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映画『スラムドッグ$ミリオネア』

スラムドッグ$ミリオネア [DVD]

『スラムドッグ$ミリオネア』 at 新宿ミラノ2

アカデミー賞8部門を受賞した話題作。
前情報が多すぎて、ほぼ予想通りのストーリー展開。
クイズに正解するたびに、関連する過去が語られ、
彼の壮絶な人生が明らかになっていく、という手法は
わかりやすいし、うまいです。
彼の人生とともにムンバイが抱える貧困の問題も描かれる。
『ミリオンズ』同様、偽善的になりがちな話を作品に昇華している。

しかし、アカデミー賞を受賞したことで、
この作品がインドの貧困を描いていながら、
何の解決にもなっていないことも指摘されている。
ラティカの少女時代を演じたルビーナ・アリの養子疑惑まで飛び出したり。
けれど、インドの問題でダニー・ボイル監督を非難するのは的外れだろう。

たくみなストーリー以上に映像のパワーがすごい。
オープニングの子供たちが駆け回る場面だけで泣ける。
音楽のパワーも加わって、ボリウッド調のエンディングは
ストーリーの上では浮いてる気もするけど、
パワフルなこの作品の閉めとしては最高。

出演者の中でいちばんの注目株はラティカを演じたフリーダ・ピント。
主人公がいつまでも忘れられない初恋の象徴として納得できる美しさ。
アカデミー賞のレッドカーペットでもその美しさが際立っていた。
演技のうまさという点では、ずっとポカン顔をしてた主人公より、
クイズ司会者のアニル・カプールが印象に残る。

2000万ルピー(4000万円くらい?)の賞金がかかっているというのに、
最初から最後まで主人公がまったく金に執着していない点がいい。
兄のサリームが子供のころからお金を稼いで、
弟の純真さを守っていたんだと思う。

クイズはどれもさっぱりわからなかったけど、
最後の答えだけわかった。
アニメのおかげってとこがまったく日本は平和だ。


映画『トワイライト~初恋~』

トワイライト~初恋~ スタンダード・エディション [DVD]

『トワイライト~初恋~』 at 新宿ピカデリー

ヴァンパイアと人間の恋という、乙女の妄想炸裂ファンタジー。
2人が恋に落ちる瞬間が、彼らのアップを交互に映すだけで説明されているが、
それも、ヴァンパイア青年が『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』で
セドリック・ディゴリーを演じたロバート・パティンソン、
ヒロインを『パニック・ルーム』のクリステン・スチュワートと、
ふたりとも美男美女だからできるワザ。

綺麗な顔した青年に「僕に近づくな」と言われ、
危ないところを助けられたりしたら、そりゃ、ときめくでしょうよ。
しかし、ロバート・パティンソンくんがあまり好みでなかったのと、
さすがに乙女すぎる設定にはついていけなくて、いまいちのれなかった。
美男美女の禁断の恋なんて、共感できるかっ。

しかし、アメリカのハイスクールライフって、
映画で見る限りはプロムだのなんだのって楽しそうだけど、
『25年目のキス』でも描かれてたように、人気組とダサい組、
歴然とした格差がありそうだよなー。

青ざめた湿度を感じる映像はそれだけで
現代のゴシックホラーの舞台を盛り上げる。
原作があるゆえに、ヒロインの友達とか
ヴァンパイアのひとりを取っても、キャラクターがしっかりしている。
野球シーンや飛翔シーンも楽しい。
この後、第2作、第3作とうまく続いていくのかは不安なところ。


本『ウォッチメン』

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『ウォッチメン』
著 アラン・ムーア、画 デイブ・ギボンズ
小学館集英社プロダクション

という訳で読んでみた原作本。
コミックとはいえ、3日間かかりました。
雑誌や新聞の見出しにもすべて意味があり、
欄外に和訳が書かれている。
また、初代ナイトオウルが書いた回想録や
DR.マンハッタンに関する論文、
シルク・スペクターの新聞記事、インタビューなどの短文が
チャプターごとに挟まれており、これも作品世界に関わってくる。
劇中コミック『黒い船』も読み応えがあり、新聞スタンドの少年同様、
毎回続きが気になりました。

