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本『情報革命バブルの崩壊』

『情報革命バブルの崩壊』
著 山本一郎
文春新書

切込隊長こと山本一郎氏のタイムリーな一冊。

ネットの無料文化をささえてきた、
広告収入とIT業界に対する株式市場の過剰期待のバブルが
今終わろうとしている。

「ネット広告は、それほど収益性が高くなく、将来性にも乏しい。
Yahoo!など限られた大手サイトだけが広告売り上げを伸ばしているが、
それ以外の弱小サイトは、オンライン上のメディアの数が増えたこともあり、
クライアントを奪い合う形となり、媒体一つあたりの広告収入は
07年後半から減少曲面に入っている。」

「口コミと呼ばれるネットマーケティングも、
ネット上の祭りも、サクラや煽動で盛り上げ、
あたかも現象があるかのように作り上げ、
既存メディアにおもしろおかしく書きたてられることで
祭りが加速するという意味では同じ。」

「より大規模な投資と買収を繰り返すことで規模の拡大を実現してきた
ソフトバンクの問題とは、まさにいまその貯金を使い果たそうとしており、
かつ、ソフトバンクに対して常に追い風となってくれていた世界的な過剰流動性、
金余り曲面が終わってしまいつつあることにほかならない。」

などなど、はっとする指摘も多い。
ホリエモン逮捕にみる金融市場の事情や
ソフトバンクの自転車操業など、言われて初めて納得した話もある。
あいかわらずの山本節は小気味いいと同時に、
何もケンカを売らなくてもと思うところや文章的に読みにくいところもあるが、
今後、決してバラ色ではないだろうネット社会を見据える意味で
今、読んでおくべき本。


◆読書メモ

新聞はネットに読者を奪われたのだろうか?
読者は新聞記事を毎日、せっせと読んでいる。
無料のネットのサイトや、ケータイを経由して。
読者は新聞記事を読んでいるが、新聞を買わなくなっただけである。
新聞というパッケージが見捨てられこそすれ、
新聞記事という商品そのものはまったく価値を失っていない。

Googleがいかに賢く神の如き存在だと振る舞っていても、
平たく言えばデータがテキスト化された巨大データベースに過ぎないのだ。
いくらインターネットが便利だからといって、例えば貴方が昭和20年元旦に
当時の首相がどんな談話を残したと報道されたか調べようと思っても、
検索では教えてくれない。ネットによる情報革命とは、
ネットに情報が乗っかっていない限り、実は何の役にも立たない。

情報の価値という点から言うならば、文字・テキスト化され
インターネット上のアーカイブとして誰もが検索し閲覧できるような内容が、
果たして本当に価値を持つものなのかどうか、よく考えてみるべきだろう。

情報化社会は、自分が知りたい、知らなければならない情報に
アクセスできる効果的な手段は用意してくれた。
だが、知るべき情報量そのものを増やした結果、
自分が知らない情報や、知らない分野で判断を求められたときに、
必ずしも求めるべき正しい解答を与えてくれる社会になったとはいえない。

これを、私たちはソースロンダリングと呼んでいるが、
ネット内でさも偶然、自発的に盛り上がった話題を
取り上げたかのように装い、存在しないはずの事件や問題が
ネット住民の間では話題もちきりという形で報じるわけである。

これは、過去にリクルート問題や、西武問題で
「なぜリクルートだったのか」や「どうして西武なのか」
と考えると結構鮮明に見えるが、新しく出てきたコングロマリットを叩く
というよりも、国の意志決定者というのは顔が見えない代わりに、
誰が国を支える人で、誰がそうでないのかをかなりしっかり選別していて、
摘発できるタイミングや望ましくない風潮が拡大するタイミングでは
必ず何かのアクションを取ろうとする傾向がある。

長期的に見るならば事業戦略として将来の売上を担保に資金を導入して
現在事業の投資にあてるというのは、
技術革新を含む顧客満足の停滞を意味し、健全な競争というよりは、
猛烈に自転車を漕いだ先が崖というチキンレースの状態になる。

DVD『ミスト』

ミスト [DVD]

『ミスト』

原作はスティーブン・キングの中でも印象に残っている話。
読み終わってすぐに映画化されていないのをチェックして、
ぜひ映画化してほしいと思っていた。
(襲ってくる怪物たちの姿ははっきり見えなくてもいいし、
舞台はスーパーマーケットがあればなんとかなるので、
低予算でも十分おもしろいものが作れるだろうと)

実際、完成した映画は、ところどころ違うものの、
映像的には原作どおり。
倉庫の場面は、原作では小さな口がいっぱいついた怪物に
襲われる話で、少しずつ食われていくってどんな恐怖だと
ぞっとしたところなので、映画の怪物描写にはちょっと不満。
しかし、霧の中をライトを照らしながらゆっくり車が出て行く場面は
スーパーの中の人の表情も含めて、完璧。
マーシャ・ゲイ・ハーデンにも文句のつけようがない。

