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本『リカちゃん 生まれます』

リカちゃん 生まれます
『リカちゃん 生まれます』
著 小島康宏
集英社

初代リカちゃんの開発担当者によるリカちゃん誕生物語。
驚くのはリカちゃん発売前のタカラが、
『だっこちゃん』(1960年)の大ヒットはあったものの、
浮き輪やビーチボールなど、空気入りビニール玩具の会社で、
人形とはまったく無縁だったということ。
そして、さらに驚くのは、最初の企画では、
人形ではなく、人形ケースの製作を考えていたということ。

アメリカでは着せ替え人形のキャリングケースが売れていることに
当時の佐藤社長が目をつけ、人形ケースの製作を思いつくわけだが、
「ドーリムハウス」という企画名からもわかるように
最初の段階から「キャリングケース」というより
「持ち運びが可能なドールハウス」をめざしているところがおもしろい。

そして、ドールハウスを試作してみた結果、
「バービーやタミーのドールハウスでは、日本の女の子には大きすぎる。
小さいサイズの人形を作り、それにぴったりのハウスを付けて
“家付き人形”として一緒に売り出そう。」ということになる。

当時発売されていた、バービー、タミー、スカーレットちゃんなど
洋風の人形に対し、開発者たちがモデルにしたのが“少女まんが”の世界。
牧美也子、わたなべまさこ、水野英子など、
少女まんがのヒロインの切り抜きを何枚もかかえて、
原型師に会いに行ったというエピソードがすごい。
(そして、設計図もなく、原型師さんが作成した顔が
そのまま初代リカになるというところが、またすごい。)

で、もうひとつ、びっくりエピソードが、
著者がこの原型を落として形を変えてしまっているということ。
「結局、出来上がった人形の顔は、向かって左の小鼻がへこみ、
鼻筋が右にすこし押しつぶされたものでした。
初代「リカちゃん」の多くはこれで通してしまいましたから、
じっくり見ればみなさんにも分かるでしょう。」
えーっ、それでいいんですか?

「顔かたちを真似た薄っぺらなものではなく、少女文化そのものとしての
“少女まんが”の世界を、新しい人形の中に詰め込みたかったのです。
わたしたちは少女まんがのヒロインのようなルックスだけでなく、
その内面も少女まんがのエッセンスで満たしていきたかったのです。」

「「女の子のドリームハウスってなんだろう」
大人が好むようなモダンな洋風とは違って、
女の子たちは宮殿とかお城とか、メルヘン調が好きなようだ。
<ふわふわのソファーとテーブル>、<身繕いをするドレッサーの鏡>、
<ひらひらのレースのカーテン>、この三つ、
“女の子の三種の神器”は外せない。」

上の部分を読んで、私の記憶にあるリカちゃんハウスが
白い家具や大きな窓だったり、
現実というより夢の世界だった理由が納得できたのでした。

カラーで掲載されている当時のブックレットも笑えます。
新発売時のブックレットの文章がコレ。
「リカちゃんのすべて
お父さん フランス人
お母さん 日本人
リカちゃん とてもやさしい
好きなこと 絵がじょうず
べんきょう あまりできない
悩み フランスにわたった父がわからない」
これが「リカちゃんのすべて」!
少女マンガをモデルにしてるからって、悩みが重すぎるー。

また、リカちゃんの好きな本が『小公女』、
いづみちゃんが『若草物語』はいいとして、
ママが『アンナ カレーニナ』(不倫の話だよ!)、
ワタルくんが『カラマーゾフの兄弟』、ごろちゃんが『巨人の星』
ってどうなのよ。

当時のドレスには「人魚姫」だの「軽井沢」だの、
ステキな名前がつけられてるんですが、
大人がメモを片手にオモチャ売り場で
「桜色の○○というドレスを着たリカちゃんを」と店員に聞いて、
買って行ったという話を読んで、
たしかにドレスにも名前が必要だと思ったり。

そのドレスの説明も、いづみちゃんのドレス(太陽)は、
「まっかな太陽のワンピース。白い雲のレースとおにごっこ。」
なのに、ワタルくんのドレス(ドライブ)は、
「ザックリしたシャツ、いかすわ!! スポーツカーにのって時速100キロ。」
という感じ。

「コメントは、わたしと富田くんで考えたほか、
ドレスの審査会をした時に聞いた、女の子たちの感想を書き留めて
使うこともありました。文章が足りなかったりすると、
たいてい「ウフフ」で誤魔化しちゃう。」
って、「ウフフ」ってそういう意味だったんですかー。

そのほか、「もしもし、リカちゃんいますか?」という電話を受けた女性が
気転を利かせて「こんにちは、わたしリカよ」と答えたことが
後の『りかちゃん電話』になり、
一時期は女子高生アルバイトを10人ほど雇って、
専用電話に対応させていたとか、
「六本木、リカちゃん」と書けばファンレターが届いたとか、
当時の女の子たちの熱意と、それに答えようとする側もすばらしい。

「わたしは、リカちゃんが初めて出会った子どもたちが、
'67年に10歳、11歳、12歳の女の子であったことは
とても幸運だったと思っています。
今思うと、あの時代のあの子たちでないと成立しない
“熱”が確かにあったのです。」

この本によると、最初の企画から発売まで7ヵ月ほど。
原型師、彩色のプロにめぐまれ、
ほぼ最初の試作のまま、初代リカが誕生している。
企画どおり「リカちゃんハウス」も年末には売れ、
その後のグループサウンズなどファッションの流れにものり、
わりとトントン拍子にリカちゃんは大ヒットする。
もちろん、本に書かれていない苦労も存在するんだろうが、
なんだか「リカちゃん」なんだから、「幸運だった」でもいい気がする。

著者は、その後、リカちゃんの人気が低年齢化するにともない、
当初の10歳当たりをターゲットにレディリカを開発。
2代目のリカの途中で現場を離れ、1994年にタカラを退社した後も、
「リカちゃんチーム」の顧問を務めているという。
(そして、長女を「里香」と名付けている。
次女も「いずみ」とつければよかったかもしれないが、
「そこまでやったら、もうまんがの世界になってしまいます。」
とコメントしている。)

さらっと書かれているので、もっと詳細が知りたいところではあるが、
著者のリカちゃんに対する愛がちゃんと感じられる本である。

◆読書メモ

香山リカ
香山は、加山雄三さんの“カヤマ”の響きと、
女優の香山美子さんの“香山”を両方いただいています。

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