞いたことがあるのは、ヒカシュー、ゲルニカ、サエキけんぞう、
立花ハジメ、戸川純、大槻ケンヂくらい。
彼らの音楽にいたっては、ちゃんと聞いたことがあるのは、
戸川純の『パンク蛹化の女』とブライアン・イーノ程度で、
ニューウェイヴっつてもどんなの? という感じ。

そんな私でも、この本の膨大なインタビューを通して
'80年代渋谷の風景が見えてくる、ような気がする。
若者たちが集まって、何か新しいこと、かっこいいことを始めようとしていた
その熱さと、対照的にクールでキラキラしたファッションと音楽、
その中心で、人々が集まり、去って行った交差点のような場所が
カフェ『NYLON100%』だった。

私は高校が渋谷沿線だったので、80年代後半は一応、渋谷を通過してるのだが、
せいぜい東急あたりのお店をのぞいたり、部活(代々木織田フィールド)の帰りに
シェーキーズでピザ食べたり、ジェラート食べるのが贅沢だったくらいで、
この本に出てくる人々のように、オシャレしてカフェにたむろしてライブに通ったり
なんて高校生時代は過ごさなかったので、それがちょっとうらやましいなとも思う。
(当時の私がニューウェイヴにハマるとはとても思えないが)
ただ、この本を読んで、当時の渋谷の雰囲気を強烈に思い出した。
私が高校生の頃は、ニューウェイヴ的なものは、一般化されちゃってて
パルコだったり、WAVEだったり、
この本でいうポパイ文化(アメリカ西海岸)的なものは、私の場合、
109のソニプラだったり、オンサンデーズだったり。
あと、この本で「中学生がグループデートで行くような店」と言われている
公園通りのジャック&ベティ。当時、文通していた広島の女の子に
東京を案内して欲しいといわれて、連れて行ったおぼえがあります。
今考えるとずいぶん嘘っぽいアメリカン50sなんだけど、
あの頃はあれがおもしろいと思えた。
そんな風に、ブランドというか店の名前で文化が語れちゃった時代。

著者のばるぼらさんについては
『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』の人、
ぐらいのことしか知りませんが、雑誌の書評のセレクトは
いつもいいなーと思っていて、今や芥川賞作家である川上未映子さんの
『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』もこの人の書評で知ったのでした。
膨大なインタビューには、膨大なアーティストやレコードやライブの名前が
次々と登場するのだが、その話についていけるだけの音楽的知識と
おそらく綿密な下調べがあり、ひとりひとりの様々な証言から
当時の情景がだんだんと見えてくる手法がすごい。

そして、私はバンドメンバーというのはあまり変わらない方が
いいことのように思っていたのだが、この本に出てくるアーティストたちは
ぴょんぴょんとバンドをつくっては解散し、
おもしろいかなと思うとまた違うことを初めてみたり、
その柔軟性がそのまま彼らの作る音楽になってるのかなと。
音楽を作ることと、雑誌を編集すること、ライブをやること、絵を描くこと、
それぞれの境界がほとんどなく、当時バンドをやっていたメンバーが
今や編集者だったり、イラストレーターだったり、写真家だったり、
別々の分野で活躍しているのも、'80年代渋谷文化っぽいといえるのか。

◆読書メモ

「僕はペル・ウブが大好きだったんで、ペル・ウブの話とか。
メンバーのデヴィッド・トーマスに会ったことがあって、
たいへんなインテリな人で驚いたけどね。彼は音楽評論家でもあるけど、
ニューウェイヴ・ロックは文学におけるウィリアム・フォークナーの
レベルに到達したという見解を持っていたね。」
(巻上公一)

「ナイロンには一人でも行くわけで、それはなぜなら
ナイロンには似たようなやつがいたからとか、
いることを確信したからだとかがあって、
そのような確信を持った人が集まる場所というのがあるんですよね。
それは、他のジャンルにもあって、例えばコンピュータの世界なんかでも、
「あのとき、あの場所にいたよね」っていうことがあるわけだし、」
(野々村文宏)

「東京の八十年代初頭にあった空気ってのはその後どこにもないもので、
岡崎京子が『東京ガールズブラボー』で描いたことはまさにその空気なんですよ。
「八十年代はスカだった!」みたい言葉に対して「そんなことはない!」って。」
(KERA)

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