アメコミって『スパイダーマン』か『スーパーマン』、
なんとなく能天気なイメージがありましたが、
なるほど、アメコミの傑作中の傑作といわれるのにも納得。

映画はかなり忠実にビジュアル化しているが、
コミックだけに絵の迫力がすごい。
ローリーとダンが左から右へ移動していく様子を
3コマ使って描いている場面とか、
過去と現在と未来を行き来するDR.マンハッタンの回とかは
コミックでないと描けないすばらしさ。
(DR.マンハッタンの過去と現在と未来に同時に存在する思考は
カート・ヴォネガットの影響を受けているとか。たしかにラムフォードっぽい。)

この作品の舞台になった1985年よりもっと前だけど、
子供の頃、家の窓を開けたら原爆が落ちていくのが見えて恐怖する
という夢を見ました。今でも覚えてるんだから恐かったんだろう。
子供がそんな夢を見るくらい、核戦争に世界がおびえてた時代。
じゃあ、今が平和なのかといわれれば、
このコミックが描いている世界って、今でも通じるんだよなー。
ヴェイトがいくつものモニターを眺めて、大量の情報から
世界を読みとろうとするあたり、今のネット社会に似てなくもない。
(映画ではモニターのひとつにアップルの『1984』が映ってました。)
このコミックが今書かれたら、また別のオチになった気もしますが。

◆読書メモ

人間の脂が燃える煙が
空に立ち昇るのを見て、
その上に神などいないと思った。
闇と真空がどこまでも続くだけだ。
俺たちは孤独なんだ。

映画『ウォッチメン』

ウォッチメン スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

『ウォッチメン』 at 新宿バルト9

名作グラフィック・コミックを実写映画化。
フィルム・ノワール的なダークさやコミックっぽい色遣いなど
美術面はすばらしいが、何しろ話が難しい。

ちらっと映る写真から新聞の見出しまで原作を再現しているらしく、
画面の情報量がものすごく、ニクソンだのベトナム戦争だのケネディ暗殺だの
アメリカ史を背景にした政治も理解はできるが、消化不良。
単純に映画としてみると、理屈っぽくてやや退屈になってしまう。

強盗など、街のチンピラを相手にした犯罪ならヒーローも活躍できるが、
相手が、ベトナム戦争や冷戦や核戦争になったとき、
スーパーヒーローとて何の役に立つのか。
正義とは何か。平和とは何か。
この作品が掲げるテーマは、1985年という不安定な時代のみならず、
現代にも重く響く。
映画を見て原作のすばらしさに気づく作品。
かといって、原作コミックのほうも、思い切りアメリカンな絵柄と
詰め込まれた情報量に、簡単には手が出せないので、
映画を見てから原作を読むとちょうどいい感じ。

葬式の場面で『サウンド・オブ・サイレンス』、
レストランの場面で『ロックバルーンは99』と、
選曲のセンスは微妙。
『ハレルヤ』は何かの映画でも使われてたなーと
ずっと考えてたら、答えは『シュレック』だったんだけど、
もうひとつ『月の瞳』でも使われてたのを思い出しました。
一見、賛美歌っぽいけど、きわどい歌詞なので、あれでいいのか。

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『月の瞳』
レズビアンを描いた作品だけど、おしゃれでアーティスティックな映像なので、
それほど抵抗なく見られる。
『ハレルヤ』の流れるラストには椅子から転げ落ちそうなほど衝撃を受けました。
ヒロインが神学者だということを考えると、神をあざ笑っているようにも、
すべてを解放してるようにも見えます。

本『メイキング・オブ・ピクサー』

メイキング・オブ・ピクサー―創造力をつくった人々
『メイキング・オブ・ピクサー 創造力をつくった人々』
著 デイヴィッド A.プライス
早川書房

『トイ・ストーリー』から『ウォーリー』まで、
ストーリー、技術ともにレベルの高い作品を作り続け、
大ヒットを連発しているアニメーション・スタジオ、ピクサー。
そのピクサーの創世記からディズニーによる買収までを描く。