そして、噂の原作と違う驚愕のラストですが、
やー、想像以上に後味の悪いラストですねー。

原作では、ガソリンスタンドでなんとか給油を終えて、
ラジオから聞こえたような気がした声にかすかな希望を抱きながら
霧の中を車が走り出す場面で終わり、だったと思うけど
(ずいぶん前に読んだので多少うろ覚え)
それまで、「えー、どうなるの?」と思いながら読んできた身に
このラストは肩透かしをくらったようでもあり、
逆にオチをつけなかったことでこの作品の印象を深くしたラストでもあった。

映画化するに際しては、なんらかのオチが必要なのはたしかで、
あのラストがあるのとないのとでは、あったほうが断然いい。
絶望感や人が人を裁くことへの疑問など、
映画全体がホラーを越えた意味をもってくる。

インタビューを見ると、あのラストを通すために、
初めから低バジェットで映画を作ったとダラボン監督はコメントしてますね。
大手資本の話はあったけど、みんなあのラストを変えろと言ったとか。

(車の方向からするとスーパーの人間は助かったのか?とか、
あれだけの怪物が倒せるわけはないから、
異次元の扉を閉めると怪物も消えるのか?とか
いろいろつっこみどころもありますが。
原作には異次元設定はなかったよな?)

TV『砂時計』

砂時計 DVD-BOX I

『砂時計』

ひとりの少女の初恋の行方を
12歳から26歳までの14年間を通して描いたテレビドラマ。
K君およびK嬢に「たぶんハマるから」と薦められたものの、
『愛の劇場』って昼ドラじゃんとか、全60話!とか躊躇しましたが、
見始めたらみごとにハマった。

主人公を含む4人を子供時代、中高生時代、大人時代と
3人の役者が演じているわけですが、
なかでも中高生時代の杏ちゃんを演じた小林涼子がピカイチ。
「私のこと嫌いになっちゃった」なんて涙声で言われると、
もうズキュンと胸を打ち抜かれます。
小林涼子と佐野和真による中高生時代のラブラブぶりは
見ていてかなり気恥ずかしいものがありますが、
この二人があまりにもかわいいので、
大人時代になって役者が変わったらつまんなくなってしまったほど。

(私とK嬢は「小林涼子の杏ちゃん」がイチオシですが、
K君は「大人時代の杏が好み」で、
「藤くんは大人になったほうがいい」という私に対し、
「大人時代も中高時代もどっちもいい」というK嬢
「大人の大悟だったら、私は佐倉さんか藤くんにするよ」
など、4人×3パターンの好みがあるのもおもしろい。)

1日30分の昼ドラなので、毎回、回想シーン多すぎと思ったり、
(「俺が一緒におっちゃるけん」なんて何度聞かされたか)
後半は2人がすれ違っている意味がよくわかんないとか、
初恋にいつまでも固執するのもどうよとか、
(藤くんの名言「2度目、3度目があるから初恋って言うんだろ」)
いろいろ思ったりしますが、全60話、楽しめました。

小林涼子以外にも、大悟役の佐野和真の「そげだな」や
椎香役の垣内彩未の「私も大悟君のことが好きやけん」
という島根の方言の台詞回しも良かったです。

話題の携帯ストラップ!時は砂時計のように刻まれる…砂時計ストラップ【1222PUP10F】
杏の砂時計はサンドミュージアムで売ってる手作りのものらしいですが、
大悟の砂時計ペンダントはドラマオリジナル。
たぶん、この砂時計ストラップが元じゃないかと。
(一瞬、買っちゃおうかと思ったよ。)

本『オーディオの作法』

オーディオの作法 (ソフトバンク新書) (ソフトバンク新書)

『オーディオの作法』
著 麻倉怜士
ソフトバンク新書

麻倉さんによる実践的オーディオ入門書。
スピーカー、アンプ、プレーヤーの基本3点セットの選び方から
スピーカーの間にテレビを置かない、
オーディオ選びはカタログだけでは絶対にできない、
床へのベタ置きは厳禁、
スピーカーと床の間にフェルトのようなやわらかい布を入れて、
有害な音波を吸収する“フェルティング”のやり方、
CDは必ず「2度がけ」する、
プレーヤーには振動を与えない、
電源のプラスマイナスを正しくするだけで音が変わる、
CDはハンドソープを泡立てて水洗いする、
などなど、音質向上のためのテクニックを紹介している。

予算別オススメオーディオセットも載っているけど、
高いものを買えばいいわけではなく、
自分の聴く音楽にあわせて、好みの音を出してくれる機器を
実際に視聴して、自分の耳で選ぶことを基本としている。
お金をかけなくてもすぐに実行できそうなテクニックが
書かれているところもいい。
なかでもびっくりしたのは「CDの2度がけ」。
一度、プレーヤーに入れて読み込ませたCDは、
イジェクトしてかけたほうが音がいい、というんだけど本当?
(やってみたけど、いいような気もするし、変わらないような気もするし、
私の耳ではわかりません。)

