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本『創刊の社会史』

創刊の社会史 (ちくま新書)
『創刊の社会史』
著 難波功士
ちくま新書

男性誌と女性誌の堺をいったりきたり、
お姉さん版、妹版と、年齢も上へ下へと伸ばし、
数々の雑誌が創刊されて(かつ消えて)いった様を追う。

『平凡パンチ』女性版から『an・an』が生まれ、
二匹目のドジョウをねらって『non・no』が誕生。
『女性自身』別冊から派生した『JJ』の後を追って、
『CanCam』、『ViVi』、『Ray』の赤文字系4誌がスタート。
西海岸をフューチャーしたカタログ雑誌として
『POPEYE』、『Hot-Dog PRESS』がヒット。
『MEN'S CLUB』の妹誌として『mcSister』が生まれ、
『BIG tomorrow』と『SAY』も兄妹誌。
(ナンシー関が「こういう兄妹いるな。さしずめ
兄・岸谷五朗、妹・中嶋朋子でどうだろうか」と言っているのは、うまい。)
『POPEYE』の女性版として創刊された『Olive』が西海岸テイストでは
売れず、ロマンティックというコンセプトで作り直し、「ガーリー」を確立。
『BOON』のガールフレンド誌として『Zipper』が誕生。

私はそれほど雑誌っ子じゃないんだけど、
中学生になる前に参考として初めて買ったファッション誌は『San Sun』で
『mcSister』のモデルは当時の私の目から見ても
キチンとして垢抜けて見えたなーとか、
高校の友達にオリーブ少女がいて、
彼女の家に行ったら部屋に木のベンチがあってびっくりしたとか、
大学のときは、時間が空くと生協で『CanCam』、『JJ』、『ViVi』、『Ray』を
かたっぱしから見て、そのとき一番気に入ったのを買ったりとか、
(『an・an』は毎週誰かしら買ってたから借りてすませてた)
『non・no』は実用的なんだけどちょっと野暮ったいイメージで、
でもモデルはすごくかわいいと思ってたとか、
まあ、いろいろ思い出しながら読みました。
雑誌が雑誌として売れていて、
ファッションや流行にメディアとして何らかの力をもっていた、
いい時代だったんだねー。

そのほか、『平凡パンチ女性版』1966年8月10日付け第2号の
グラビアページが「キミの高原ルック」だったり、
『Hot-Dog PRESS』のカノジョ誌『Miss Hero』の表紙に
“今月のミス・ヒーロー”として「洞口依子さん(16歳)立正高校2年」が登場してたり。

『POPTEEN』、『Cawaii!』、『egg』、
『CUTiE』、『SPRING』あたりになると、さすがについていけない。
(『NIKITA』って休刊してたのね)

雑誌の創刊をカテゴライズしながら追っていくことで
なんとなく当時の社会や出版社側の思惑が見えてくるのだが、
むしろ、『Olive』や『egg』が創刊後、どう変わっていったかあたりが
おもしろいところで、そこらへんの掘り下げが浅いのは惜しい。
雑誌が広告や情報になってしまった今、
80年代、90年代に二匹目、三匹目をねらって次々創刊される
雑誌のバイタリティはキラキラして見える。
著者が最後に言っているように、こうした中で、
『小悪魔Ageha』や『MEN'S KNUCKLE』の
“マーケティングではつくれないもの”はかなり貴重に思える。


◆読書メモ

ポパイ創刊以前の編集長は、自分のつくりたい雑誌を純粋につくればよかったが、
ポパイの成功は、創刊編集長の個人的考え方以上に電通雑誌局の意向が
重要視されるようになった。10年後の88年に、ぼくが「Hanako」を創刊した時には、
より電通の力が強くなり、発刊前の2ヵ月間は、誌面をつくる努力よりも、
企業の宣伝部・広報部めぐりが最優先の仕事になった。(椎根和『POPEYE 物語』)

出世魚コース
光文社『JJ』→『CLASSY』→『VERY』→『STORY』→『HERS』
小学館 『CanCam(AneCan)』→『Oggi』→『Domani』→『Precious』
集英社『non・no』→『MORE』→『BAILA』→『LEE』→『marisol』→『eclat』

「雑誌を作るのは結局、コミュニケーション願望が他人よりも強いから始めたこと。
ところが今のマスコミは完全な企業になってしまって、資本主義の論理のなかに
置かれている。ビートニクの人たちが出てきた50年代後半のアメリカはいまの
日本と同じようなマスコミの状況にあった。ビートニクはいわば人間性が
どんどん失われていく状況にレジスタンスして生まれたものなんだ」
(『Bar-f-Out!』山崎二郎)

「“良家のゲレンデ”斑尾で、キミだけの「紀子さま」に会える!」
『BOON』90年1月号

以上のような社会の動向は、何もメディアが任意につくりあげたものではない。
雑誌メディアも何らかの加担はしていたであろうが、それらの社会動向は
雑誌によって可視化された現象、もしくはブースとされた趨勢だというのが、
もっとも正確なところであろう。

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