« 東京10Kハロウィンラン | トップページ | 映画『おくりびと』 »

本『トンデモ偽史の世界』

『トンデモ偽史の世界』
著/原田実
楽工社

モアイ像は日本人が作った説、ピルトダウン人、
シオンの議定書、古朝鮮問題、ニセ天皇、邪馬台国四国山上説、
四国にソロモンの秘宝があった説、前期旧石器遺跡偽造事件、
山田長政伝説、アーサー王は実在した説、
シェイクスピアの正体はフランシス・ベーコンだった説などなど
トンデモ仮説から、個人によって偽造された遺跡まで、
その背景とともに紹介した本。

この本の一番のテーマはすでに序章に書かれており、
トンデモ仮説はそれを求める人、それを信じたいと思った人が
いるから成り立つのだということ。
たとえば、アマチュア考古学者チャールズ・ドーソンによって
偽作されたピルトダウン人の頭蓋骨は、
「人類は脳から進化した」という当時の学説によって、
偽物とは思われず歓迎された。
邪馬台国四国山上説と四国にソロモンの秘宝があったとする説に
共通するのは、地元への誇りや愛情ではなく、
「四国から目をそらせようとする何かがあるに違いない」
と考えたがった人々の強烈なコンプレックスであると著者はいう。

ユダヤ陰謀論とはアメリカの影に何かの力が働いていると
思いたがる人々が作り出すものであり、
最近の月着陸捏造説や9.11アメリカ自作自演説は、
日本の混迷をアメリカのせいにしたい願望の表れだ
という話にはなんとなく納得。

この手のトンデモ史ファンには有名な説も多いのだろうが、
私はほとんどが初めて知る話だったので、
次々登場する説や反論、元とされている歴史書の固有名詞に混乱。
著者の政治的(?)、感情的な偏りみたいなものもやや気になるが
それを差し引いても、おもしろく読める。

白眉は終章で、さらっと書かれているが、
八幡書店、オカルト雑誌『ムー』からオウム真理教が台頭した
という話は、これだけで一冊本ができる内容。
信じる人々がいれば、トンデモ説でも伝説となり、
歴史となってしまう危険性がわかる。

◆読書メモ

シェイクスピア劇から暗号を解読しようとする試みは
アメリカ、イギリスの暗号研究に貢献した。
日本外務省のパープル暗号を解読した、
ウィリアム・フレデリック・フリードマンの趣味は
暗号としてのシェイクスピア作品解読だった。
彼はシェイクスピア作品と、ベーコンを含む作者候補者たちの
文章に用いられる用語の頻度を調べ、文章の癖を数値化した。

革命と古代史、特に世界革命と超古代史は、
これらに没入する人間の自己狂信化の速度と
ストイシズムにおいて実によく似ている。
(久山信「“全世界”から“前世界”へ」)

八幡書店を主宰する武田崇元は“神国日本の復活”
というスローガンを掲げる。……かかる選民思想を内包する
国家社会主義が西武セゾンをはじめとする文化装置を通して
単なる差別ネタ大好き少年少女のたぐいをファシスト予備軍へと
感化しつつある現実は看過できない。
(久山信「霊的国家論とポップ・オカルティズム」)

« 東京10Kハロウィンラン | トップページ | 映画『おくりびと』 »

「書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/27590/24739579

この記事へのトラックバック一覧です: 本『トンデモ偽史の世界』:

« 東京10Kハロウィンラン | トップページ | 映画『おくりびと』 »