麻倉さんの文章のすばらしいところは読んでいると
今すぐいい音楽を聞かなきゃ、という気分になるところ。
まったく知らないクラシックやジャズの演奏でも
それがどんなにすばらしいか、文章でちゃんと伝えている。

「オーディオの目的は生の音楽の感動をリスニングルームに蘇生させること、
そのためには生演奏を体験して“感動の経験値”を上げてほしい」
という文章にのせられて、
さっそくオペラシティのランチタイムコンサートに行ってきました。
ピアノ演奏で、曲目は、
V.ノヴァーク『思い出』
B.スメタナ『海辺にて』
W.A.モーツァルト『トルコ行進曲』
R.シューマン『トロイメライ』
F.ショパン『華麗なる大円舞曲』
F.ショパン『革命』
半分くらい眠りながら聴いてたんだけど、
生のピアノの音で眠るってすごく気持ちいい(笑)。
心より体にいい感じ。
オーディオセットをそろえることのできない私としては、
こちらの方法で経験値を上げていきたいです。


本『クラウド化する世界』

クラウド化する世界
『クラウド化する世界』
著 ニコラス・G・カー
翔泳社

◆読書メモ

コロンビア万国博覧会を訪れたL・フランク・ボームは会場に目が眩み、
そのことがインスピレーションとなって、1900年に『オズの魔法使い』
のエメラルドシティを書いたのだった。

(グーグルに)買収されたとき、ユーチューブの従業員は
たったの60人だった。

もしニュース産業が時代の流れを暗示しているとしたら、
我々の文化から淘汰される運命にある“石屑”には、
多くの人々が「優れたもの」と判断するような産物も含まれてしまうだろう。
犠牲になるのは、平凡なものではなく、質の高いものだろう。
ワールドワイドコンピュータが作り出した多様性の文化は、
じつは凡庸の文化であることがいずれわかるだろう。
何マイルもの広がりがありながら、わずか1インチの深さしかない文化だ。

デイビッド・ワインバーガーは、その著書“Small Peaces Loosely Joined”で、
インターネットの解放神話を簡潔な言葉で総括した。
「ウェブとは、我々が相互に生み出した世界である」

「私が広告に費やした金の半分は無駄になる。
しかし問題なのは、無駄になった半分がどれなのかわからないことだ」
ジョン・ワナメーカー

「我々(グーグル)は人に読んでもらうために
本をスキャンしているんじゃありません」と、その技術者は言った。
「AIに読ませるためにスキャンしているんです」

「いつも作りたいと思っている」究極の製品は、質問されるのを待ったりせず、
即座に「何を入力すべきか教えてくれる」製品だという。
エリック・シュミット

映画『クライマーズ・ハイ』

クライマーズ・ハイ (Blu-ray Disc)
『クライマーズ・ハイ』
at 下高井戸シネマ

日航機墜落事故を追った地元新聞社の話。
主演の堤真一をはじめ、堺雅人、遠藤憲一
と登場する男たちがかっこいい。

写真を載せるために広告をはずしたら、
広告局が「誰のおかげで金稼いでんだ」ってどなりこんできたり、
入稿を遅らせるために販売局ともめたり、
「あー、どこも他部署とは仲悪いんだなー」と思ったり。

しかし、スクープを打つために同じ編集局内でも
隠しごとしなきゃいけない理由がよくわからない。
あと、この映画に限らないけど、
新聞が騒ぐスクープというものがどれほどのものなのか
私には今ひとつ理解できない。
リクルート事件などのようにそれまで知られていなかった事件を
暴き出すのはわかるとして、この映画の事故原因なんて
いずれ事故調査委員会から正式発表があるものを
真偽もあやういまま1分1秒競って掲載することの重要性が不明。
一般読者は数紙を見比べたりしないし、
スクープなんてしょせん、メディア内部がこだわってるだけでは
と思ったりも。

日航機墜落事故はたしかに大事故だけど、30歳以下の人は
ほとんど覚えていないだろうから、当時の映像を入れてもよかったのでは。
特に生存者が救出される場面、記者たちが見上げる先に、
私は自衛隊員に抱えられ、ヘリコプターで運ばれる少女の映像を思い出すし、
遺書の文章もよく覚えてるけど、若い世代にはピンとこないだろう。

原作には細かく人物背景が描かれているんだろうけど
それがないので、友人との関係やその息子との登山など、
映画だけでは意味があまりないように感じられる場面もあったりしますが、
ブン屋魂がぶつかるところはとてもおもしろい。
新聞が斜陽の今、こんな熱い男たちはいないんだろうなと。

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