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本『プラネット・グーグル』

プラネット・グーグル
『プラネット・グーグル』
著 ランダル・ストロス
訳 吉田晋治
NHK出版

「世界中の情報を整理する」という野望に向かって、
書籍のスキャン、ユーチューブ買収、
グーグルアースからストリートビューへ、
拡大し続けるグーグルの現状を描く。

私はグーグル大好きな人なので、
急速に拡大し続ける姿は順風満帆にように見えるが
この本を読むと彼らが様々な困難を抱えていることがわかる。
グーグルはいまだに広告収入以上の収入源をもっていない。
フェイスブックへの人材流出や、ユーチューブのように
コストはかかるのに利益をあげらない事業、
グーグルが誇る検索アルゴリズムさえ
人間の叡智を取り入れる必要があるのではという声もある。

私からするとグーグルのユーチューブ買収は
「さすがグーグル、クールな買い物だ」と思っていたけど、
そこにはグーグルビデオの失敗があったという話や、
グーグルのすごさを認識させたグーグルアースは
他の会社が作ったものだという話(会社ごと買収し、
グーグルアースを開発させた)など、へーと思う話も多い。

ユーチューブの開発者がそのアイデアを
「パーティーで撮影したホームビデオを
参加者に見てもらう方法を考えた」という話は有名で
私も『ニューズウィーク』かなんかで創業者2人の写真とともに
読んだことがあるが、これはメディア向けにつくった話で、
実際にはもうひとりの創業者が映像クリップの需要に気づいた上で
ユーチューブを作っていた。ユーチューブはそもそも最初から
著作権問題を背負っていたわけだ。

「ユーチューブの元もとのアイデアは2004年12月に
思いがけない発見をした瞬間にさかのぼる。
『ワイアード』誌の記事でジュード・カリムが目にしたのは、
ジョン・スチュワートの映像クリップをオンラインで視聴した人々が
少なく見積もってもCNNで放送されたときに
スチュワートを見ていた人々の三倍もいたという事実だった。」

グーグル万歳という話ではなく、冷静に見ると
決して開放的でもなく、ビジネスがうまいわけでもなく
天才でもないグーグルの姿が見えてくる良書。

◆読書メモ

マイクロソフトとヤフーの合併について
「百ヤード競争で二位だった男と三位だった男の足を縛り、
これでもっと早く走れるだろうと考えて再び競争させるようなもの」
ダン・ライオンズ『スティーブ・ジョブズの秘密の日記』

サーベイ・ブリンは2002年にあるインタビューの中で、
収集した全情報を一つにまとめたうえに、ブリンの言葉を借りれば
「合理化する」能力に関して、(『2001年宇宙の旅』の)
HALこそが「われわれの目標だ」と答えている。
さらに「HALが宇宙船の乗組員を殺してしまったようなバグは
なくせるはずだ」とも述べている。

一説によると、フェイスブックの社員の十パーセント近くは
元グーグラー(グーグル社員)だそうだ。

単一単語の「言語モデル」を開発する統計的手法は、
あらゆる言語のスペルチェック用ソフトを開発するのにも役立った。
最近になって登場した新しい有名人の名前も含まれているうえに、
人間が編集する必要はまったくなく、辞書さえも必要ない。
発行された大量のテキストをアルゴリズムに処理させれば、
出現頻度の統計解析によって「正しい」スペルが決まってくる。

2002年にペイジとメイヤーがグーグルで書籍をスキャンする件について
話しはじめたとき、2人は書籍一冊をスキャンするのにどのくらい時間が
かかるのか試した。2人がメトロノームのリズムに合わせて
300ページの書籍のページを一ページずつめくったことは、
その後いく度となく語られている。
2人はこの実験で300ページの書籍をスキャンするのに40分かかる
というデータを得た。そこから数百万冊をスキャンするのにかかるコストを
どうにか見積もれると踏み、その額が想像の範囲内に収まると考えたのだ。

シリコングラフィックが本社を引き払うことを余儀なくされたとき、
新たなテナントがそこをグーグルプレックスに変えたのである。

グーグルマップの最初のマッシュアップを開発したのは、
ドリームワークスアニメーションのソフト開発者ポール・ラーデマカーだった。
彼はクレイグリストの住宅広告をグーグルの地図にリンクできると考え
各リストを押しピンの形で地図上の適当な場所に表示するコードを開発した。
彼が立ち上げたウェブサイト、ハウジングマップはすぐにクレイグリストで
アパートを探していた数千人の注目を集め、こうした人々から重宝がられた。
グーグルはこれに気づき、マッシュアップをさらに簡単に開発するための
機能を追加した。手はじめにグーグルはラーデマカーを引き抜いた。

2005年6月にグーグルアースがリリースされたとき、
ほとんどのユーザーが最初に見たいと思ったのは自分の家だった。
(ブリンはその前年にキーホールのソフトをデモンストレーションした際、
同僚の自宅を一人ずつざっと見せたときに、こうなるだろうと予測していた。

ストリートビューで最初にカバーした5都市のうち4都市については、
ボールの形に似ていて11個のレンズが表面に散らばっている
「全方位」ビデオを発明した別の会社、イマーシブメディアの収集した
画像を使っていた。普通車やワゴン車の屋根に据え付けると
球形の動画を記録し、連続的にGPSデータと関連付けられ、
これを再生すると好きな場所からの360度の映像を見ることができる。

グーグルは全地球の高解像度写真が指先で見られるようにするのに
一役買ったが、だれにとってもメリットよりもデメリットのほうが
大きかったとしても、一社だけを非難するわけにはいかない。
世界がこれほど小さく感じられるようになったのは、
コンピュータ技術がそれを可能にしたからなのだ。
そして、その技術に「元に戻す」ボタンはついていない。

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