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本『潜水服は蝶の夢を見る』

潜水服は蝶の夢を見る
『潜水服は蝶の夢を見る』
著/ジャン=ドミニック・ボービー
講談社

脳出血により身体の自由を奪われ、瞼のまばたきで文字をつづり
書かれた手記。ジュリアン・シュナーベルによって映画化されました。

著者は『ELLE』編集長だっただけあって、推敲された文章は
知的で、詩を読んでいるように美しい。
“潜水服”と“蝶”という比喩がすばらしく、
体が動かないことの絶望と過去の日々への想い、
それでも生きていくことの希望が、蝶が舞うようにつづられている。
この文章が書かれたのは、彼が倒れてから6ヵ月~8ヵ月の頃なので、
いくぶん彼の決意表明に似た文章で、若干綺麗すぎるきらいはある。
恐ろしいほどの絶望や苦しみをあえてユーモアや詩的な文章で
描くことで、「僕は大丈夫だ」と伝えたいようにも見える。
逆に言えば、書くことで彼自身、いろんなものを乗り越えようとしていたのだろう。

彼の気持ちがわかるとはさすがにいえないが、
私も手術の後、酸素マスク、点滴、尿管をつけて過ごした時間は
まさに潜水服の気分だった。足元の毛布さえ自分では動かせない。
看護婦さんがやってきて、点滴を取り替えたり、傷口を見てくれるのだが、
俎板の鯉で、もう勝手にやってくれって感じで。
酸素マスクが取れるまで数時間、体が動かせるようになるまで一晩。
それはものすごく長い一晩だった。
著者が医師や看護士にあだ名をつけたり、
彼らの行動を観察している気持ちもよくわかる。
自分では何もできないわけだから、看護のていねいな人、
親切だけど作業が雑な人、クールにてきぱきこなす人、
患者からはすごくよく見えてしまうのだ。
人によってはいじわるな見方だと思うかもしれないが、
彼のユーモアにあふれた病室の描写は、
入院したことのある人なら共感できるのでは。

私程度が言うのもなんだが、生きることって本当に過酷だ。
それでも「僕は生きている」と伝えようとする文章が心を打つ。

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» mini review 08316「潜水服は蝶の夢を見る」★★★★★★★☆☆☆ [サーカスな日々]
ファッション誌「エル」の編集長として活躍する人生から一転、脳梗塞(こうそく)で左目のまぶた以外の自由が効かなくなってしまった男の実話を映画化。原作は主人公のジャン=ドミニック・ボビー自身が20万回のまばたきでつづった自伝小説。『夜になるまえに』のジュリアン・シュナーベルが監督を務めている。主人公を演じるのは『ミュンヘン』のマチュー・アマルリック。シリアスな展開の中に温かいユーモアが味わえる一方、独特の映像美も堪能できる感動の実話だ。[もっと詳しく] 「記憶」と「想像力」は、最後に僕たちに残される... [続きを読む]

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