ピクサーの名前はブランドとして確立しているのだが、
一般には「ディズニー=ピクサー」のようにとらえている人も多く、
「『レミーのおいしいレストラン』はミッキーに配慮した結果なのか」
などと言われると、がっかりしてしまう。
ディズニーによる買収も「ピクサーが買収されてしまった」という人もいるのだが、
私的には、買収という形でピクサーがディズニーをのっとったと思っている。
ピクサー首脳陣(ジョブズやラセター)がディズニー幹部になったことでも
それはわかる。(以降のディズニーアニメ、『ルイスと未来泥棒』、『ボルト』は
ラセターが製作陣に加わっている。)
つまり、ディズニーによる買収は、ピクサーの大勝利なのだ。

買収を決めた理由のひとつとして、ディズニーの新社長ボブ・アイガーが
ディズニーランドのパレードを見て、「ここ10年間のディズニーアニメ作品から
生まれたキャラクターが、ピクサーのものを除けば、パレードに一つも
出ていないことに気づいた」というエピソードが書かれているが、
これは私もディズニーランドに行って思ったこと。
昼のパレードの主役スティッチを除くと、夜のパレードで目立つのは、
『モンスターズ・インク』のサリーや、『バグズ・ライフ』のイモムシ、
バズ・ライトイヤーなど、ピクサーキャラクターばかり。
(もちろん、昔からのアリスやミッキーマウスなどはいるけど)
いかに、ディズニーがピクサーのキャラクターに頼っているかが感じられた。

そんな、ディズニーとの提携から交渉決裂、買収劇までも詳しく書かれている。
そのほか、ジョブズと決裂して、ピクサー社史から抹消されてしまった、
アルヴィ・レイ・スミスの話や、株式公開に際してのモメごとや、
『モンスターズ・インク』をめぐる著作権裁判など、
ピクサーにとっては負の部分もきちんと描かれている点に好感がもてる。

この本で一番感動的なのは、まだコンピューターが静止画を作るのに
精一杯だった時代に、コンピューター・アニメーションを夢見た人々の物語だ。
エド・キャットムルとアルヴィ・レイ・スムスは
億万長者アレグザンダー・シュアーの創設したニューヨーク工科大学(NYIT)の
コンピュータ・グラフックス研究所から始まり、
ルーカスフィルムのコンピュータ部門に移籍する。
ルーカスが必要としたのは、フィルム合成、音響、編集だが、
この時点では、映画フィルムを高解像度でスキャンする機器もなく、
デジタル映像に必要な解像度がどのくらいなのかもわからなかった。
(その時代にデジタル・フィルム合成をめざそうとするルーカスの先見性もすごい)
ルーカスフィルムでは『スタートレック2/カーンの逆襲』の一場面を手がけ、
ディズニーをクビになったジョン・ラセターが参加する。
ルーカスの離婚と事業整理にともない、コンピュータ部門は
アップルをクビになったジョブズに格安で売却される。
ここでもジョブズが最初にやろうとしたのはピクサー・イメージ・コンピュータ
というハードと、レンダリングソフトを売ることで、
アニメーションを作ることではなかった。

今ではこれだけの大成功を収めているピクサーが
何度となく、閉鎖されそうになったことは興味深い。
『トイ・ストーリー』完成目前の時期ですら、ジョブズはマイクロソフトに
ピクサーを売り飛ばす交渉をしていたというのだからびっくりだ。
この長い年月、コンピュータ・アニメーションというものを信じて、
会社を守り続けたキャットムルの信念には涙が出る。
そして、『トイ・ストーリー』の成功がすべてを変えるわけだが、
その成功が決して、まぐれ当たりなどではなかったことも
この本を読むとよくわかる。

ピクサーというとジョン・ラセターが有名だけど、
本当の創設者である、キャットムルをはじめ、
スタントン、ピート・ドクター、ブラッド・バードなどの名前が次々に登場。
キャットムルの開発したZバッファ、テクスチャ・マッピングをはじめ、
パーティクル、エイリアシング、シェーダーなど、
今では必須のCG技術が発展していく様子もドキドキする。
PDI/ドリームワークスとのライバル関係なども、
カッツェンバーグが最初に『トイ・ストーリー』製作を支持したことを
知ると、見かたが変わってくる。
ここらへんの話はある程度、マニアじゃないとわかりにくいと思うけど、
マニアにはたまらない。

