映画『チェイサー』
『チェイサー』 at シネマスクエアとうきゅう
予告を見たときは“追うもの”と“追われるもの”の攻防なのかと思ってましたが、
タイトルどおり、“追いかける”側の物語でした。
ナ・ホンジン監督が公式サイトのインタビューで、
「拉致された人たちが助かりたいと切望してい一方で、
周囲からは気づかれず、忘れ去られていたのではないか。
その落差に心が痛んだ」と答えているように、
前半は被害者の息苦しくなるような気持ちが味わえて本当に怖い。
迷路なのか袋小路なのか、夜の住宅街という、一見、平凡な舞台がまた怖い。
(いかにも呪われてそうな家の庭や浴室のシーンはほとんどホラー。)
ジョンホ(キム・ユンソク)の走る姿がいい。
元刑事という設定だけで、彼が捜査のやり方を知っていることや、
犯人を前にしてひるまないこと、走り方が様になることなどを説明している。
犯人を追いかける場面で(文字通り、走って追いかける場面)、
犯人側だったり、ジョンホだったりが、足を滑らせたり、転んだりするんだけど、
ハ・ジョンウのインタビューを読む限り、アドリブや突発的なことも含めて
ほとんどそのまま撮影しているようだ。疾走感や緊張感がとてもリアル。
犯人も警察も杜撰すぎるとか、ジョンホにしても
最初から警察に協力していれば事件はもっと早く解決できたのにとか、
細かい点では荒い展開だなーと思うものの、
殺人の動機や2人の過去、謎解き的な要素を
ばっさり切った潔さがこの映画のおもしろさだと思う。
(ハリウッドリメイクが決定しているとのことだけど、
犯人の釈放と被害者の命、タイムリミットを設定して、
犯人の家を見つけ出すまでのサスペンスを描く、
という普通の展開になりそうな気が。)
元になったユ・ヨンチョル事件は、韓国では誰もが知っている
衝撃的な事件だったろうから、韓国での映画の大ヒットは
それも理由のひとつだろう。(もちろん映画の出来が良かったという理由もある。)
しかし、2004年という最近の事件を映画化してしまう韓国映画界の懐の広さには驚く。
日本で実際の事件を元に映画化すると、どうしても
「あの悲劇を忘れない」的な説教くさい内容になるだろうし、
それにしたって池田小事件や連続幼女誘拐事件などが映画になるとは思えない。
(『コンクリート』って映画があったけど、批判を受けて
ほとんどまともに公開されなかったし。)
出張マッサージ業者による通報が逮捕のきっかけだったとか、
犯人に美術の心得があったとか、教会の見える町で殺人が行なわれたとか、
実際の事件を参考にしたところもいくつかあるが、
基本的には自由に翻案しているようで、
これだけ残酷な事件をエンターテイメントに昇華してしまう手腕がすごい。
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