◆読書メモ

「キャラクター・アニメーションは、物体をキャラクターのように見せるとか、
顔や手をつけるとか、そういうことじゃない。
キャラクター・アニメーションっていうのは、物体をまるで生きているかのように
動かし、考えているかのように動かし、そしてそういう動きのすべてが、
自分の思考プロセスによって生み出されたように見せることだ……。
生きているという幻想を与える思考。表情に意味を与える命なんだ。
サン=テグジュペリも書いている。
「大事なのは目ではなく、目つきだ――唇ではなく、ほほえみなのだ」ってね!」
ジョン・ラセター

アイヴァン・サザーランドはマサチューセッツ工科大学(MIT)で
博士論文の一環として、当時革新的だった「スケッチパッド」という
システムを開発した。ライトペンを使って、コンピュータの画面上に
直接白黒の設計図を描くものだ。サザーランドのシステムは、
単にコンピュータを使って絵が描けるというだけではなかった。
むろん、これだけでも十分衝撃的ではあったが。
コンピュータの貴重な1000分の1秒も無駄にすまいと、
ユーザがパンチカードのプログラムをカードリーダーに入れるために
列をなして並んでいた時代にあって、スケッチパッドは一人の人間が
ひと部屋サイズのコンピュータを独占するという、
正気とは思えない考えを前提としていたのだった。

作業を進めるうちに、チームの誰かが、ラセターの色の選び方が変じゃないか
と言い始めた。ラセターは木に紫色の葉をつけたいと考えていた。
葉っぱは紫じゃない、とスタッフは反論した。
ラセターは、サンフランシスコの美術館にグループを連れて行った。
美術館では光をふんだんに使った自然画で知られる、
イラストレーターのマックスフィールド・パリッシュの絵画展が行なわれていた。
しばらくすると、反対したスタッフは、ラセターが正しかったことを潔く認めた。
紫色の葉っぱもあり得るのだと。すべては光次第なのだ。

デイヴィッド・ディフランチェスコが、カーナー大通りのILMのすぐ近くの棟で、
兄弟プログラマーがマッキントッシュでやっているイメージ処理は
一見の価値があると教えたときも、スミスは腰を上げようとしなかった。
「あの頃はちっぽけなマシンに気を回す余裕がなかった」
スミスは後で言っている。
(トムとジョンのノール兄弟は、開発したソフトウェアをその後アドビシステムズに
ライセンスした。フォトショップと名付けられたソフトは、大評判を博した)。

ハンラハンとラニアは、当時人気を博していたソニーの携帯CDプレーヤー、
ディスクマンのような、身につけてどこにでも持ち運べる小型機器という
アイデアをひらめいた。この機器で映画級の立体映像を生成し、
それをバーチャルリアリティ・ゴーグルを通して見るというものだ。
実際にこれを作ることは、1987年当時のピクサーには不可能だったが、
5年から10年たって技術がアイデアに追いつけば、ヒット商品になるかもしれないと
2人は考えた。そこでディスクマンになぞらえて、「レンダーマン」と名付けた。

90年代初めにミルヴォルドはフォトリアリスティック・レンダーマン(PRマン)を
ライセンス取得してウィンドウズに組み込むことに関して、
ピクサーと何度か交渉を行なった。かれの構想では、
PRマンはウィンドウズ・プログラムで高品質のグラフィックスを処理する
標準的な方法になるはずだった。PRマンはゲームなどの双方向アプリケーションに
使うには遅すぎたため、この用途にはPRマンを高速化したサブセット版、
「リアルタイム・レンダーマン」で対処する計画だった。だがミルフォルドは結局、
代案に落ち着いた。マイクロソフトはシリコン・グラフィックスから「オープンGL」と
呼ばれる3Dグラフィックス・ソフトウェアをライセンスしたのだった。

「法務書記に言わせれば、かれには2歳と7歳になる姪っ子がいて、
わたしがこの(『モンスターズ・インク』の公開を禁止する)差し止め命令を
出したらひどくがっかりするだろうと……。そうなれば、国中の子供たちに、
最悪のモンスター判事だと思われるでしょう」

モス・ランディング海洋研究所のマイク・グレアムから、
ケルプは珊瑚礁には生えないという指摘を受けると、スタントンは
珊瑚礁のシークセンスのデザインからケルプをすべて取り除くように指示した。

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